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 この物語はフィクションです。
 この物語の舞台はこの世界とよく似た別の世界であり、実在もしくは歴史上の人物、団体、国家、領域その他固有名称で特定される全てのものとは、名称が同一であっても何の関係もありません。
第二章・新人戦編
2−(7) 交通事故
 八月一日。
 いよいよ九校戦へ出発する日になった。
 小樽の八校、熊本の九校のような遠方の学校は、一足早く現地入りしているが、東京の西外れに居を構える一高は、例年前々日のギリギリに宿舎入りすることにしている。
 これは戦術的な意味と言うより、現地の練習場が遠方校に優先割当される為である。
 本番の会場は競技当日まで下見すら出来ない立入禁止なので、敢えて早めに現地入りする必要もない――
「と言う訳なのだよ」
「はあ……まあ、分かり易い説明でしたから良いんですが」
 一体誰に向かって講釈しているのか、と茶々を入れたくなるのを我慢して聞いていた達也は、摩利の短い説明が終わると同時に、誰の利益にも何の利益にもならないツッコミ衝動を小さく頭を振ることで意識の外へと追い出した。
 二人が立ち話をしているのは、太陽が激しく自己主張している夏空の下だった。
 この炎天下、何を好きこのんで暑い思いをしているのか? と問われても、達也としては答えようがない。
 これは別に、彼の嗜好ではないからだ。
「ごめんなさ〜い!」
 軽快に鳴るサンダルのヒール音をBGMに近づいてくる声の主を見て、自分だけちゃっかり日傘の下に避難していた摩利はため息混じりの笑みを浮かべ、ジリジリと太陽に炙られていた達也は無言で端末に表示されたリストにチェックを入れた。
 ――遅刻すること一時間三十分。ようやく、全員集合。
「真由美、遅いぞ」
「ごめんごめん」
 咎める言葉も謝罪の言葉も、ただ、それだけ。
 二人は何事もなかったように、大型バスへ乗り込んで行った。
 と、思ったら、真由美が手ぶらでバスから出て来た。
「……何か忘れ物ですか?」
 ポーカーフェイスが保てているかどうか、少し不安を覚えながら達也は問い掛けた。
 着替えや化粧品などの宿泊用品――宿泊に化粧品という知識は無論、深雪から教わったものだ――は、コンテナにパッキングして積み込み済みだ。各自の自宅から直接配送された箱をそのままコンテナに詰め込む時点で、全員分漏れがないことは確認している。
 仮に入れ忘れたものがあったとしても、大抵のものは宿舎に用意してあるということだし、せいぜい二時間程度のバスの旅に必要となる手荷物などそれほどは無いだろう。
「ううん。そうじゃなくて……
 ゴメンね、達也くん。私の所為で、ずいぶん待たせちゃって」
「いえ、事情はお聞きしていますので」
 真由美が遅刻したのは、寝坊したとか時間を間違えたとかそういう無責任な理由によるものではなかった。
 急遽、家の事情で遅れるという電話があったのは、今から三時間前。
 その時の電話口で真由美は、現地で合流するので出発しておいて欲しいと言っていたのだが、三年生全員の意見が彼女を待つということで一致したので、真由美も大急ぎで合流したという次第だった。
 彼女は七草家の跡取り、という訳ではない。
 彼女の上には二人の兄がいる。
 十師族直系といっても、まだ高校生の、三番目の妹にまで家の仕事が回ってくるものではない。少なくとも、頻繁に起こることではないだろう。
 それが、学校の公式行事に絡んだ、当日の朝になって、急に呼びつけられるというのは余程の用だったに違いないのだ。
 真由美にとっては、他の生徒が先に出発していてくれた方が、おそらくは急かされることもなく、都合が良かったことだろう。
 だが彼らが――と言っても達也は内心反対だったのだが――待っていると言い出したが為に、真由美は無理をして駆けつけたのである。
 一時間や二時間程度の遅刻を責める気持ちには、達也はなれなかった。
「でも、暑かったでしょう?」
「大丈夫です。まだ朝の内ですし、この程度の暑さは、何ともありません」
 達也が乗車確認役を言い付かったのは、彼が裏方唯一の一年生だからという必然的な理由によるもの。
 選手四十名、作戦スタッフ四名、技術スタッフ八名。
 選手を除いた十二名のうち、一年生は達也だけだ。
 無論、これ以外にも裏方は用意されている。
 作戦・技術スタッフ以外にも、会場の外でのアシスト要員として有志二十名が組織されていたが、彼らは別ルートで現地に向かっている。ここには教師もいない。大型バス一台、作業車両四台の此のキャラバンで移動するのは、運転手を除けば正式スタッフのみだった。
「でもそんなに汗を……って、あら?
