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郊外都市の24時間 RSSフィード

11-12-28 Wednesday

カオス・ラウンジ偽札問題についての経緯と顛末

 アート・プロジェクト「カオス・ラウンジ」は彼ら自身の行動によって様々に揉めているが、そのうち「カオス・ラウンジ偽札問題」については自分自身が当事者でもあるのでここに、僕の知る事実を記述しておこうと思う。

 現在飛び交っている断片的な事実、様々な疑惑、憶測について、僕自身が Ustream などの記録の残らない媒体を使って情報を露出させてしまったことも原因のひとつであろうと思い、ここに情報を集約する。

カオスラウンジ偽札問題とは

 アート・プロジェクト「カオス・ラウンジ」が2010年5月8日から23日に渡って、渋谷NANZUKA UNDERGROUNDにて開催した「破滅ラウンジ」の会場にて偽札が製造、販売された疑いがあり、事実だとすれば通貨偽造の罪にあたる、とする問題。

偽札の生まれた経緯

 以下、時間軸に沿って箇条書きする。

  1. 2010年5月8日、渋谷NANZUKA UNDERGROUND にて「破滅ラウンジ」が開催される
  2. 2010年5月10日くらい? @yuiseki や糸柳らに誘われて「破滅ラウンジ」を見に行く
  3. 「破滅ラウンジ」は宿泊自由だと言うので、無職で暇だったから泊まりこむ
  4. 財布がどっか行ったことに気がつく
  5. Twitter にて財布をなくした旨、書きこむ
  6. 各種カード類を停止する
  7. 渋谷警察署に電話をして、遺失届*1を行う
  8. 数日後、展示を見に来た客から「財布ってこれですか?」と手渡される
  9. 紙幣が抜かれ、かわりに偽札が入っていた → http://twitpic.com/1nf4u3
  10. 翌日(くらいだと思う?)、警察に財布発見の連絡をする

諸問題について

 以下、とうぜん湧くであろう疑問について。

なぜ「盗難届」ではなかったのか?

 「破滅ラウンジ」の会場はゴミ捨て場のような有様だったので、盗まれたという自信がなかったから。

なぜ、偽札を販売、展示したのか?

 偽札を展示、販売した人間について僕は知らない。

 財布が見つかり、偽札が入っていたとわかった時に、見たいという人に手渡した。いつの間にか貼り出され、値札がついていた。到底、納得の行く回答ではないだろうが僕の興味は返ってきた財布にあり、ゴミ同然の偽札にはなかった。

 また「破滅ラウンジ」の会場は、常に人間でごった返しており、かつ、展示物すら来場者が勝手に設置、放置していったもので構成されていた。会場ではCDやミニコミが販売されていたが、それらも全て来場者が勝手に販売していたものだった。誰が何をしていたかについて少なくとも僕は何も把握していない。

なぜ、すぐに偽札の被害届を出さなかったのか?

 理解が足りなかった。ごめんなさい。

 抜き取られた金額が小さかったこと、それなりに思い入れのある財布だったので無事に返ってきただけで満足していたことが大きい。警察に紛失物の発見を連絡した際に、紙幣が抜き取られ、偽札が入っている旨は伝えたが特に被害届の提出を促されるようなこともなかったため、放置していた。

なぜ、財布の発見報告をした時に警察は重要視しなかったのか

 僕は警察ではないので知らない。

 強いて言うなら僕の口調があまりにも軽薄だったのかもしれない。

偽札は今、どこにあるの?

 知らない。

 ただ、偽札の行方ではないが、破滅ラウンジがどうなったかは Public Image の記事が伝えている。

今回の「破滅ラウンジ」の作品の行き先についてだが、あのインスタレーションをまるごと村上隆が買い上げたそうだ。

http://public-image.org/column/2010/07/02/nanzuka1.html

警察の見解と対応

 この後、Twitter にて ultimate_q4500 氏より「被害者当人でないと相手をしてもらえない可能性が高いので、偽札について警察へ届けて欲しい」と依頼され、紛失届を出した渋谷警察署へ届け出た。依頼から二ヶ月以上経ってしまったことについては謝罪する。

 結論から言うと「現物がなければ何もできない」ということだ。警察は、被害者が被害の証拠を持って被害届を提出しなければ動けないらしい。また、写真は証拠にはならない、とのこと。

