米原子力規制委員会(NRC)は22日、東芝子会社の米ウェスチングハウス(WH)が開発した最新型の加圧水型原子炉(PWR)「AP1000」の設計を最終認可したと発表した。この結果、米国での同原子炉売却と原子力発電所建設に道が開かれた。
今年3月の東日本大震災と大津波に伴う福島第1原発事故を受けて、WHの原子炉認可は全く不透明になったとみられていた。しかしWHは今回の認可を受けて、事故前以上にライバル原子炉メーカーに大きな差を付けたようだ。電力会社各社はWHのライバルメーカー設計の原子炉建設を遅らせるか、あるいは棚上げする計画だからだ。
NRCは2006年初め、「AP1000」の原型モデルを承認していた。しかし設計上の改良が図られ、認可プロセスにその後5年間かかった。
現在、米国の電力会社が求めている「AP1000」原子炉の建設認可は十数基で、他の原子炉の数を大きく上回っている。米ゼネラル・エレクトリック(GE)やフランス・アレバなど競争メーカーの開発・設計に基づく原子炉プロジェクトの建設は遅れたり、キャンセルされたりしている。今回の「AP1000」の認可の結果、米国ではWHがこれらライバル社に大きな差をつけたことになる。
例えば米アトランタに本拠を置く電力会社サザンはジョージア州でAP1000原子炉2基の建設認可を申請している。総額は140億ドル(約1兆0900億円)で、それぞれ16年と17年に稼働の見通し。また電力会社スキャナもサウスカロライナ州で原子炉2基をそれぞれ16年、19年までに建設したい意向。両社ともNRCの建設認可を近く得られると期待している。
NRCの認可を阻止しようと長い間戦ってきた原発批判論者は、今回のNRC認可に失望していると述べている。これら批判派は、原子炉の外部遮蔽建物など幾つかの点を疑問視している。遮蔽建物は事故発生時に原子炉を保護し、放射能漏れを防ぐ狙いがある。AP1000の遮蔽建物は、厚い鋼鉄プレートで挟まれたコンクリート層で構成されている。
NRCの著名な技術専門家のジョン・マー博士は昨年11月、WHによる遮蔽建物の強度分析や他のNRCスタッフの見方に異議を唱える意見書をまとめた。同博士は、遮蔽建物が竜巻、地震、あるいはその他の災害に見舞われた場合、「遮蔽建物がエネルギーを吸収したり拡散できることが証明されていない」ことを理由に「構造上の一貫性が保証できない」と主張した。
実際、WHのロルフ・ジーリング氏(原子力認可担当ディレクター)は、遮蔽建物の設計が「規制当局の厳しい見直しの焦点だった」と述べ、批判派が表明した数々の懸念を受けて、改良がほどこされたと述べ、「われわれは十二分に改良した」と語った。
WHのアリス・キャンドリス最高経営責任者(CEO)は、日本の原発事故がNRCによる点検プロセスに新たな不透明要因を加えたと述べた。
AP1000は幾つかの点で既存の米原子炉と異なっている。それは受動的な冷却システムを採用しており、重力や原子炉の熱を利用して原子炉を冷やしている。またポンプやバルブといった揺れやすい部品の数を少なくしている。
福島第1原発では、地震と津波で電源が喪失し、冷却システムが機能しなくなった。幾つかの原子炉が過熱で損傷を受け、放射能物質が放出され、周辺地域の住民の避難を余儀なくされた。AP1000は電源ないしオペレーターの行動がなくても冷却を続けられる設計になっている。
キャンドリスCEOは「福島第1原発事故の教訓は恐らく、受動的な冷却システムを備えて電源の完全喪失に耐えうる能力のある設計にしていない原子炉建設は、意味をなさないということだろう」と述べ、それがAP1000が提供する利点だと強調した。
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