 ホントに、余り汗をかいてないのね」
「いえ、まあ、流石に汗を乾かす程度の魔法なら使えますので……
 真夏に汗をかかない程、変態ではないつもりです」
 彼が使用したのは汗の水分と成分を、皮膚と衣服から空中へ発散させる魔法。
 達也の固有魔法『分解』は、系統で言えば分離魔法の亜種、『発散』と『放出』の複合魔法。
 それも、どちらかと言えば『発散』の比重が高い。
 その為か、彼は、発散系統の魔法なら比較的得意としている。
「変態って……」
 そんなに変な台詞ではなかったはずだが、一寸したツボにはまったのか、真由美はクスッと笑みを浮かべた。
 多分、季節の所為だろう。
 向日葵のような笑顔だと、この時、達也は思った。
 おそらくは、日差しと気温と湿度がもたらした錯覚。
 ……その証拠に、真由美の笑みは一瞬で、いつもの悪戯好きな笑顔に変わった。
「ところで達也くん、これ、どうかな?」
 これ、と言うのは、まあ……間違いない。
 真由美が着ているサマードレスのことだろう。
 幅広の帽子のつばを両手で押さえて、気取ったポーズをつけられては、敢えて誤解したくても少しばかり難しい。
 今日は宿舎に入るだけで、公式行事は一切無い。
 それ故にか、学校行事の一環であるにも関わらず、制服の着用は義務づけられていない。
 一年生は達也も含め、一人残らず制服を着ているが、二年生は半数以下、三年生に至ってはほぼ全員が私服姿だ。
 それでも、公の席では肌の露出を抑えるべし、という現代流の服装マナーが染みついているのか、摩利のように、風通しの良いゆったりした長袖シャツに踝まである薄手のパンツ、というような格好の生徒が多かった。
 目についた例外は、千代田という二年生女子生徒の、ショートパンツに大腿部まである長いソックスという、露出が多いのか少ないのか分かり難いファッションと、彼女に強要されたという五十里の、ハーフパンツにハイソックスというある種ペアルックじみたハイキングスタイル。(因みにこの二人は付き合っているらしい)
 その中で、真由美のファッションは非常に目立っていた。
 異常に目立っていた、と表現した方が適切かもしれない。
 両腕両肩が剥き出しのサマードレス。
 スカート丈も膝上まで。
 素足に、ヒールの高いサンダル。
 肌が褐色味を帯びているのは、赤外線反射、紫外線カットの通気性コーティングフィルムを塗り着けているからだろう。その点を考えに入れれば全くの素肌を露出しているという訳では無いのだが、その色合いが逆に、程好く日焼けしたセクシーな肌、という困った錯覚を演出してもいる。
「とても良くお似合いです」
 大胆な花柄のワンピースは、本当に良く真由美に似合っていた。
「そう……?
 アリガト」
 おどけた口調と少しはにかんだ表情の組合せもまた、絶妙。
「……もうチョッと照れながら褒めてくれると、言うこと無かったんだけど」
 指を絡めた両手を腰の前へ伸ばし、上目遣いで摺り寄る、二歳年上の女の子。
 小柄な身長に平均的なサイズの胸は、両腕に挟まれてくっきりとした谷間を覗かせている。
 ここまで来ると、狙ってやっているとしか思えなかった。
「……大変だったんですね」
「……えっ?」
 急な用事というのがどんな内容のものだったのか、今の彼に知る術は無いが、余程ストレスが溜まっているに違いない。
「行きましょう、会長。
 バスの中でも、少しは休めると思います」
 ――達也は、そう考えることにした。
「チョッと、あの、達也くん?
