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きょうの社説 2011年12月28日
◎金沢競馬でGT販売 ファン層拡大へ反転攻勢を
金沢競馬で、再来年春にも日本中央競馬会(JRA)が主催するGTレースの馬券が売
られる見通しが固まった。ダービーや有馬記念などのGTレースはいわば国民的行事であり、注目度は極めて高い。多少なりとも競馬に興味を持つ人たちに金沢競馬の存在をアピールし、足を運んでもらう絶好のチャンスである。金沢競馬は赤字続きで、ここ数年は、売り上げよりも経費削減に血道を上げてきた。来 年度はわずかながらも収支は黒字に転じる見通しであり、競馬事業存続に向けて希望の光が差している。この機を逃さずに守りから攻めへと転じ、黒字を定着させたい。 金沢競馬を運営する県や金沢市は、これまでJRAとの連携を警戒する空気が強かった 。全国的な人気を誇るJRAの馬券を扱えば、自場のレースが売れなくなる。手数料を取られるため利益率が薄いJRAの馬券ばかりが売れ、利益率の高い自場の馬券が売れなって、売り上げが減る事態を恐れていたからである。 だが、金沢競馬の窓口で自場レースを売って得る稼ぎは年々頭打ちになり、他場での販 売や在宅投票による収益が増えている。問題は金沢競馬に足を運ぶファンが高齢化し、若いファンが増えないところにあり、売上額は今後も毎年5%程度減る見通しである。 この先、金沢競馬が独力で自場発売の売り上げ減に歯止めをかけていくのは難しい。人 気のあるGTレースの馬券を金沢競馬で売れば、新たなファン層の開拓につながるだろう。ひさしを貸して母屋を取られる心配より、金沢競馬場の大型スクリーンで有馬記念やダービーを楽しみ、さらに自場のレースを買ってもらう仕掛けを考える必要がある。 競馬事業については金沢競馬経営評価委員会が昨年、赤字の穴埋めに税金を投入する事 態が想定される場合、廃止すべきとする報告をまとめた。収支均衡の目標年次は来年度であり、ここを乗り越えれば次の段階が見えてくる。2013年春のGTレース発売、さらには同年秋に誘致予定の地方競馬の祭典「JBC競走」の開催を、金沢競馬がじり貧を状態を脱するための分岐点にしたい。
◎原発事故報告 信じがたい対応の甘さ
大規模災害に直面したときの最も深刻な危機は、被害の大きさは言うまでもなく、政府
や関係機関が本来の役割を果たさず、機能不全に陥ることではないか。福島第1原発事故に関する政府の事故調査・検証委員会がまとめた中間報告を読めば、そんな思いが一層強まる。事故対応では、原子炉冷却装置に関する東電の誤認、判断ミスが重なったことが明らか にされた。職員が操作に習熟せず、幹部も機能を理解していなかったという。報告書は、相次ぐ不手際が炉心損傷を早めた可能性に言及している。適切な対応があれば、被害の拡大は防げたのではないか。 さらに経済産業省原子力安全・保安院については、東電から情報を聞き取るだけで「検 査官が事故対処に寄与した状況は全く見受けられない」と痛烈に批判した。 首相官邸では、菅直人前首相はじめ閣僚らが5階、省庁局長級による緊急参集チームが 地下に待機したが、報告書は情報の共有、伝達のまずさを指摘し、政府中枢の混乱ぶりを浮き彫りにした。その責任はひとえに、政治主導の意味をはき違えた前首相にある。官邸、東電、保安院などの信じがたい対応の甘さからは、複合的な人災の側面も見えてくる。 このように複合災害に対処できなかったのは、根拠の乏しい「安全神話」に安住し、事 前の備えを怠ってきたことが大きい。津波に関しては2008年に高さ15メートルを越すとの試算があったが、東電は仮定に過ぎないと軽視し、報告を受けた保安院も対策を促さなかった。このもたれ合いの構図こそ安全神話の温床ではなかったか。 事故調は456人からヒアリングし、菅前首相ら閣僚からの聞き取りは来年からになる 。政治の責任、危機管理の在り方に踏み込むには、国政調査権をもつ国会の事故調との連携も重要になる。 来年4月に原子力安全庁が発足し、来年度予算案には志賀原発など全国で原発防災を強 化する対策が盛り込まれた。最終報告は来年夏の予定だが、原発の安全管理へ向け、必要な措置については早急に実行に移してもらいたい。
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