 以下、対応してくれた警察官(刑事?)の見解。全て「現物を見なければ確かなことは言えないが」と前置きした上での話。

  • 偽札の程度が低いので、立件できるかどうかはあやしい*2
  • 時間が経過しすぎているため捜査(偽札自体の指紋や、関係者の指紋収集を含めて)は難しいだろう

 以上は、「警察の公式な見解として、公にしてもよい」との確認を取っている。なんにせよ、現物がなければどうにもならないそうだ。

おしまい

<<EOF

以下は筆が滑った spam

「どうしてわざわざカオス・ラウンジになんて言及したの?」と訊かれる。

依頼があったのは確かだが、僕は別に、カオス・ラウンジのことが書きたかったわけじゃない。

うまく言語化できないが、少し筆を滑らせて、インターネットの spam を増やしてみた。

ここから先はいわゆる「カオス・ラウンジ問題」とは関係のない広告記事なので、暇な方以外はお引取りください。

インターネットが見ているぞ!!逃げろ!!!

 僕は二次創作が好きだ。空想、妄想が好きだと言っても良い。異世界に召喚されて剣と魔法で戦う空想はファンタジー作品の二次創作だし、一攫千金の夢物語もどこかの誰かの成功体験の二次創作だ。隣のあの子はちょっとエッチだ、なんて妄想も「あの子」とエッチな何かの掛け合わせ二次創作だ。二次創作は素晴らしい。現実と空想の両立が成り立つのは二次創作にしかない。ここで言う現実は、だいたいアニメだ。アニメという現実があって、その空想としての二次創作がある。この時、空想はおそろしいリアリティでもって顕れる。なんたって現実の側もアニメなんだから。次元の違いが極めて小さい。僕は根本的に、人間の想像力は全て二次創作だ、と考えている節がある。

 だからコミックマーケットとその周縁文化を害する全てが嫌いだった。とらのあなやメロンブックスに代表される委託販売を便利なものとしながらも疑問視し、Pixiv に代表するイラスト SNS や、オタク・カルチャーを持ち上げ喧伝、輸出しようとする全てのメディアが嫌いだった。人間の想像力が本気出して暴れ回れるユートピアをそっとしておいてほしかった。眠れるコンテンツホルダーを叩き起こそうとする全ての要素に怯えていた。自由な場所が存在することには価値があると思っていた。

 インターネットは自由な場所だった。グレーな部分を取り締まろうとする輩のいない場所。完全にブラックなものですら野放しになっているほどに自由な場所だった。素晴らしい場所のように思った。現実に居場所のない人々が集まり、連帯し、自由を謳歌した。次々と便利な仕組みが生まれた。自分のほしい情報を選択し、選別し、自分のいらない情報を見えなくした。必要なものを得るために、いらないものを得ないために、人々の権利と自由を守るためにインターネットは進化した。速やかに討論され発明される新しいものごと。規約、規則、設計モデル、フレームワーク、ユースケース、検討される安全性、不正アクセス防止法、プロバイダ責任制限法、安全な認証のもとに保証される自由な空間に次々と生まれるWEBアプリケーション。インターネットは進歩した。人々を繋げた。世界はこんなにも便利になった。情報の進歩と流通は、とても気持ちの良いものだった。

 僕は同人誌やMAD、二次創作に日の当たる居場所が与えられるのも何かが違うと感じていた。不自由な場所からの声には魅力がある。不自由を自由に変えたと言う功績ではない。変えられなかった失敗でもない。魅力的なのは不自由な場所からあげる声そのものだ。例えばそれはロックやハックと呼ばれていたものなのかもしれない。勝ち取った居場所が素晴らしいんじゃない。勝ち取ろうとする意思が素晴らしいんじゃない。認められたリミックス。望まれるグラフィティ。公式MADも公式同人誌は何かが違う。買うけど。

 インターネットはどう進化した? 良くないものを捨ててきた。良くないものを排斥してきた。前進してきた。進歩してきた。たくさんのものが捨てられた。良くないものが捨てられた。良くないものが改善されて、良いものになった。良くないコードを排斥し、良くない設計を排斥し、良くないことをできなくした。良くないことをできなくしたら、良いことだけが残るはずだ。それだけは確かなことだ。今のインターネットは、かつてのインターネットよりも良くなっている。我々は前進の中にいる限り、良くならざるを得ないのだ。

 そんな夢を見ている間に、世界は簡単にほどけてしまう。

【Amazon.co.jp限定初回特典付:ももクロ×DOMMUNE_オリジナルグッズ】DOMMUNE オフィシャルガイドブック2 (DOMMUNE BOOKS 0006)___KAWADE夢ムック