 何か勘違いしてない?」
 急に、労りに満ちた態度と何処か同情を含んだ視線を向けられて、真由美は目を白黒させた。

◇◆◇◆◇◆◇

「……もうっ、達也くんったら人を躁鬱扱いするなんて、失礼しちゃうわ」
 走り出したバスの中で頬を膨らませて怒る真由美へ、隣に座った鈴音が生暖かい目を向けていた。
「隣に、って言ったのに、さっさとあっちへ逃げちゃうし」
 ちなみに達也は技術スタッフの一人として作業車両に乗り込んでいる。客観的に――あるいは、表面的に見るなら、真由美を避けた訳ではない。
「私のことを何だと思ってるのかしら」
「的確な判断です」
「えっ、リンちゃん、今なんて言ったのかな?」
 ハイテンションで愚痴をこぼし続ける真由美に、鈴音が淡々とした口調でツッコミを入れる。
 にこやかな笑みを形作りながら、目はちっとも笑っていないという怖い笑顔で、これまた表面上――だけは――朗らかな声で問い返されても、鈴音の冷静な表情は全く刃毀れしなかった。
「会長の餌食になるのを回避するには、的確な判断だと申しましたが」
「チョッ!? ヒドイ! それ酷すぎない!?」
 寧ろ、大真面目に断言されて、真由美の余裕ぶった仮面の方にひび割れが生じた。
「会長の艶姿に耐えられる男子生徒は、ほとんどいないでしょう。
 会長の美貌にはそれだけ大きな魔力がある、ということですが」
「……えっと……」
「…………」
 あまりにも真面目くさった顔で言われた所為か、真由美はそれが本気なのか冗談なのか、少し戸惑ってしまった。
 ――魔法師になろうとする者が「美貌の魔力(・・)」等と口にした時点で、冗談なのは決まりきっているのだが。
「もっとも、聞けば司波君は相手の魔法を無効化する技能に長けているとか。
 彼には会長の魔顔(まがん)も、通用しないかもしれませんね」
 口で発音されただけであるにも関わらず、真由美は何故か「マガン」を「魔眼」ではなく「魔顔」と、鈴音の意図する通り正確に認識した。
「……リンちゃん!」
 それでようやく、百パーセントからかわれていたのだという事に気付いた。
「まあまあ、落ち着いて下さい、会長」
「貴女がそれを言う!?」
 依然として大真面目な表情を崩さない鈴音を憤然とした顔で詰問し、やはり効果がないと見届けて、真由美は鈴音へ背を向け不貞寝気味に丸くなった。
 背中を丸めて横向きになった姿は、見ようによっては――
「あの、会長。やはり、ご気分が悪いんですか……?」
 心から心配そうに掛けられた、緊張した声。
「えっ? ううん、そういうんじゃ……」
「会長がお疲れのようだと司波が言ってましたが、杞憂では無かったのですね。
 あの男も、分を弁えていない点を除けば……いえ、そんな場合ではありませんでした」
「えっと、はんぞーくん? だから私は別に、気分が悪かった訳では……」
「我々に心配をさせたくないという会長の御心遣いを尊重すべきとは存じましたが、ここで無理をされて益々体調を崩されては元も子もありません」
 服部は大真面目な表情で――こちらは心から心配していると分かる真剣な眼差しで、真由美を見詰めている。
 少し顔が赤いのは、少々だらしなく座っていた所為で、サマードレスのスカートから太股が覗いている為だろうか。それでも、膝はきちんと閉じているのだが。
「服部副会長。何処を見ているのですか?」
 念の為にもう一度状況を説明するが、服部は真由美の顔を見詰めている。
 それ以外の箇所は見ていない、が、それは同時に――見ないようにしているという側面もあった。
 心配になって席を覗き込んで、視界に飛び込んで来たものから慌てて目を逸らした――後ろめたさを感じるだけの、身に覚えがあるだけに、服部は狼狽を隠し切れなかった。
 ……そんなことに後ろめたさを覚え、そんなことで動揺してしまうのは寧ろ、彼が真面目で純情な少年であるという証でもあるのだが。
「市原先輩!? 私は別に、何も見てなどっ……!
 いえ、その、会長に、ブランケットでもと思いまして……!」
 しかしこの場合は、上級生のお姉さまにとって、いい餌食である。
「服部副会長が会長にブランケットを掛けて差し上げるんですか?
 ではどうぞ」
 さも納得したと言わんばかりの訳知り顔で席を立ち、鈴音は目で、服部に促した。
 真由美はといえば、心得たとばかり、恥ずかしそうな上目遣いで大きく開いた胸元を両手で隠す真似などしている。
 ブランケットを両手で広げた姿勢でフリーズする服部。
 真由美の目には、確かに、嗜虐心が見え隠れしている。
 どうも少し、真由美は抑えが利かなくなっているようだ。
 ……司波君の見立ては正確でしたね、と鈴音は内心で思った。
 自分のことを棚に上げて。

◇◆◇◆◇◆◇

「……何をしているんだ、あいつらは……」
 硬直している服部を、期待に満ちた眼差しで真由美が見上げ、それを横から鈴音が冷ややかに見ているという変則的な三竦みに、摩利は呆れ声とため息を同時に吐き出した。
 どうやらいつも通り服部が真由美の玩具にされているらしい、と分かって、浮かせていた腰を座席に戻す。
