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SPEEDIデータ 県も滞留

2011年12月27日

●初期に1回「公表しても」

 政府の事故調査・検証委員会による中間報告で、公表の遅れが指摘されたSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)の算出データは、県庁にも3月13日に届いていた。しかし県も公表せず、原発周辺住民は放射能の「雲」がどこに向かうか知らずに、逃げるしかなかった。

 県によると、原子力発電所で事故が起きたとき、SPEEDIのデータは財団法人の原子力安全技術センターで計算され、政府の原子力災害現地対策本部(オフサイトセンター)を通じ、県の専用コンピューター端末に送られる手順になっていた。

 しかし、3月11日の震災で専用通信回線が途切れたり、現地対策本部が機能しなかったりし、放射能雲の情報は遮断。県によると、原子力安全技術センターはインターネット回線からメールで情報を県に送っていたが、県はその情報を確認できなかったという。

 このため、県は原子力安全・保安院に依頼し、13日朝に前日の推測結果をファクスで入手した。このうち、3月12日午後5時時点の推測では、放射能雲は楕円(だ・えん)の形をして、福島第一原発から飯舘村などのある北西方向に伸びていると算定されていた。ただ、雲の向きは上空の風向きに沿うため、海側や南方にたなびくとする時間帯もあった。

 県は入手データに記載されていた放射能の飛散濃度がわずかだったことや、本来は国が発表するべきデータだったと判断し、公表しなかった。保安院からのファクスは13日の一回だけだったという。

 このときの県の対応は、県議会で5月、問題になっている。県の担当者は「公表しなかったのだから、国と一蓮托生(いちれんたくしょう)と批判されて仕方ない面もある。しかし、3回も水素爆発が続いた中、原発事故の初期に受信した1種類のファクスデータを公表しても、意味があったか疑問だ」と説明している。(大月規義)

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