 DOMMUNE BOOKS に、著作権の話を書かせてもらった。僕の書いたことはほとんどフェアユースだ。でも、フェアユースから零れ落ちてしまう部分もある。それがこのエントリが、カオス・ラウンジ問題に連なっている理由だ。匿名の人々、声なき人々の想像力。声なき人々によって紡がれた想像力。不自由な場所だから顕れた想像力。それが今、インターネットに溢れている。誰も彼もが意識せず、彼らの産み出したコンテンツを消費し続けている。「良い」と「悪い」の狭間。肯定され得ない「良い」。否定され得ない「悪い」。悪い「良い」。良い「悪い」。二元論の言語で表現する以上けっして評価することのできない「良い」に対する声は常に沈黙だった。しかし僕にはもうすぐそこまで、インターネットが迫っているように感じられるのだ。

*1:紛失届だと思っていたけど、電話だけで完了するのは遺失届らしい。悪用された時の保証が少し違うとかなんとか?

*2:どうして程度が低いと微妙なのか? どうも流通させようとする意思が認められるかどうかがけっこう重要らしい。なんにせよ、この「意思」というのも状況と現物を見て警察が判断する部分。

10-01-10 Sunday

ニートがテレビに出ました

http://d.hatena.ne.jp/pha/20100108/

http://www.tv-tokyo.co.jp/mikata/


「たけしのニッポンのミカタ」という番組に出たら、スタッフによる素晴らしい編集が加えられていて、その編集手腕について Twitter で少し触れたら Retweet されまくっているし、慶応 SFC の学生が番組のキャプチャ画像を tumblr に流しまくっており情報の拡大が大変に大きいので、いくつか放映中の間違いの訂正も含めて「本当のように見えること」をここに記述する。


撮影中、スタッフに内緒で ustream 中継をしたり、「金くれ」からの振込だけで生きているかのように受け取れる発言をしてみたり、Twitter に「まーたテレ東の仕込みがはじまったでー!」などと post したり、取材に対するこちらの態度もかなり不誠実であった点をまず強調したい。


さらに、 ustream の放送は録画されておらず、以下の情報は私の記憶から再生したものであり、これはテレビ東京の放送に加えられた編集とはまた別の、私自身による編集が否応なく加えられている。どちらも編集者の意図が介入したシナリオに沿ったテキストであり、平等にフェアじゃない。伝えたいという意志は個人の内にしかなく、情報は意志と乖離した形でしか顕れない。解釈は個々のクライアントによって独自に行われる。放送は偏向ではなく、テレビ東京のスタッフには以下の会話が、放映されたような内容に解釈されただけに過ぎない。あなたの理解が、私の理解が、テレビ東京の伝えたかったことであると誰が言い切れるだろうか。全て平等に、価値がない。


このエントリを読んで、放送内容は正しかったと解釈することも、放送が偏向していた解釈することもあなたの自由だ。しかしそれは、どちらも盲目的に過ぎるのではないだろうか。


純粋な情報の間違い

  • id:ykic は 24 歳ではない
  • ギークハウスの間取りが狭い

いくつかの会話を断片的に

「働いたら負けだと思ってます」

「お!! それはどういうことですか!?」

「テンプレです」

「?」

「ネットにそういう名言があるんですよ、お約束みたいな」

「金くれって知ってます?」

「ええ」

「あそこに登録しているんですよ」

「本当に振込まれるんですか?」

「振込まれますよ!」

「かなり振込まれます!!」

「……いくらくらい?」

「それは言えませんねえ、個人情報ですので」

「同い年くらいの人はバリバリ働いてると思うんですが」

「働いてるでしょうね」

「そういう人たちをどう思いますか?」

「素晴らしいじゃないですか」

「正直、どう思いますか?」

「いいんじゃないでしょうか。それが正しい人生だと思います」

「しょ〜じき!」

「え〜」

「ほんとのところ!」

(この時点で、しつこさにちょっとイライラしていた)

「まあ、ぶっちゃけ働いてる奴はバカだと思いますよ!」

「お!」

「……とか言ってほしいんですか?」

「いやいやいやいや、そんなことありません!」

「自分は払うって約束されていたお金を払いませんと言われて、当たり前の契約違反だと思ったから会社をやめただけだし、働いてるときはそれなりに楽しかったし、特になんとも思いませんよ。頑張って社会をまわしてください」

(撮影終了後)

「取材を受けたことはインターネット上に書き込んでいただいても構いませんが、"やらせ"だとかは書かないでください。そんな指示はしなかったし。しなかったですよね?」

「はい」

あとTwitter上でご飯を奢ってもらったのはテレ東の指示。奢ってくれた人たちは好意だけど、奢ってくださいと post させたのはテレ東。


ところで

働かずに生きていけるなんて本当に信じてるの?