 口には出せないが、摩利も真由美の体調を少しばかり心配していただけに、脱力感も一入(ひとしお)だった。
「まあ……いつもどおりか……」
 ああして真由美が弄り倒すから、服部がストレスを溜め込んで必要以上に二科生に対し見下すような態度を取り、更に副会長のそういうスタンスを会長として真由美が思い悩むという悪循環が生じていると、摩利は密かに睨んでいる。そしてそのことを、彼女は内心で苦々しく思っていた。
 とは言うものの、真由美が自分より遥かに大きな気苦労を常日頃抱えている、ということも、摩利は知っている。
 彼女の実家は、家系こそ古いものの――嘘か真か、渡辺綱の末裔らしい――現在の勢力地図上で見るなら、百家の末流に辛うじてぶら下がっている、という程度だ。
 摩利は一種の突然変異と言うか先祖返りと言うか鬼子と言うか、とにかく親類縁者の中で一人だけ突出した魔法の才能を有しており、その分、家族の期待は大きいものの、魔法界――この場合、魔法師の社交界――で他家との駆け引きに煩わされるということはほとんど無い。
 それに対して、現在、四葉家と共に十師族の頂点に君臨している七草家の、跡取りではなくとも直系、しかも長女である真由美には、高校在学中にして、どころか、高校生にもならない内から、度々縁談が舞い込んで来ている。(これは噂ではなく確実な情報だ)
 また彼女自身、十師族の中で比較しても尚、傑出した、と言える魔法の才能の持つ、将来を嘱望されているエリート候補生だ。
 それに加え、学校では生徒会長など務めて要らざる気苦労を背負い込んでいる有様。
 いくら芯はタフといっても、楽ではないはずだ。
 少し羽目を外すくらい、見逃してやるべきだろう、と摩利は思うのだ。
 友人として――と、例え思考の中だけであっても付け加えないところが、彼女の偽悪的というかシャイな一面かも知れない。無論、そんなことを面と向かって本人に言えば、その人間は殴り倒される破目に陥るだろうが。
 閑話休題。
 そんな訳で、エスカレートするまで放置しておこう――何だかんだ言って、服部も構ってもらえて嬉しいようだし――、と決めた(決めつけた?)摩利は、窓の外へ目を遣った。
 彼女の席は二人がけ通路側。
 必然的に、窓側に座っている人間が目に入る。
「……何でしょうか、摩利さん?」
 こちらも余り元気がなさそうな女子生徒が、摩利の視線に気付いて問い掛けて来た。
「んっ? いや、あたしは外を見ていただけだよ、花音(かのん)
 摩利も遠景から隣の座席へ焦点を移し、とりわけ女子に人気の高いクールな笑みをその二年生、千代田花音へ向けた。
 彼女は摩利が特に目をかけている後輩で、次の風紀委員長には彼女を据えようと色々手を回しているところだ。
 達也に頼んだ(達也が聞けば、有無を言わさず作らせられたんだ、と強く主張するに違いない)引継ぎ資料も、実を言えば彼女の為の物だった。花音がいなければ、摩利も詳細な資料を作ろう等とは思わなかっただろう。
 花音の千代田家は、同じ百家の中でも本流を構成する家で、優秀な魔法師を輩出する、本当の意味での「百家」だ。
 百家、というのは、家の数が百あるという意味ではない。
 十の位の次は百の位、という駄洒落みたいなもので、「十師族に次ぐ位の家柄」を意味する。
 ちなみに十師族も十の家系で構成されているという訳ではない。十師族を名乗る資格のある家系は合計二十八あって、その中でその時代に強い魔法師を数多く出している家を上から順番に十家選んで「十師族」としている。
 真由美の七草家は特に多数の優秀な魔法師を輩出することによって、四葉家は当代における世界最強の魔法師の一人と目され、「極東の魔王」「夜の女王」の異名を持つ、四葉真夜を当主に戴く事によって、十師族の双璧と見なされている。
 現在十師族を構成する家は、「一条」「二木」「三矢」「四葉」「五輪」「六塚」「七草」「八代」「九島」「十文字」と、偶々一から十までの数字が揃っているが、これは十師族という序列が生まれてから初めてのことで、今までは二つ三つの重複・欠番があるのが当たり前だった。
 十師族と、その補欠とも言える残り十八の家系、そしてその次に位置する本物の「百家」。
 その百家の一つが花音の千代田家であり、対物攻撃力なら摩利を凌ぎ、陸上兵器相手なら十師族の実戦魔法師に勝るとも劣らない戦闘力を誇る彼女は、千代田の直系を名乗るに相応しい魔法力の持ち主だった。
 もっとも、花音に元気が無いのは、真由美とは随分事情を異にしている。
 摩利の答えに「そうですか」と呟いた花音は、視線を窓の外へ戻し、「はぁ……」とアンニュイなため息をついた。
 その様が無駄に色めいていて、摩利には少々鬱陶しかった。
「花音……」
「はい?」
 再び振り向いた花音の視線の先には、先程と打って変わった顰め面。
 もっとも、顰に倣うの故事に似て、そんな表情さえ、摩利は魅力的だった。――主に、女性から見て。
「宿舎に着くまで、せいぜい二時間だろう。
 何でそのくらい、待てないんだ?」
「あっ、それ、酷いです!
