学長の逮捕(連載第20回)
朝日新聞朝刊に連載中の「プロメテウスの罠」の本日(2011年12月29日)掲載分を以下に引用します。
■学長の逮捕:20
学校で毎日飲むもの
仙台市教育委員会の健康教育課長、佐藤順は、宮城県が12月7日に公表した原乳の放射能検査の結果を見て驚いた。
宮城県は、県内3カ所で原乳の放射能を測定している。その濃度が、2カ所で1キロ当たり20ベクレル、21ベクレルと、前週の2倍を超えていたためだ。
県内では10月、大崎市が給食を検査したときに、牛乳で25ベクレルが計測されていた。仙台市の小学生の母親が、子どもの学校給食で使っている牛乳から放射能が出たと市教委に相談に来たことも聞いた。何らかの対策がいるな、と佐藤は思った。
仙台の牛乳を測定したのは福島県二本松市のNPO「TEAM二本松」だった。持ち込んだのは仙台市の自営業、横田美保(51)だ。その後も同じブランドの1リットル入り牛乳3本から17〜23ベクレルが検出された。
これを含めて、TEAM二本松は22日までに複数メーカーの37本を測定し、11本からセシウムを検出した。いずれも暫定基準値の1キロ当たり200ベクレルを下回り、来年度から実施予定の50ベクレルよりも低かった。
国が「飲んでも安全」とするレベルだ。
しかし、学校給食は半ば強制的に子どもたちの口に入る。より厳しい基準が要るのではないか、という意見も少なくない。TEAM二本松理事長の佐々木道範(みちのり、39)もいう。
「給食に出す牛乳の放射能はゼロにしてほしい。たとえ他県から持ってきてでも」
横田は、小学4年生の息子に給食の牛乳を飲むのをやめさせた。いまはお茶を持たせている。
「栄養バランスに優れた牛乳は給食のメニューから外しにくい」と佐藤はいう。当面の対策として、「放射能を理由にして飲まない子が代金を払わなくてすむ措置ができるかどうか検討しています」。
横田が指摘したメーカーは、関東・東北各県の原乳について、6月から週1回、放射能検査をしてきた。検出の下限である10ベクレルを超える放射能が検知されることもある。
メーカーに原乳を供給するのは販売農協。メーカーの担当者は「二本松の検査結果も含め、販売農協に伝えて改善を求めている」と話す。
生産者団体の宮城県酪農農協は11月半ばから動き始めている。所属の酪農農家全180戸を回り、えさの放射能を測定中だ。半沢善輝組合長は「放射能ゼロを目指す」という。
自分で測って確かめる消費者の動きが、メーカー、農家、自治体の対応を促している。(松浦新)
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