それはちょっと夢見すぎなんじゃないですか……。


ちなみに私が働いていることは撮影スタッフも承知済みで、「仕事がなくなったら、どうするんですか?」などという質問もされたが、それはもはやニートに対する質問ではない。


あと

別に誰にどのように思われても構わないし、わざわざエントリにしたのはネタになると思ったからで、放送に対して不愉快であるとかは特にありません。好きなように思ってくれればいい。エントリに起こした一番の目的は年齢の訂正です。

最近まで無職最近まで無職 2010/01/10 17:52 音声録音だけでも残っていればよかったのにな。価値の有無の確認のためではなく、事実確認(舞台裏的な感じだけど)のために。今後機会があれば是非お願いします。

vacavonvacavon 2010/01/10 18:54 自分も似たような経験があるのでめっさわかります。
ただ、テレ東が流した通りだとしても、なんの非難を受けるべきものはありませんよね。
生産せずに食べているのは芸能人も一緒。
生活保護などを受けているのであれば別の話になりますが、どうやって飯を食っていくかと言うことに関して、奴等にどうこう言われる筋合いはない。

lingts490lingts490 2010/01/11 12:22 番組を拝見させていただきました。この記事を読むことによって更に面白さが増しました。番組制作の手法や編集の偉大さなど参考になりました。
非ネットユーザーからしたら、あの番組が全てになってしまいます。そういう人にこの記事を見せてみたいという好奇心があります。
やはりテレビはネットが嫌いなようです。非ネットユーザーに対する新たなアプローチが必要でしょう。

09-10-26 Monday

「仏陀再誕」鑑賞

インターネットで集まった熱狂的パケット信仰主義者らと宗教団体「幸福の科学」によって製作された映画「仏陀再誕」を見てきた。細かい経緯は糸柳によるものを参照してほしいが、幸福の科学の方々のご好意で無料鑑賞券を手に入れるに至った。

私もおおよそ同じような話をされた。まるで井戸端会議をしているようなテンションでナチュラルに「エルカンターレ」などと言われれば噴出してしまう。アメリカにて、キリストが父と呼んだ存在は大川隆法であり、天の国から指示を下していたのだと広めたらキリスト教徒たちはとても驚いてしまったそうだがその驚きはもっともで、私も大変に驚いてしまった。

海外における活動の話から、アメリカ、ヨーロッパなどのキリスト教圏では支部も複数が設置されそれなりの勢力を作っているようだがアジア、イスラム教圏における活動はまだ難しいと聞かされた。イスラムの信仰は熱狂的かつ一神教だから正しい心を説くのが困難なのだそうだ。キリスト教も一神教だと思うのだが、キリストと父と精霊など、介在の可能性を持つ関係性が成立していれば問題ないのだろう。コーランにおいてもヤハウェが自分のことを「我々」と複数形で名乗っている箇所があるらしく、やはり大川隆法の存在が示唆されているらしいのだが、私の宗教知識の浅薄から深い話には立ち入れずただただ驚くばかりだった。

付け加えるならば、この映画シリーズは3年ごとに製作されており、今回の「仏陀再誕」で6作目だという。

幸福の科学オフィシャルサイトによると以下の5作品が紹介されていた。


  • 1994年
  • 1997年
    • ヘルメス 愛は風の如く
  • 2000年
    • 太陽の法
  • 2003年
    • 黄金の法
  • 2006年
    • 永遠の法

教えてくれた方の記憶違いか、全国公開ではない一作目が存在するのかもしれない。なお、3年後の2012年には続編「神秘の法」の公開が予定されている。

幸福実現党の事務所は非常に小奇麗で、中にいた人々もいかにも新宿を歩いていそうな若者からスーツの紳士まで幅広い。とくに不愉快に感じるようなしつこい勧誘などはなく、面白全部のわれわれの方が害悪であったことは言うまでも無い。


以下に、仔細な「仏陀再誕」のネタバレを行うので、劇場での鑑賞を楽しみにしている方はブラウザを閉じ信仰の喜びに身を振るわせた方がよい。鑑賞を予定していないひとも、かなり長いので飛ばしてもらった方がよい。



主人公・天河小夜子は新聞部に所属する女子高生。ジャーナリストとして真実を伝えるべく、校内新聞というローカルな活動にも関わらず有名女優の舞台レポート、インタビューを取るなど幅広い活動をしている。物語は小夜子が、暗いトンネルの中で電車に轢かれてしまう不吉な夢を見るところから始まる。