 小さな子供じゃあるまいし、あたしだって、二時間や三時間程度、待てますよ!」
 摩利が呆れ声で訊ねた途端、花音は別人のように元気になった。
 唇を尖らせて抗議する顔の動きに合わせて、ボーイッシュなショートの髪が軽やかに撥ねる。
「でもでも、今日はバスの中でもずっと一緒だって思ってたんですよ。
 少しくらいガッカリしてもいいじゃないですか!」
「お前たちはいつも一緒にいるじゃないか……
 いくらフィアンセとはいえ、下手をすれば、あの(・・)司波兄妹よりも一緒にいる時間が長いんじゃないか?」
「バス旅行なんて今時滅多に無いんですから、楽しみにしてたんですっ。
 去年はあたし一人でしたし。
 それに、兄妹(あにいもうと)と許婚同士なら、許婚同士の方が一緒にいる時間が長くて当然です!」
「……そうなのか?」
「勿論です!」
 胸を張って――こう言っては何だが、少々ボリュームが不足している――断言する花音を前に、摩利はこっそりため息をついた。
 この後輩、普段は果断即決・有言実行、タフでポジティブで摩利好みの凛々しい少女なのだが……
(毎度の事ながら、五十里が絡むと別人だな、コイツ……)
「だいたいなんで、技術スタッフは別の車なんですか!
 走行中に作業なんて出来ないんだから、分ける必要なんて無いじゃないですか。
 このバスだってまだまだ乗れるし、席が足りないなら二階建てでも三階建てでもあるだろうに!」
 いいはけ口を見つけたとばかり、尚もキャンキャンと不満をぶちまける花音に、摩利はもう一度、こっそりため息をこぼした。

◇◆◇◆◇◆◇

 このバスには、花音と同じ不満を抱えている少女がもう一人いた。
 ――こちらは、花音のように騒いだりせず、しかしそれがかえって、彼女の友人たちには妙に怖かったのだが。
「…………」
「……ええと、深雪?
 お茶でもどう……?」
「ありがとう、ほのか。
 でも、ごめんなさい。まだそんなに喉は渇いていないの。
 わたしはお兄様のように、この炎天下に、わざわざ、外に立たせられていた訳じゃないから」
 静かで、柔らかな口調だった。
 見ているだけでヒンヤリとさせられる、全てを白く埋め尽くし塗り潰す深い雪のように。
「あ、うん、そうね」
 慌てて相槌を打ったほのかの脇腹が、軽く肘でつつかれる。
(お兄さんのことを思い出させてどうする)
(今のは不可抗力よっ)
 ほのかも雫も、テレパシーは有していない。にもかかわらず、目と目でここまで明瞭に通じ合うのは、不気味な威圧感を漂わせている深雪を「何とかしたい」という思いを、一つにしているからだろうか。
「……まったく、誰が遅れて来るのか分かってるんだから、わざわざ外で待つ必要なんて無いはずなのに……
 何故お兄様がそんなお辛い思いを……」
 遂にブツブツ声に出して愚痴り始めた深雪は、ハッキリ言って怖さ倍増だった。
 ほのかは、逃げ出したかった。
 せめて雫に、席を替わって欲しかった。
 だがこの状況で席を替わったりしたら、深雪に何をされるだろうか?
 ――いや、深雪はその程度のことで友人に何かをするような少女ではないのだが、彼女が身に纏わせている不穏な空気は、そんな妄想すら抱かせるレベルのものだったのだ。
「……しかも機材で狭くなった作業車で移動だなんて……せめて移動の間くらい、ゆったりとお休みになっていただきたかったのに……」
 怯えているほのかを見て、雫はため息をついた。
 深雪の独り言に、「わたしの隣で」が抜けてるよ、と思ったのだが(つまり雫の脳内では、深雪の独り言は「わたしの隣で(・・・・・・)ゆったりとお休みに」と変換されていた)、口にしたのは別の台詞だった。
「でも深雪、そこがお兄さんの立派なところだと思うよ」
 話し掛けるついでに、乗り出すようにしてほのかと席を替わる。
 背後で拝んでいるほのかの姿は、背中を向けている雫はもちろん、深雪の目にも留まらなかった。
 独り言を聞かれていたとは思っていなかった深雪は、咄嗟に反応できない。
 雫はそこへ、すかさず、普段の口数の少なさが嘘のように畳み掛けた。
「バスの中で待っていても文句を言うような人は、多分ここにはいない。
 でもお兄さんは『選手の乗車を確認する』という仕事を誠実に果たしたんだよ。
 確かに出欠確認なんてどうでもいい雑用だけど、そんなつまらない仕事でも、手を抜かず、思いがけないトラブルにも拘らず当たり前のようにやり遂げるなんて、なかなか出来ることじゃない。
 深雪のお兄さんって、本当に素敵な人だね」
 こういう歯の浮くような台詞を赤面もせずに言えるのは雫のキャラクターよねぇ、と思ったのはほのかだ。
 深雪は雫の、大真面目な表情から繰り出された大袈裟な賛辞に、虚を衝かれたのか目を見開いて絶句している。
「……そうね、本当にお兄様って、変なところでお人好しなんだから」
 辛うじて照れ隠しで応じた深雪から、底冷えのする威圧感は消え去っていた。
 ほのかは雫の背中に隠れて、ガッツポーズをとっていた。

◇◆◇◆◇◆◇

