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今回は少し短めですが、ヨロシク御願いします。

では、どうぞ!
第二章


「・・・彼女は僕の主だよ」

ユウガオが僕の家に来るようになってから、友人たちに綺麗な人を見つけたなといわれるようになった。

恋人か?
いや、違うな。
友人かい?
それも、違う。
ならば、何?
決まっている。
僕の、主さ。

友人たちは僕を見て、顔を見合わせて帰っていく。

・・・ん?

彼ら、『友人』なのかな?
取り合えず一緒に居ることは多いけど、別に一緒に居なくてもいいし、居ても居なくてもという感じだけど。
まぁ、そんなことはどうでもいい。

取り合えず、僕たちの関係を表す言葉として一番しっくりくるのは、
『主と僕』。

主の居ない生活?
無理だ。
考えられない。
彼女が僕の所に来た時、僕はとても幸せなのだ。
それこそ、彼女の為ならば生きてもいいとさえ思えるほどに。

彼女との時間。
それはまるで精神を雁字搦めにされているようで、繋がれているようで、とても心地がいい。
彼女が来るたび腕に残していく傷跡が、僕を甘美な世界に連れて行ってくれる。

あぁ、僕はあまりにも、彼女に囚われ過ぎている。

「・・・じゃあ、お前の主はわざわざお前の為に此処まで来ているのかい?」

僕と彼女の関係を聞いて、そういった男がいた。
確かに。
これは、可笑しい、かな?
まぁ、仕方ない。
僕は彼女が何処に住んでいるのかも何をしているのかも知らないのだから。
彼女は僕に、何も教えてくれないのだから。
僕が聞かないからかもしれないが、なんとなく、そういう話は彼女から聞きたい。

彼女は月に二、三回ほどの頻度で僕の家に来る。
いつもげっそりとやつれて、今にも死にそうな顔をして。
また何も食べてないんだな、と僕は毎回無言のまま彼女の頬を撫で、自分の腕を差し出すのだ。

「・・・カイは、とても綺麗な血をしている」

「美味しいの?」

「とても」

僕の腕に牙を突き刺したまま、彼女は器用に話す。

時折、ぢゅっ、という音と共に血を吸い上げ、零れ落ちそうになった血を真っ赤な舌でぺろりとなめ上げる。
彼女の食事風景は酷く官能的で、僕はいつも喉を鳴らしてしまう。

「ねぇ、ユウガオ?」

「ん?」

血を啜りながら、僕を見た。

「僕を、君の所に連れてってくれないかい?」











『主』と『僕』



多分これが私たちの関係を表す言葉として、一番適切なものだろうと思う。

綺麗な血、美しい血。
悲しい瞳、やわらかな髪。

私は彼に囚われ過ぎている。
あぁ、こんなにも愛しいと思ったのは何時振りだろう。
何年も何百年も、忘れていた。

小動物を捕まえて血を飲んでも、最近は身体が受け付けない。
この間も一度、人を襲って血を飲んでみたけれど、その場で吐き出してしまった。

かつて、この血を吸うという行為は人との主従契約であった。

人を仲間として引き込み、僕として降す為の行為であった。
あぁ、きっと、結んでしまったのだ。
彼との主従契約を。
選んでしまったのだ、彼を僕として降る事を。

「・・・ねぇ、ユウガオ?」

静に紡がれる頭上の声に、私は小さく呻いて返事を返した。

「僕を君の所に連れて行ってくれないかい?」

あぁ、そんな、断れるわけないのに。
貴方の言葉を、主の言葉を、どうして断ることが出来ようか。
主と共に在る事を許されたこの喜び。
ことわること等、出来るわけがない。

「・・・もちろん」

「よかった」

心底安心したような声に、わたしは彼の腕から口を離し、その頬に口付をした。
私が貴方を拒む訳がない。
その思いをこめて、口付をした。





読んでいただきありがとうございます。次回もヨロシク御願いします。

御意見、ご感想があればそちらも御願いします。


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