翌日、小夜子は父の友人でありまた自分も尊敬していたあるジャーナリストの自殺を知る。大変に絶望した小夜子を慰めてくれる友人の背後に強烈な怨念を視る小夜子。ジャーナリストの死をきっかけに、生きている人間の悪意や、教科書に残された歴史からも怨念を読み取れる、霊視能力に目覚めた。

霊視能力は同時に、怨念からの干渉を受けることにもなる。

小夜子は駅で、自殺したジャーナリストの怨念によって線路に引きずり落とされそうになる。ここで冒頭の夢が予知夢だったことが明らかになる。

殺されそうになった小夜子は死後の世界を垣間見る。

死後の世界では自殺したジャーナリストが裁判にかけられていた。

「死後の世界などない、神などいない」と悪ぶるジャーナリストに、裁判官は言う。

「また唯物論か……愚かな」

「最近こういう人ばかりですね。仏陀が再誕されているというのに」

悔い改めることを説かれ、謎の空間に吸引されるジャーナリスト。

そして小夜子は現実に戻る。

線路に飛び込みそうになった小夜子は金髪にチャラい男に助けられ、一命を取り留めたのだ。

スターバックスのようなところでチャラ男から、この世界には「あの世」と「この世」が存在し、死んだ人間の魂は天国を経て再び生まれ変わる。しかし地獄へ落ちた魂は人間を不幸にするべく彷徨い続けるのだと親切に教えてくれる。

ここで妙なギャグが入る。

「一体何がどうなってるの……なにより、この絵と字!下手すぎない!?」

スラプスティックなコメディに癒されるも、何かあればすぐに連絡をいれるようにいチャラ男に対して、必要以上な頑なさを示す小夜子。

はっきり言って、いきなりこんな話をはじめるチャラ男もおかしければ小夜子も激昂しすぎなのだが、ここで回想が挿入されチャラ男が小夜子の元カレであることが説明されてやっと納得がいく。

そして、この一連の出来事を小夜子の弟がパパラッチしていた。


その夜、小夜子がテレビを見ていると、「操念会」と団体の会長である「荒井東作」という銀河万丈が仏陀の再来であるとして登場し、超能力を見せた。翌日、学校はその話題で持ちきりであり、新聞部は操念会への取材を決定。チャラ男の「操念会は危険だ」という忠告もきかず取材を慣行する。

操念会では銀河万丈が「弱さは悪だ。力こそ正義。私には力がある。私に従えば幸福が実現される」とギレンばりの大演説。

小夜子の身に危険を感じたチャラ男と、小夜子をパパラッチする弟が操念会に乗り込み、小夜子を連れ戻そうとすると警備員たちがハシャぎはじめるが、「TISのメンバーが外で待っている」と脅された途端にションボリしてしまう。

なぜ操念会が危険なのか、TISとは何なのか、何も教えてくれないチャラ男に激昂する小夜子。だが、喧嘩をしている間に弟に悪霊が取り付き、弟は死にそうになってしまう。

小夜子の父は医者で、科学の力で弟を治療しようと奔走するが、どう考えてもありえない感じに人体が膨張し奇形化した弟を治すすべがみつからない。小夜子は弟の病が悪霊に取り付かれたものだと告白するが「非科学的なものはお父さん、ダイッキライだ!」と怒られてしまう。

そんなある日、弟を見舞うため病院へ向かった小夜子の元へ外国人と女性の二人組みが現れる。

「ヤッパリ病院にはたくさんイマスネ」

二人組みが現れると病院に渦巻いていた悪霊が雲散霧散、場はみるみると浄化され極楽浄土が訪れた。その外国人はTISの一員であり、さらにもう一人の女性は主人公の憧れていた女優・木村真理こと葛城ミサトだった。

木村真理はかつて操念会の一員であり、女優として絶望していたさなか、荒井に拾われ、一時は女優として隆盛を極めるもその傲慢さ、他人を蹴落としてでも上り詰めようという姿勢にひとびとは離れていき、女優としての道も閉ざされてしまいそうになった。そしてそこへ現れたのが子安武人、もとい「空野太陽」であり、彼こそがこの世に生まれ変わった仏陀なのだという。

空野太陽の教えは、欲望に支配されてはならない、人間は助け合いながら生きていかなければならないのだと説き、心を改めた木村真理は操念会を脱退し再びトップスターの地位に返り咲いた。