 人という生き物は、一部の例外を除いて、見たいものしか見ないように出来ている。
 見たくないものを見なかったことにするようになってしまった、と言う方が正確かもしれない。
 五感から得られる情報は、快適なものよりも不快なものの方が、生物にとっては重要であることの方が多い。
 不快なものとは自分を脅かすものであり、脅威をいち早く見つけることが生存の鍵となるのだから。
 だが人は、見たくないものから目をそらす。
 例えば、自分たちを皆殺しにする大量破壊兵器が、間違いなく自分たちへ向けられていると知っていても、土壇場になるまでその事実を無視している。
 本当の意味での生存競争と縁が遠くなった先進国の人間ほど、その傾向は強い。
 それほど大袈裟な例でなくとも、見たくないものを見なかったことにしてスルーするという事例は、日常生活の中で枚挙の暇がない。
 ――例えば、見目麗しい美少女が撒き散らしていた、剣呑なプレッシャーとか。
 いつものお淑やかな雰囲気に戻った深雪の周りには、男子生徒が群がっていた。
 さっきまで、近づこうとさえしなかったのだが。
 深雪は気後れを感じるほどの美貌だから、馴れ馴れしく付きまとわれるようなことはなかったが、主に一年生が、それに混じって二年生や三年生も、何かにつけて声を掛けてくる。
 いい加減、それを見かねた摩利が、深雪たち三人の席を強制的に自分の席の近くへ移動させた。
 そんな訳で現在は、ようやく平穏を得られた深雪と、好きなだけ愚痴ってすっきりした花音が窓際の席の前後に座り、横には摩利、彼女たちの後ろには克人を呼び寄せて睨みを利かせることで、バスの中は何とか落ち着きを取り戻していた。(なお真由美は、服部を散々弄り倒して満足したのか、すやすや眠っている)
 女友達同士のお喋りも楽しくはあるが、何となく物足りない。
 同じ想いを抱いた二人の少女は、窓際の席で、流れ去る風景をぼんやり眺めていた。
 だから、それに気付いたのは、二人が一番早かった。
「危ない!」
 叫んだのは花音だった。
 彼女の声につられ、バスの中のほぼ全員が対向車線側の窓へ目を向けた。
 対向車線を近づいて来る大型車――といってもこのバスより小さい、レジャー向けのオフロード車――が、傾いた状態で路面に火花を散らしているのだ。
 パンクだ、と誰かが叫んだ。
 脱輪じゃないか、と誰かが興奮した声で語った。
 その声に、危機感は無い。
 ハイウェイの対向車線は道路として別々に作られており、堅固なガード壁で仕切られている。
 対向車線の事故で影響を受けることはまずあり得ない。
 対岸の火事は、若い彼らにとって、興奮を呼ぶ見世物だった。
 ほんの短い時間、――その瞬間までは。
 誰かが、悲鳴を漏らした。
 一人では、なかったかもしれない。
 それも、無理のないことだった。
 いきなりスピンし始めてガード壁に激突した大型車が、どんな偶然か、宙返りをしながら自分たちの方へ飛んで来たのでは。
 急ブレーキがかかり、全員が一斉につんのめる。
 苦鳴は、注意事項を無視してシートベルトを締めていなかった生徒か。
 直撃は避けた。
 だが、進路上に落ちた車は、炎を上げながらこのバスへ向かって滑って来る。
「吹っ飛べ!」
「消えろ!」
「止まって!」
「っ!」
 パニックを起こさなかったのは、本来であれば寧ろ、褒められるべきかもしれない。
 だがこの場合は、事態をかえって悪化させた。
 瞬間的に、無秩序に発動された魔法が無秩序な事象改変を、同一の対象物に働きかけた。
 その結果、全ての魔法が相克を起こし、事故回避が妨げられる。
「バカ、止めろ!」
 摩利はそのことに、すぐ気付いた。
 幸い、行使された魔法は全て、発動中のまま未完成の状態だ。
 中途半端な状態の魔法を全員がキャンセルすれば、意味ある手を打つ時間はまだ残されている。
 強力な魔法は一瞬で現実を書き換える。
 ここには、卵あるいは雛鳥とはいえ、それを可能にする魔法師が揃っているのだ。
 だが――彼女の声に従うだけの判断力を残していたら、そもそも無秩序に魔法を放ったりはしていない。
 そして、先に発動された魔法の効果を打ち消して意図した効果を実現する為には、発動中の魔法を圧倒する魔法力が必要だ――
「十文字!」
 摩利は、その可能性を持つ魔法師を呼んだ。
 克人は既に、魔法発動の態勢に入っている。
 だが彼の顔に、滅多に見せぬ焦りの色を見出して、摩利は絶望に捉われそうになった。
 彼女にも分かっている。
 この無秩序に魔法式が重ね掛けされた空間は、広域干渉の影響下と類似した状態になっている。
(これではいくら十文字でも、炎と衝突を両方とも防ぐことは……)
「わたしが火を!」
 慣性を残す車内、窓際で立ち上がったのは、たおやかな一年生。
 彼女は既に、発動準備を終えていた。
 それを見た克人が、防壁の魔法式を構築する。
 だがいくら飛び抜けた才能を持つとはいえ、このサイオンの嵐の中で、一年生が魔法を有効に使えるのか――?
