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【社説】

北朝鮮後継者 核兵器よりまず食糧を

 北朝鮮の金正日総書記の葬儀が営まれた。後継者の三男金正恩氏は、国民が飢えても核とミサイルを造る「貧しい軍事大国」を統治し、再建できるのか。国際社会は不安を抱きながら注視している。

 金総書記の棺を納めた車は平壌市内を進み、沿道では多数の市民が別れを告げた。二十九日には追悼大会が開かれ、労働党や人民軍の幹部が正恩氏に忠誠を誓う演説をするとみられる。

 正恩氏の現職は党中央軍事委員会の副委員長だが、党機関紙「労働新聞」は既に最高司令官と呼んでいる。

 来年四月には祖父の故金日成主席の生誕百年、人民軍創建八十年など国家的行事がある。正恩氏は当面、側近の補佐を受けながら国内安定を優先して「安全運転」で臨むのではないか。その後、機関決定を経て父の職位である党総書記と国防委員長に就任するとみられるが、時期が大幅に遅れるようだと指導者としての力量不足を示すことになる。

 軍を統治の中核にすえる「先軍政治」も継承される。心配なのは若い後継者が権力基盤を固めようと軍事力を誇示することだ。核実験や弾道ミサイルの試射をしたり、昨年の韓国・延坪島砲撃のような強硬策をとれば、国際社会は正恩氏は危険で信用できないと判断しよう。自制を強く求めたい。

 国連機関の調査だと、全人口の四分の一が飢餓に直面している。

 正恩氏がまず取り組む課題は食糧を確保することだ。改革・開放は難しいとしても、大量破壊兵器開発に使う軍事費を抑えて食糧生産にまわし、海外からの支援を引き出せば、国民は飢えの恐怖から解放される。

 今月中旬の米朝協議で、米国が栄養補助食品の支援を提案し、北朝鮮もウラン濃縮活動中止を検討していたという。金総書記が進めた政策であり、年明けに協議が再開されれば、後継体制でも外交が機能していると判断されよう。

 中国は共産党政治局常務委員九人が北京の北朝鮮大使館を弔問して、金正恩体制の後ろ盾になると意思表示をした。核放棄への影響力行使を期待する。北朝鮮が中国と合意した道路や港湾整備などの経済協力を進めれば、国内の経済再建にもつながる。

 金日成、金正日父子はあらゆる分野で指導をしたが、まだ二十八歳の正恩氏には同じような神格化はできないだろう。三代世襲の権威は、本当の近代化のために使うよう望みたい。

 

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