PowerPoint/Illustratorユーザから見たMicrosoft Publisher
初めてまじめにMicrosoft Office Publisher 2010を使ってみた感想について、PowerPointやIllustratorと比較して、それらとの違いを中心に書いてみたいと思います。
Publisherとは
Publisherの公式サイトの説明を引用すれば、Publisherとは、
プロフェッショナルな品質の印刷物およびマーケティング資料を作成できます。
な、ソフトです。つまり、ビジュアル重視の印刷物を作るためのソフトというわけです。ちなみに、Office Personal 2010にもOffice Home and Business 2010にも含まれておらず、Office Professional 2010を買った人くらいしか所持していないでしょう。
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Publisher→PowerPoint→Illustrator
ポスターのプロトタイピングのためにPublisherを使ってみて、その後PowerPointに移り、最終的に結局Illustratorではじめから作ってみるはめになったのですが、そのときに抱いた感想を以下に列挙します。
PowerPointにあるクイックスタイルが無い
PowerPoint 2010では、クイックスタイルを使うことで、短時間でそれっぽいオブジェクトをたくさん用意することが出来るのですが、Publisherにはクイックスタイルがありません。クリックスタイルに近いものこそ存在するのですが、バリエーションが少なく、あまり使いやすいデザインがありません。
高速でそれっぽいものを作りたかったのに、クイックスタイルが貧弱では困ってしまいます。
Illustrator的なガイドが引ける
PowerPointにもガイドがあるのですが、あれとは違い、Illustratorに似たガイドが引けます。印刷物を作っている感じがなんとなく漂います。
余白がはじめから設定される
用紙を選択すると、はじめから余白が設定されます。PowerPointとは違い印刷を意識していることがここからも見て取れます。
図形の種類や設定項目はほぼPowerPointと同じ
矢印や角丸四角形などなど、PowerPointと同じ図形が配置できるようです。
複数のテキストボックスを連結可能
テキストボックスから文字列が溢れた場合に、他のテキストボックスへ続きを流し込むことが出来ます。InDesignなども含めたAdobe系では標準的に使われるプラスマークのあれです。
拡大縮小や表示領域の移動が使いにくい
IllustratorはCtrl+SpaceやCtrl+Alt+Spaceでの拡大縮小や、Spaceを押しながらの手のひらツール、ホイールを使った上下左右の移動がとても軽快ですが、PublisherはPowerPointに似ているので、いまいち。
広告ギャラリーなど、クリップアートとは別のパーツリストがある
Publisherではクリップアートとは別に、「ページパーツ」「カレンダー」「飾り枠とアクセント」「広告」という手っ取り早くパーツを用意する方法が用意されています。
特に「広告ギャラリー」は特徴的で、「○○% OFF」のようなキャッチや割引券など、いろいろ用意されています。
PowerPointのようなテーマが無い
PowerPointのテーマは、フォント・背景・配色をひとまとめに設定できて同じ雰囲気のデザインを作れて便利なのですが、Publisherにテーマは存在しません。その代わり、配色とフォントが設定できる「パターン」という者があります。ほとんどテーマと同じなのですが、なぜか配色がたったの「4色」を基本にして組まれているようです。また、標準の配色は基本「赤+青」であり、PowerPointと全く違います。
オブジェクトの配置は非常に優秀
オブジェクトを移動させるときの自動的な位置合わせ(縦をそろえるなど)はPowerPoint以上に優秀だと思います。オブジェクトをつかんだ位置に関係なくさまざまな組み合わせでスナップしてくれます。Illustratorのような角度ごとのスナップは出来ないのですが、それ以外は本当に優秀です。
表示倍率による表示の変化が致命的