 その瞬間、摩利はそれを、自分の錯覚かと思った。
 魔法を知覚する、魔法師としての、自分の感覚を疑った。
 深雪が魔法を発動するその直前、迫り来る、炎を纏う鋼の塊に対して、無秩序に発動していた魔法式が、一瞬で、全てかき消されていた。
 そしてまるで、それ(・・)が起こることを予期していた様なタイミングで、深雪の魔法が発動した。
 炎上した自動車を凍らせることもなく、ドライバーを窒息させる空気遮断でもなく(とはいっても、生存は絶望的だが)、常温へ冷却することにより瞬時に消火を果たした鮮やかな魔法。
 その手際に、摩利は感嘆の息を漏らした。
 同時に、それが分かったということは、摩利の魔法感受性が正常である証だった。
 克人が展開した防壁の魔法――設定したエリアに設定した方向から侵入した物体の運動状態を静止状態に改変する移動系魔法――で、既に残骸となっていた車が潰れる音を聞きながら、摩利の意識は眼前の脅威から離れていた。(克人の魔法が突っ込んでくる自動車を受け止めることを、摩利は全く疑っていなかった)
 今、一体何が起こったのか。
 事故回避の為の魔法を妨げていた魔法式をかき消したあの現象は、一体何だったのか。
 真由美の魔法だろうか?
 ふと浮かんだその考えを、摩利はすぐに打ち消した。
 確かに真由美ならば、あの無秩序な魔法式の乱舞に対処することも出来るだろう。
 だが真由美の対抗魔法(魔法に対抗する為の魔法)なら、投射された複数の魔法式を、同時に撃ち抜き破壊するという形態をとったはずだ。
 あんな風に、全ての魔法式を無差別に、粉微塵に破砕して、かき消してしまったりはしない。
 真由美の魔法が精密に管制された対空砲火なら、あの魔法は(あれが魔法だとしたら、だが)絨毯爆撃で市街地を焼け野原に変えてしまうようなものだ。柱の一本も残さず鉄骨も全て溶解し基礎のコンクリートすら吹き飛ばして、完全な更地に変えてしまう――そんな、暴力的な代物だった。
 深雪は、摩利も克人も魔法力の混沌に立ち竦んでいたあの場面で、相克状態が消し飛ばされるのを知っていたかの様に、躊躇なく魔法を放った。
 彼女はあの「魔法」の主を知っているのだろうか?
 まさか、あの魔法は――?
