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政令市労組、飛び火怖い 橋下市長の退去要求波紋

 大阪市の橋下徹市長が「税金の入る公の施設で政治活動をしているのは問題だ」として、市役所内に入居する職員労組に退去を求めたことが波紋を呼んでいる。自治体では一般的に職員労組の庁舎内入居を認めており、退去要求は異例の厳しい対応。労組関係者らには「話し合いもせず、あまりに一方的だ。こうした動きが波及するのでは」と戸惑いが広がる。

 橋下市長が労組の退去に言及したのは、26日の市議会。11月の市長選で争った前市長の推薦者カードが市交通局で勤務時間内に配布されたなどと市議が指摘したことに関連し、「組合と市役所の体質をリセットしたい。公の施設で政治活動をすることはあってはならない。事務所は庁舎から出てもらう」と発言した。

 同市では、1982年の現庁舎完成時から、市労働組合連合会(市労連)や市職員労働組合(市職労)などが規定の2割の家賃で入居していた。

 2010年度からは減免率を見直し、現在は市労連や市職労など6団体が地下1階の計約760平方メートルを規定の4割の年約1400万円で借りている。同じ階に入居するコンビニ店や郵便局などに減免はない。市は、民間企業では労働組合法で労組への事務所の供与が認められているのを準用し、減免していたという。

 読売新聞が東京都と19政令市に取材したところ、職員労組が自前でビルを構えている川崎市を除き、市庁舎か市が借り上げたビルの部屋が労組事務所として使用されていた。大阪、京都、千葉、相模原各市以外は無償提供だった。

 職員組合が政治活動を行うことは禁じられていないが、橋下市長は27日にも報道陣に、「(公の施設である)庁舎内での政治活動なんて認められるわけがない。政治活動をやりたいなら、庁舎から出ればいい。徹底的に正したい」と述べた。

 大阪市の労組幹部は「日常的な交渉や協議の際、事務所が近くにあれば都合がいい」と事務所が庁舎内にある必要性を話す。神戸市の労組幹部も「橋下市長なりの思いがあるのだろうが、話し合いもなく退去通告は飛躍しすぎでは」と指摘。別の政令市の労組幹部は「企業組合では認められているのに……」と困惑する。

 小嶌典明・大阪大教授(労働法)の話「労働組合法は公務員の職員組合には適用外で、地方公務員法でも庁舎内に部屋を置くのは権利ではない。ヤミ専従など組合活動に問題が指摘される中で、市民の税金で建て、管理する施設を無償や家賃減免で貸すのはおかしいというのは常識的だ。ただ、労使交渉は極端な要求で始まるのが普通で、今後、市長と組合で着地点を探るのだろう」

2011年12月28日  読売新聞)
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