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'11/12/27

非常冷却、全運転員が経験なし 事故調中間報告が断罪「極めて不適切」

 政府の東京電力福島第1原発事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎はたむら・ようたろう東京大名誉教授)は26日、1号機にある非常用の原子炉冷却装置を全運転員が作動させた経験がないなど、各号機の冷却操作で不手際や認識不足があり、炉心損傷を早めた可能性があると指摘、東電は事業者として「極めて不適切だ」とする中間報告を公表した。

 また官邸、経済産業省原子力安全・保安院、東電の間で情報共有や伝達が不十分で被害拡大につながったとし、「想定外」としてきた東電や政府の津波対策、事故対応の甘さを厳しく批判した。第三者による初の調査報告で、事故の経過や全体像が浮き彫りになった。

 畑村委員長は報告を同日、野田佳彦首相に提出、年明けに福島県内で説明する考えを示した。来年夏の最終報告に向け、菅直人前首相らから聴取するなど検証を続ける。

 中間報告は「国、東電は津波による過酷事故を想定せず、自然災害と原発事故の複合災害という視点もなく対策を講じなかった」と認定した。

 報告によると、水素爆発した1号機の原子炉冷却を担う非常用復水器(IC)は津波の後、停止したのに、吉田昌郎よしだ・まさお所長(当時)や本店幹部らは動き続けていると誤認。注水など対応の遅れの連鎖を招いた。また全運転員が作動させた経験がなく、応用する訓練すら受けていなかった。

 3号機で高圧注水系(HPCI)の手順を十分に検討しなかったため注水が途切れたことは「極めて遺憾」で、炉心損傷が進んだ恐れがあるとした。

 津波については2008年、高さ15メートルを超える場合があるとの試算を得たが、東電幹部は仮定の数値と判断、対策を検討しなかった。報告を受けた保安院は対策工事を求めず、基準を示す努力をした形跡もなかった。

 情報共有、伝達の失敗は閣僚が集まった官邸5階、省庁局長級チームがいる官邸地下、東電本店、現場で起きた。1号機への海水注入が官僚チームには知らされたが、首相らには伝わらなかった。「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」で放射性物質拡散を予測したが、住民避難に生かされることはなかった。

 調査委は、原発事故対策はどんなに確率の低いことでも対処できるよう考え方を転換すべきだと提言、来年4月に発足予定の原子力安全庁(仮称)に独立性や組織力を与えるよう求めた。




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