■ 原発事故中間報告、「備えの甘さ」指摘
東京電力福島第一原発事故について、政府の「事故調査・検証委員会」が中間報告をまとめました。報告書ではJNNが9月に明らかにしたように、1号機の非常用復水器の機能について現場が理解していなかったことが、その後の対応の遅れにつながったと分析しています。
「(中央制御室の)高い位置の放射線量が高かったため、全員が床に座り込んで待機した」(作業員、中間報告書より) 「1トン以上ある高圧電源ケーブルを敷設する作業に40人を動員したが、数時間を要した」(作業員、中間報告書より) 508ページに及ぶ中間報告は、東京電力や福島第一原発の関係者ら延べ456人からおよそ900時間にわたるヒアリング結果をまとめたものです。地震による重要な配管などの破壊は現時点では確認できていないとしましたが、津波によって全ての電源が失われた後、不適切な対応が続いたと詳細に記載されています。 【1号機 非常用復水器の作動状況の誤認】 1号機には非常用復水器=ICと呼ばれる電源がなくても原子炉を冷やせる装置がありましたが、報告書では、まず、JNNで9月に報じたように、このICの機能の誤認があったことが指摘されました。 ICは電源を失うと弁が自動的に閉まる設計で、機能を失うのに、それを認識していた者はいなかったことが、原子炉への注水やベント作業の遅れにつながったと指摘しています。ICの状況がようやく理解された頃には、既にメルトダウンによる放射性物質の漏洩が始まっていました。 「原子炉建屋の扉を開けると、白いもやが見えたため、扉を閉鎖、放射線量の測定はできなかった」(作業員、中間報告書より) そして翌日には1号機が水素爆発。このため、高い放射線を出す瓦礫がまき散らされたり、2号機のために準備していた電源ケーブルが損傷するなど、その後の作業がますます難しくなっていったのです。 「事故調査委員会がありますから、しっかりと委員会の中で説明して、評価して頂ければと思います」(東京電力福島第一原発 吉田昌郎 所長<当時>、今年6月) 6月、JNNの単独取材に、こう答えていた吉田前所長。その吉田前所長の証言も多く記載されています。 「次から次に入ってくる情報に追われ、重要情報を総合的に判断する余裕がなくなっていた」(中間報告より) 独断で海水注入を継続した際の経緯については・・・ 「テレビ会議システムのマイクに拾われないよう、小声で注水をやめるなと指示した」(中間報告より) しかし、中間報告では適切に注水やベントを行っていたとしても、水素爆発などを防止できたかどうかは現段階では評価できないとしました。 福島第一原発では過酷事故に対応したマニュアルがありましたが、全電源喪失という事態を想定したものではなく、事故前の備えの甘さが改めて浮き彫りとなりました。(26日17:30)
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