そしてついに再誕の仏陀こと子安武人こと空野太陽は小夜子の弟の病室を訪れ、その取り付いた怨念を外国人の体に憑依させ、説伏を行い成仏させる。

小夜子の父親は自らの力の足りなさを悔いた。人間を助けたかったから医者になったのに人間を助けられなかった。そんな小夜子の父に再誕の仏陀こと子安武人は「人間を救いたいのなら、まず人間の魂を知らなければならない。肉体を救えても、魂が救われなければそれは本当の幸福でない」と説く。さらに再誕の仏陀こと子安武人は、彼がこれまで家族に隠していた絶望的なガンを見抜き、やり直せない人生などないのだから今からでも遅くは無い、魂は救われる、と説き、父親は悔い改めた。再誕の仏陀こと子安武人への感謝を惜しまない小夜子はチャラ男とヨリを戻す。

記憶があいまいだがこのあたりで荒井と子安、双方の講和が対比的に挿入されたように思う。荒井の講和では恐れ、涙する人々がすがるように描写され、大して子安の講和ではひとびとな柔和な微笑を浮かべ、頑なだったものも徐々にその心を開いていく。後光すら差し心を開いたいくつかの人々には空から光が射した。



ここまでがおそらく第一部。これで一時間である。正直かなり退屈で眠りそうになった。しかし、ここから大スペクタクル、超常の力による戦いがはじまるが、同時にシナリオの破綻も始まるため説明が難しい。穏やかな、何事をも受け入れる気持ちで読んでほしい。



ヨリを戻したチャラ男と小夜子で二人で夏祭りへ出かける。相変わらず弟はパパラッチを続けている。しかし突如、東京の空に UFO が出現。 UFO は地上にビーム光線を発射し東京に巨大な破滅をもたらす。すわ、ネオアトランティスの襲来かと思いきや、これは操念会の仕業であることを示すカットが挿入される。

事件のさなか、はぐれたパパラッチを探すチャラ男と小夜子は別行動を取るが、その間に小夜子はひとりでフラフラと出かけてしまい、危険から逃げもせず小高い丘に聖人のごとく立ちつくした。

丘の上で空を見上げる小夜子を、ネオアトランティスのハイメガ粒子砲が襲う。

しかしハイメガ粒子砲は小夜子の周辺のみを破壊、小夜子に操られるようにして空を蓮の花びらが舞う。花びらが触れると UFO はたちまちに腐食、その存在そのものが消滅し、残骸が東京の街に墜落することもなく、超巨大 UFO はまるで消滅。空に、巨大な蓮の花が咲いた。

その全てが小夜子を通して超常の力を行使した再誕の仏陀こと子安武人の仕業であった。

テレビでは荒井が登場し、私が UFO を退治しました、とマッチポンプを演じようとしたところに小夜子の目撃写真が登場し、彼女が UFO を退治した謎の美少女である、などと報道されてしまう。


一夜明けて、大変な話題になってしまった小夜子は身を隠しながらチャラ男に会う。チャラ男と自宅へ向かうもマスコミの数は増量を続け、家に入れない。そこへ木村真理から連絡が入り「ありのままの真実を伝えなさい」と説かれる。その段取りをテレビ局は整えている、という。チャラ男の車でテレビ局へ向かう小夜子とチャラ男。ここでロマンティックな図が描写されるが、またしても車に乗り込んでいたパパラッチ弟に邪魔にされる。ラブコメのパターンを周到している。


一方その頃、荒井は銀河万丈の声にふさわしいラスボスとして最後の戦いの火蓋を切って落とそうとしていた。彼の部下、千葉繁はその声に恥じぬようメガネをかけていた。荒井とメガネは国営放送をのっとり、全てのチャンネルを国営放送に接続した。

荒井はテレビを通じて巨大な災厄を予知した。「これから10分後に日本をかつてない大津波が襲う。この津波によって日本列島は水没してしまうブクブクブク」日本各地で水没の予兆が現れ、海岸では高々と迫りつつある津波の映像が中継された。大変な事態に混乱する日本列島だが、小夜子とチャラ男は、全ては荒井がテレビを通して見せた幻覚であることを木村真理によって伝えられえる。テレビを通して伝達可能ということはこの超常の力は機会で再生可能であるということで、アメリカあたりが既に兵器利用を実践しているものであり大変に恐ろしい。

荒井は言う。

「助かる方法がひとつだけある。私に従うことだ。私に助けを乞うがいい」

テレビ局で合流した小夜子、チャラ男、木村真理は操念会の連中をバッタバッタとなぎたおしながら撮影スタジオへ向かう。道すがら、チャラ男と木村真理は小夜子をスタジオへたどりつかせるためにあえて王道展開を周到する。木村真理は子安からの伝言が記されたメモを小夜子に渡す。

