明日の医療

南相馬市の放射能検査をやめさせた総務省

官僚の論理を最優先、被災地の健康問題は二の次、三の次

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 行政と学問の関係は注意が必要です。先に述べたように、行政が学問を支配すると、行政の都合でデータの隠蔽や歪曲が生じてしまいます。

 内部被曝検査についても、複数の施設が、独立した形で関わるべきです。それぞれが成果を発表し、議論するのが学問のあるべき姿です。意見の違いが、進歩を生みます。

 互いにデータを検証するのはいいにしても、県が一括管理すると、隠蔽が生じたり、行政の都合で医学上の正しさが捻じ曲げられたりする可能性があります。

 南相馬市の行政の最優先事項は、福島県や福島県立医大の機嫌ではなく、南相馬市民の幸福です。南相馬市立総合病院は、福島県・福島県立医大に対して、WBCのデータを1件5000円で譲ることを拒否しましたが、これはデータを行政が一括管理することのリスクを考えれば、当然のことです。

 これをもって、福島県や福島県立医大に多大な迷惑をかけたとするならば、基礎自治体の職員としての姿勢が問われます。

 県庁の機嫌を市役所が取り繕わないと、総務省―福島県経由の予算に影響があるとすれば、副市長が県庁の機嫌を気にするのは理解できます。

 しかし、そうだとすれば、総務省と福島県に問題があることになります。県の裁量で予算を市町村に分配すると、県に過剰な権力が生じ、県と市町村の行政をゆがめます。

 総務省からの市町村への予算配分は、県を介在させない、あるいは何らかの方法で、総務省や県の裁量の余地を小さくすべきです。

 実際に、福島県の復興予算要求は火事場泥棒とでも言うべきものでした。復興とは、被災者の生活が再建されることですが、福島県は、復興予算を、被災地や被災者に振り向けず、県立医大病院に病棟を建設するなど、本来県の通常の予算で行うべきことに使おうとしています(引用文献8)。

 そもそも、総務官僚が、県や市町村に幹部として出向するのは、過剰な権力が生じていることの証しのような気がします。

 メディアの監視が県レベルに及んでいないため、地方自治における権力は、権力の自覚と用心深さを欠きます。福島県や村田副市長はその典型ではないでしょうか。

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