「みんな、大丈夫?」
 追走していた作業車――今はこのバスのすぐ後ろで止まっている――を凝視していた摩利は、落ち着いた真由美の声にハッと我を取り戻して振り向いた。
「危なかったけど、もう心配要らないわ。十文字くんと深雪さんの活躍で、大惨事は免れたみたい。
 怪我をした人は、シートベルトの大切さを噛み締めて、次の機会に役立ててね?」
 次の機会なんて無い方がいいけどね、とおどけてウインクしてみせる真由美に、あちこちで笑い声が生じた。
 全員が緊張と恐怖から解放され、ホッとした表情を浮かべていた。
「十文字くん、ありがとう。いつもながら見事な手際ね」
「いや……消火が迅速だったから、止めるのに集中できた。
 あと、無闇にばら撒かれた魔法式を消したのは七草か?」
 克人に問われた真由美は、バツ悪げに目を泳がせた。
「あ〜……
 私、バスが止まるまで気付かなかったから……」
 そういえば、真由美は事故の直前まで眠っていたのだった。
 克人もそれをすぐに思い出したようだが、眉を一度上下させただけで、追い討ちを掛けるようなことはしなかった。――この学校の幹部の中で、一番の人格者は間違いなく克人だろう。
「あっ、それに深雪さんも。
 素晴らしい魔法だったわ。
 あの短時間にあんな絶妙なバランスの魔法式を構築できるなんて、私たち三年生にも難しいわね」
 真由美の言葉に、克人も、摩利も頷いた。
 三人とも、あの様な緊急時に、やり過ぎない――適切な魔法を選択し、その威力を適度に抑えることの難しさを十分理解していた。
 真由美から手放しに褒められて、深雪はほんのりと頬を染めた。
「光栄です、会長。
 ですが、魔法式を選ぶ時間が出来たのは市原先輩がバスを止めて下さったからで、そうでなければ咄嗟にどんな無茶をしてしまったことか、自分でも少し怖いです。
 市原先輩、ありがとうございました」
 深雪から丁寧なお辞儀を向けられて、鈴音も無言で会釈を返した。
 深雪の前の席では、花音がポカンとした顔で背もたれ越しに振り返っていた。
 摩利も驚きを隠せなかった。
 言われてみれば、バスのブレーキだけで、あそこまで速やかに停止できるはずは無い。
 ブレーキが掛けられた後、それを補う形で減速魔法が働いたのは想像に難くなかった。
 だが彼女は、突っ込んで来る車を相手に放たれた魔法に気を取られて、バスを止める鈴音の魔法に気付かなかったのだ。
 誰もが目の前の脅威に目を奪われていた時、足元を見据えて的確に講ずべき手を講じる。
 精度においては摩利たち三人をも凌ぐと評される鈴音の面目躍如たる活躍であり、同時に、誰も気付かなかった鈴音の魔法に一人だけ気がついていた深雪の才能は空恐ろしくさえあった。
「それに比べてオマエは……」
「いたっ! 摩利さん、いきなり何するんですか!?」
 突然頭を(はた)かれて、花音が涙目で抗議の声を上げた。
「うるさい。
 文句を言える立場か、花音。
 森崎や北山が慌てて魔法を放って事態を悪化させたのは、まあ、仕方がない。
 あいつらはまだ一年生だ。
 だが二年生のオマエが、真っ先に引っ掻き回すとはどういう了見だ!」
「うう、でも、あたしが一番早かったんです。
 まさか、他の人が重ね掛けしてくるなんて思わなかったんですよぉ……」
 花音の言い訳に、森崎と雫が恥ずかしそうに俯いた。
 他にも、居た堪れなげな顔をしている者が何人もいた。
「何でも早けりゃ良いってもんじゃない!
 もう少し状況を良く見ろ。
 ああいう時はまず、声を掛け合って相克が起こらないようにするのが基本じゃないか。
 それに、相克が生じた時点で魔法を解除しなかったのは、判断力を失っていた証拠だ」
「……すみませんでした」
 シュンとしてしまった花音を見て、摩利もそれ以上、責めようとはしなかった。
 ああは言ったが、あのような場面で冷静な判断力を保ち続けることは、場数を踏まなければ普通は出来ない。
 それを考えると、深雪はキチンと、自分が消火を担当すると声に出していた。
 才能だけで出来ることでは無いし、天才は往々にして自分だけ突出しようとする傾向があり、この手の協調を取るのは逆に苦手としているものだ。
 花音はその意味で、典型的な天才肌。
 深雪は何か、余程の修羅場を経験しているのだろうか。
 バスが走り出すのを大人しく待っている落ち着いた佇まいは、そのような経験値に相応しいとも相応しくないとも、どちらとも取れる。
「そういえば、司波」
「はい」
 摩利は、達也のことを名前で呼び、深雪のことを苗字で呼び捨てる。
 彼女は基本的に他人を苗字呼び捨てで、真由美や花音や風紀委員会の一部メンバーのような特に親しい相手だけを名前で呼ぶ。達也に関しては、異例の親近感を持っていると言える。
「あの魔法式を……いや、いい。何でもないんだ。本当に見事だった」
「はい?
 ありがとうございます」
 摩利は「あの魔法式を消した対抗魔法を使ったのが誰なのか、知っているのか?」と問うつもりだった。
 だが質問しかけたその最中、彼女はその答えを知るのを躊躇ってしまった。
 何故かは分からないが、その答えが彼女を取り巻く「何か」を決定的に壊してしまうような気がしていた。
 窓の外では、技術スタッフの男子生徒が分乗していた作業車から出て来て、救助活動を開始していた。
 とはいえ、宙を舞うほど激しく激突した上にあれだけ派手に炎上していたのだ。
 ドライバーの生存は、ほぼ絶望的。
 女子がいなかったのは、無残な焼死体を見せたくなかったのだろう。
 既に鎮火しているとはいえ、燃料のエタノールに再び引火する危険性もゼロでは無い。
 ドアを切り取ろうとしている三年生の後ろで、現場記録の為かビデオカメラを設置している一年生の姿が目に入る。
 自分がその背中を目で追っていることに気がついて、摩利は慌てて目を逸らした。


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