「あんたまだ真実を伝えたいんでしょ!」

「だったらしっかり説いて、それから死になさい」

「ここから先はもうあなた一人よ。全て一人で決めなさい。誰の助けもなく」

「(絶対的真理から)還ってきたら、続きをしましょ」

様々な愚かではない人々の助けをうけて撮影スタジオへたどり着いた小夜子。テレビの前でメモを開くが、その文字は汗でにじんでしまい、読むことができない。

木村真理の言葉がよみがえる。「ありのままの真実を、伝えればいいのよ」しかしなぜか再誕の仏陀こと子安武人が超能力で小夜子の口を奪い、ありがたい説法を始めてしまったのでここは感動的場面の効果を欠いている。結局この映画は個人の成長になど興味はないのだろう。あるいは成長とは個人によって成し遂げられるものではなく、大いなる存在が一枚噛むこと、力を与えることであると示唆しているのだろうか。小清水亜美と子安武人の声が二重螺旋になって地上に伝播される。真実に目覚めた人々には光が指し、混乱は鎮められる。


テレビ局のっとりで荒井は警察に目をつけられ操念会はほぼ解散。荒井は逃亡を続けていた。荒井を操っていた巨大な悪が荒井の力を暴走させ、巨大な死亡フラグをたてる。大いなる悪とは、三木眞一郎である。

荒井は小夜子を誘拐していずこかへ姿を消したが、その夜、不安に沈む天河家はテレビ画面で小夜子の無事を知る。場所は東京ドーム、荒井は触手のたくさん生えた小型 UFO の上に立ち、会場に爆弾を仕掛けたので観客の命が惜しければ自分こそ真実の仏陀であるとテレビに向けて伝えろ、と脅す。これからフィフスエレメントをはじめる男が爆弾頼りである。

なお、この場面はかなり爆笑もので野球中継のさなかに突然 UFO がふよふよやってくるカットはなかなか笑いのセンスがある。

チャラ男、木村真理が現場へ急行するが彼らはここから空気になり特に活躍しない。

小夜子は荒井が再誕の仏陀であると述べることを拒否し、子安武人こそ再誕の仏陀であると伝え、気絶する。後に死んでいることが判明する。そして再誕の仏陀こと子安武人、赤法師レゾ、ゼクス・マーキス、ギム・ギンガナム、高杉さん、ハーイル・イルパラッツオ、コンボイ総司令こと、われらの子安武人が参上する。

ここから先、彼らが何をいっているのか理解の埒外にありよくわからない。

基本的には力こそ正義であると吼える荒井に対して、欲をむさぼるな、人間は調和し合い、助け合うべきだ、と説伏していたように思う。超能力で説伏合戦といわれればなんだか冨野っぽいが現実はもっとカオスである。

子安武人には翼が生え、その巨大な翼で東京ドームの観客を守り続ける。荒井は形状崩壊し、三木眞一郎になってしまう。巨大な象に搭乗した子安武人のまわりをポリゴンによって描写された無数の天使が飛び、舞い、世界に光り輝く白い粉を撒き散らす。天使に導かれるようにして東京ドームに巨大な菩提樹が誕生する。追い詰められた三木眞一郎のイケメンが崩壊し、子安武人が黄金色の剣で五芒星を描くと、なんと三木眞一郎は消滅してしまう。消滅した後に残された荒井に対して子安武人は赦しを与える。やり直せない人生などないのだ、と。涙を流す銀河万丈。斬新なカップリングの成立である。


喜びに満ち満ちた人々、しかし小夜子は死んでいる。チャラ男は、まだ伝えていないことがたくさんあったと悔やむ。黄金色のあの世を流れていく小夜子。死んでしまったけれど、仕方が無いよね、という欲の無さに悟りを感じる。そこへチャラ男の精神が流れ込み、愛を囁く。好きだ。大好きだ、と。小夜子は愛の力で幸福な死後の世界から現世に呼び戻される。


すっかり存在を忘れていたTISの外国人を空港で送り、その帰り道、小夜子とチャラ男はキスをする。場面は一転し、数年後。おそらくジャーナリストとしての道を歩み始めたのであろう小夜子。チャラ男の車へ乗り込むと、あの日のパパラッチ写真がフロントガラスに張られている。パパラッチ弟も姉の遺志を継ぎ、すっかりジャーナリスト気取りのこうるさいガキに成長している。笑いあう、小夜子とチャラ男。そして「悟りにチャレンジ」が流れ出す。



