−発表資料−

2004年11月17日

「男性の体臭※1」は女性にとって“不快”である要因の解明
〜世界で初めて、男性の体臭の原因物質「アンドロステノン」と
その体臭増強作用を解明し、その抑制成分の開発に成功〜



 ライオン株式会社(社長・藤重 貞慶)ビューティケア研究所と生物科学センターは、『制汗デオドラント剤』の開発にあたり多面的な研究を進めております。この度は、女性にとって“不快”に感じる「男性の体臭」の原因物質が「アンドロステノン」であることを明らかにし、この体臭が増強されるメカニズムを解明するとともに、「男性の体臭」を抑制する成分の開発に成功いたしました。なお、この研究成果は『第55回日本化粧品技術者会研究討論会
(2004年11月25日 東京都千代田区丸の内3−2−2 東京商工会議所ホール)』において発表する予定です。

※1「男性の体臭」: 本研究における「男性の体臭」は加齢臭とは異なる男性ホルモン由来の体臭のことです。


1.研究の背景
近年、地球温暖化やヒートアイランド現象などの影響から都市環境の悪化が進むなど、日常生活で汗をかきやすい状況になっています。また、食生活の変化などの要因も加わり、体臭※2を気にする人が増えています。
一般的に男性と女性の体臭を比較すると、男性は皮脂分泌量が多く代謝も活発なため、女性よりも体臭が強いことが知られています。当社の調査では、20〜30代の男女(男性54名、女性50名)に異性の体臭を不快に感じたことがあるかどうかを聞いたところ、男性は「女性の体臭を不快に感じたことがある(15%)」に対し、女性は「男性の体臭を不快に感じたことがある
(100%)」で、女性が男性の体臭を不快に感じていることがわかりました。
そこで当社は、男性と女性の体臭の違いに着目し、女性が不快に感じる男性の体臭の原因物質やその作用について解明し、男性の体臭を抑制する成分を配合した『男性用制汗デオドラント剤』の開発を検討いたしました。

※2「体臭」: 皮脂や垢が皮膚常在菌によって分解されて生じる「分解臭」と、皮脂が汗中の鉄イオンによって酸化されて生じる「酸化臭」の2種類。「酸化臭」は当社が世界で初めて発見した体臭(2002年11月 第51回日本化粧品技術者会研究討論会にて報告済み)。


2. 世界で初めて、女性が“不快”に感じる「男性の体臭」とそのメカニズムを解明

 
1) 「男性の体臭」は女性にとって“不快”
 異性の体臭に対してどのように感じているかを評価するため、20〜30代の男女各10名にTシャツを7時間着用させ、そのTシャツの「臭気の強さ」と「臭気の不快度」を男女各10名の評価者が評価いたしました。その結果、「臭気の強さ」に関しては、男女ともに男性の着用したTシャツの方が強いと判定しましたが、「臭気の不快度」に関しては、女性の方が男性の着用したTシャツをより不快に感じていることがわかりました(グラフ−1)。
体臭は「低級脂肪酸類」「ケトン類」「アルデヒド類」「アミン類」「揮発性ステロイド類」などの成分を含んでいますが、特に「揮発性ステロイド類」は女性より男性の体臭に多く含まれていることから、女性が不快に感じる男性の体臭は「揮発性ステロイド類」が大きく影響していると考え、「揮発性ステロイド類」に着目した研究を進めました。

 
2) 「男性の体臭」が女性にとって“不快”に感じる原因物質は「アンドロステノン」

(1)女性は「アンドロステノン」の臭気を“明らかに不快”に感じている
 20〜30代の男女各20人に、わきの下に存在する揮発性ステロイド類「アンドロステロン」「アンドロスタジエノール」「アンドロステノン」(図−1)のニオイを嗅がせて評価したところ、「アンドロステノン」のみ男女で臭気の感じ方が大きく異なることが確認されました(グラフ−2)。すなわち、男性は「アンドロステノン」を“あまり不快でない”のに対し、女性には“明らかに不快”なニオイであることがわかりました。また、脳波計測による気分評価においても同様の結果が確認されました。

(2)「アンドロステノン」は“汗”と混ざることで臭気が増強する
 「アンドロステノン」は、実際にはわきの下などの部位で「汗」や「他の体臭成分」と混ざった状態で存在しています。そこで、「アンドロステノン」と汗の混合による臭気への影響を調べました。その結果、「アンドロステノン」は汗と混ざると臭気が有意に増強されることがわかりました。

(3)「アンドロステノン」は“他の体臭成分”の臭気を増強させる
 前述したように、「アンドロステノン」は「他の体臭成分」と混ざった状態で存在することから、代表的な体臭成分「低級脂肪酸」と混合して臭気および不快度を評価いたしました。その結果、女性の評価では「アンドロステノン」が存在することで、「低級脂肪酸」の臭気および不快度が有意に増強されていることが確認されました。


3. 植物成分「キョウニンエキス※3が男性の体臭成分「アンドロステノン」の発生を抑制することを確認

 女性が不快に感じる男性の体臭の原因物質「アンドロステノン」は、アポクリン汗腺から分泌される「アンドロステロン硫酸塩」が皮膚常在菌によって分解されることで発生します。そこで、皮膚常在菌により「アンドロステノン」を発生させるモデル実験系を用いて、126種類の植物成分について、各々の「アンドロステノン」発生抑制効果を調べました。その結果、「キョウニンエキス」に高い「アンドロステノン」発生抑制効果があることを確認いたしました(グラフ−3)。また、そのメカニズムは、「アンドロステロン硫酸塩」が皮膚常在菌によって代謝される過程でその代謝を抑制していることが実験で確認されました。
 「キョウニンエキス」は、古くから鎮静、鎮咳作用があるとして漢方で用いられておりますが、体臭成分の発生抑制作用があることを確認したのは今回が初めてです。

※3「キョウニンエキス」:杏仁(アンズの種子)から抽出したエキス。


 以上、男性用『制汗デオドラント剤』の開発にあたり、男性と女性の体臭の違いに着目して検討した結果、「男性の体臭」が女性にとって“不快”であるのは、(1)揮発性ステロイド「アンドロステノン」が原因物質であること、(2)「アンドロステノン」は汗と混ざることで臭気が増強されること、(3)「アンドロステノン」は他の体臭成分の臭気および不快度もさらに増強させること、を確認いたしました。
 そして、「アンドロステノン」の発生を抑制する物質として「キョウニンエキス」に高い効果があることを初めて確認いたしました。
 今後は、これらの技術を応用した商品開発を進め、2005年春に全く新しい男性用『制汗デオドラント剤』を発売する予定です。
※本研究に関する特許は、4件出願中です。


【第55回 日本化粧品技術者会(SCCJ)研究討論会】発表概要
・開催日 2004年11月25日(木)
・会 場 東京商工会議所ホール
・演 題 1 体臭に及ぼすステロイド類の影響とその対処(1)
〜揮発性ステロイドの体臭増強作用と感受性の性差について〜
・発表者 ライオン株式会社 ビューティケア事業本部 ビューティケア研究所
尾本 百合子、三宮 智昭、徳永 義弘、宮崎 雅嗣、近 亮、高田 康二
・演 題 2 体臭に及ぼすステロイド類の影響とその対処(2)
〜微生物代謝による揮発性ステロイドの発生とキョウニンエキスによる
その抑制〜
・発表者 ライオン株式会社 研究技術本部 生物科学センター
御子柴 茂郎、竹中 玄、奥村 隆、染矢 慶太、林 達男、大寺 基靖

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以上

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広  報  部 03−3621−6661

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