ExcelやWordなどでは、縮小・拡大時に文字の太さが大きく変わることがあります。これは、印刷物をモニタを使って作成する場合、特にある程度の品質を期待する場合には致命的になります。Publisherではどうかというと、Publisherでも同様です。PowerPointでも当然同様なので、この点だけとっても、Illustratorで作ってしまった方が良さそうだと思いました。
差し込み文書タブ
リボンには「差し込み文書」があり、この点はとても便利に使えそうですが、ポスター作成には不要な機能でしたが。
用紙サイズの選択幅が少し多め
PowerPointは用紙サイズが変更できるものの、たとえばA0やA1は存在しません。一方でPublisherにはA0やA1まで存在します。さすがに印刷を目的とするソフトだけあります。ただし、もちろんIllustratorには大きく劣ってしまいます。ユーザー定義が出来るので致命的な問題にはなりませんが。
ドロップキャップができる
PowerPointでは出来ないはずというか、リボンにはなかったと思いますが、Publisherのリボンにはあります。また、合字などのOpenTypeフォント由来の機能も設定出来るみたいです。
カタログツール
これまたポスター作りに関係ないのですが、カタログツールという差し込み機能がありました。どういうことかというと、カタログのデータをリストとして作成でき、そのデータを「カタログデータの差し込み領域」にフィールドをどう配置するか定義しておくと、カタログの製品ごとに繰り返し挿入されるという機能のようです。ここでわざわざ「製品リスト」とする必要は本来なさそうなのですが、あえてそうしている点から見ても、Publisherは広告・マーケティング用途を重視していることが伺えます。
微妙にPowerPointと操作が違う
だいたいの操作がPowerPointと近いのですが、オブジェクトを選択した状態で「F2」を押してもテキスト編集が開始されないなど、微妙な違いがあり、少し気になります、というかだいぶ気になります。それと、やはり文字の配置のされ方や、行送りなどのデフォルトがなんか違う気がします。細かいところの統一がされていないのか、別製品だから製品ごとの最適化がされているのかは不明です。
テキストボックスの余白の概念が強化されている
テキストボックスをいじっていると分かるのですが、テキストボックスにマウスオーバーした時には余白を除いた領域が表示されます。
まとめ
今回の用途では、PublisherはPowerPointには勝てません。一番致命的だったのは、PowerPointほどじゃんじゃんオブジェクトを配置できないからです。というより、PowerPointの機能が充実しすぎているのです。OneNoteに比べればPublisherの図形描画ははるかにPowerPointに近いですが、それでもPowerPointの開発がとても進んでいる気がします。
また、Illustratorで十分高速に作れるくらいのシンプルなものか、思いっきりテンプレートに近いものしか素早く作れそうにありませんでした。これが一番の問題点。ただ、ページパーツを使いこなせれば(用意されているページパーツに作りたいものが適合すれば)まだいろいろ楽しく作れるかもしれません。また、自分の場合はページパーツが具体的すぎて適していないようでしたが、仕事で作業的にとにかく素早く大量に作るのなら、品質が下がろうと効率はよいのかもしれません。
これだけだとPowerPointでもよさそうな気がするのですが、拡大縮小にまつわる表示や操作感の問題から、やはりポスターという巨大な印刷物作りに使うのには厳しい製品に感じました。慣れているのならば、Illustratorではじめから作ってしまうほうが(Illustratorでおおざっぱに作っても良いわけで)楽だと思います。
ちなみに
ちなみに、PowerPointは印刷物向けじゃないと割り切られているわけではなさそうなのです。その証拠に、公式に年賀状テンプレートがPowerPoint向けに配布されています。やはり、PowerPointという中核製品にたくさん機能を提供したほうがOffice全体のことを考えたら効率がよいのかもしれません。Microsoft Power Pointの出来は本当によいですから。
Publisherの使い分け
Publisherを使ってみたところ、「製品カタログ」「チラシ」の作成向けに作られていると思いました。機能が少ないわけではないのですが、特化させている印象が強く、汎用性が低そうです。これら以外の印刷物を作るのならPublisherは微妙そうに感じました。
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