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社説:民主議員集団離党 浅ましい年の瀬の混乱

 消費増税問題をめぐり民主党内の亀裂が拡大している。野田佳彦首相が目指す年内の素案取りまとめの調整が難航する中、増税に反発する党所属衆院議員9人は集団での離党に踏み切った。

 政府・与党の素案も正式に決定しない段階での離党は次期衆院選での逆風をおそれ、党に見切りをつけた自己保身と断じざるを得ない。党税調は2015年4月までに消費税率を2段階で10%に上げるたたき台を示した。時期や税率も含めた意見集約と法案化への作業を首相はひるまず断行すべきである。

 東日本大震災で避難した多くの住民は今なお仮設住宅で寒さの脅威にさらされ、原発事故も実態は首相の言う収束に遠い。そんな年の瀬、相も変わらぬドタバタと政治の醜態が繰り返されてしまった。

 「マニフェストを約束して当選したが、ほごにされ立つ瀬がない。うそつきと呼ばれたくない」。議員の一人はこんな理屈で離党は正当と主張しているという。確かに消費増税は衆院選公約でふれておらず、八ッ場ダムの建設再開にみられるように公約は総崩れ状態だ。党の主要政策の方向と離党議員らの主張はかけ離れており、同じ党にいることがもはや不自然にすら思える。

 だからといって、今回の行動に大義や政治家としての責任を認めることはできない。

 次期衆院選も2年以内に迫り、増税への逆風におびえる空気が党内に広がる。しかも過去の新党騒ぎが年末にあったように、年内に離党した形を取れば、年明けに国会議員5人以上で新党を結成しても来年の政党交付金を受け取ることは可能だ。

 集団離党した議員のほとんどは小沢一郎元代表に近く、多くは今年2月に会派離脱を届け出たメンバーと重なる。橋下徹大阪市長が率いる「大阪維新の会」、石原慎太郎東京都知事を中心とした新党構想など既成政党を脅かす動きも議員心理を浮足立たせている。こうした事情が重なり、抗争が本格的に再燃したのが実態ではないか。だとすれば、政策本位とはほど遠い動きである。

 首相も覚悟が問われている。党内に根強い増税慎重論に配慮したのか、外国訪問前にあれほど強調していた年内の政府・与党素案作成の先送りに含みを持たせていた。党としての具体的な意見集約すらできないようでは「不退転」などと軽々しく言う資格はない。

 消費増税の法案化を進めるにつれ、さらなる離党の動きや対立が加速していくことは避けられまい。首相が党内融和を優先しても、おのずと限界がある。分裂も辞さぬ構えで政策の筋を通す局面である。

毎日新聞 2011年12月29日 2時32分

 

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