宗教映画ではあるのだが、アニメとしておもしろければ褒めるつもりでいた。世界観で言えば多くのアニメ作品に比べて特別に常軌を逸しているといえるようなものではない。宗教的世界観や思想を背景にしている物語など巷に溢れているし、その信仰が作品の出来を左右することなどはない。パンツが空を舞い、大江戸線が淑女の悩みを解決することに比べればよほどマトモである。アニメも耽溺すれば悪質であり「エルカンターレはそんなこといわない」などとのたまうハメになる。

作画について、全く触れるべきところはない。劇場アニメとしてはありえない低クオリティであり、ところどころ、演出としての意図もよくわからない場面で実写を加工してごまかしていた。 3D の使い方も本当に意図がわからない。演出意図がわからない、であって宗教映画の製作ということで製作に関わるあれやこれやという事情を邪推することは可能だが、アニメ映画として見に来ているのでどうでもいい。

シナリオはまあ、昨今のアニメ事情からすればひどすぎる部類ではないのかもしれないが基本的には破綻している。なにより萌えないし、幼女が出てこない。弟が妹であれば私の評価は反転していただろう。

全体として銀河万丈や千葉茂の演技を見られてよかった以上のものは何も無い。要するに劇場版けんぷファーである(そう考えると神はわっちであり小夜子になってしまうのだが……)。面白全部以外の理由で見に行くのであれば覚悟はしておいた方がいい。面白全部で見に行くのであれば、いくつか爆笑ポイントは存在する。

宗教的側面にも触れておく。転生した仏弟子が教えを広める、というところに私はある種の差別的ヒエラルキーを感じた。信じないものは愚かである、という以上に、子安武人の講和を聞く人々の中にも光を射す人間と射されない人間がいた。信徒の中にもまた、ヒエラルキーが存在している。それはおそらく、新興宗教の快楽とは超常の力や存在を信じることにはなく、ある「必要な嘘」としての超常があり、それによって情弱な人間を幸福に導く性善的な選民という形が存在するのではないか。

何はともあれ名台詞が存在したことは確かなので、積極的に用いていきたい。


http://serif.hatelabo.jp/3644295abb7450da9151ba9f25008d2f64156f73/6cd8f9591d97fc2cb31afb874a039ea55575de6c


         し!     _  -── ‐-   、  , -─-、 -‐─_ノ
  仏 唯    // ̄> ´  ̄    ̄  `ヽ  Y  ,  ´     )   唯 え
  陀 物    L_ /                /        ヽ  物  |
  の 論    / '                '           i  論 マ
  再 が    /                 /           く  !? ジ
  誕 許    l           ,ィ/!    /    /l/!,l     /厶,
  ま さ   i   ,.lrH‐|'|     /‐!-Lハ_  l    /-!'|/l   /`'メ、_iヽ
  で れ   l  | |_|_|_|/|    / /__!__ |/!トi   i/-- 、 レ!/   / ,-- レ、⌒Y⌒ヽ
  だ る   _ゝ|/'/⌒ヽ ヽト、|/ '/ ̄`ヾ 、ヽト、N'/⌒ヾ      ,イ ̄`ヾ,ノ!
  よ の  「  l ′ 「1       /てヽ′| | |  「L!     ' i'ひ}   リ
  ね は   ヽ  | ヽ__U,      、ヽ シノ ノ! ! |ヽ_、ソ,      ヾシ _ノ _ノ
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人_,、ノL_,iノ!  /! ヽ   r─‐- 、   「      L_ヽ   r─‐- 、   u  ノ/
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ハ キ  {  /   ヽ,ト、ヽ/!`hノ  )  モ    |/! 「ヽ, `ー /)   _ ‐'
ハ ャ   ヽ/   r-、‐' // / |-‐ く    |     > / / `'//-‐、    /
ハ ハ    > /\\// / /ヽ_  !   イ    (  / / //  / `ァ-‐ '
ハ ハ   / /!   ヽ    レ'/ ノ        >  ' ∠  -‐  ̄ノヽ   /
       {  i l    !    /  フ       /     -‐ / ̄/〉 〈 \ /!

denden 2009/11/13 13:18 映画見てきた。普通に素晴らしいと感じたけど洗脳されたのかな?
説法??シーンで今までの自分の生き方を反省してしまった
こんな素晴らしい言葉が聞けるなんて、1300円は安すぎる
ただでいただけるなら、もう一度みたい
映画を観終わったら、そこらじゅうに天使が居るみたいで、とても嬉しかったけど
やはり洗脳?? でしょうか?
でも、何となく気分がスッキリしてここなら洗脳されてもいいかな〜と思う
人生で最高の言葉を聞けた
\(^o^)/