「特殊映像ラボラトリー」 第18回 洋画アニメに勝算はあるのか?
■北米マーケット・アニメ映画の興収トップは「シュレック2」
ではここで、アメリカ=カナダから形成される北米マーケットにおける、過去10年間のアニメ映画興行成績ベストテンを見てみよう。
1=「シュレック2」(ドリームワークス配給/2004年公開)
4億4122万6247ドル
2=「ファインディング・ニモ」(ブエナ・ビスタ/2003)
3億3971万4978ドル
3=「シュレック3」(パラマウント=ドリームワークス/2007)
3億3271万9944ドル
4=「カールじいさんの空飛ぶ家」(ブエナ・ビスタ/2009)
2億9300万4164ドル
5=「シュレック」(ドリームワークス/2001)
2億6766万5011ドル
6=「Mr.インクレディブル」(ブエナ・ビスタ/2004)
2億6144万1092ドル
7=「モンスターズ・インク」(ブエナ・ビスタ/2001)
2億5587万3250ドル
8=「トイ・ストーリー2」(ブエナ・ビスタ/1999)
2億5587万3250ドル
9=「カーズ」(ブエナ・ビスタ/2006) 2億4408万2982ドル
10=「ウォーリー」(ブエナ・ビスタ/2008)
2億2380万8164ドル
ちなみに1999年以前のアニメ映画では「ライオン・キング」(ブエナ・ビスタ)が3億3854万1776ドルを上げており、「ファインディング・ニモ」と「シュレック3」の間に位置している。
この北米マーケットでのランキングと、先の日本公開洋画アニメのランキングを比較すれば、日米のカルチャー・ギャップというかアニメ映画への認識の差に気づいてもらえるだろう。国民性の差、と言ってしまえばそれまでだが、ディズニー=ピクサー作品が幅をきかせる日本マーケットと違い、北米市場ではトップからしてドリームワークスの「シュレック2」が君臨。さながらベストテンは、ディズニー=ピクサー陣営VSドリームワークスのせめぎ合いの様を呈している
アニメ映画のみならず、アメリカでは映画観客の中心層は、ファミリーだ。ファミリー客を大量に動員出来れば作品は大ヒットし、ロンリーなお客しか来ないのであれば、早々と上映は打ち切られてしまう。日本のアニメ映画の場合は、ファミリーをターゲットにしたものと、監督や原作の持ち味を生かし、ティーンエイジャー以上の層に向けたクールアニメの2種類が存在する。洋画アニメは圧倒的に前者の数が多いのだが、外国映画のシェアが著しく低い北米マーケットと違って、我が国では毎年公開される国産のファミリー・アニメ映画に観客の鑑賞習慣がついており、そこへ「全米大ヒット!!」のコピーも勇ましく、シェア奪還を目指したとしても、なかなか勝利を収めることは難しい。しかし去年のように「ヤッターマン」の登場によって「ドラえもん」の興収が前年比9億円以上も下がったことを考えれば、現在のファミリー・アニメ・マーケットは、それほど大きなマーケット・ボリュームを維持しているわけではないことがうかがえる。不況下のファミリーにとって、家族揃っての映画鑑賞は、ワンシーズンに1番組と心得たほうが良いだろう。そしてその日本製ファミリー・アニメがひしめくテリトリーに洋画アニメ映画が割り込むためには、相当な力が必要となる。ただしパワーと言っても、ハリウッド映画お得意の、TVスポットや広告出稿の連打が、即興行成績に結びつくわけではないことは、ここ数年の洋画アニメの成績を見れば分かるというものだ。
■「−ニモ」「ウォーリー」は、日本が海外市場トップの成績
アメリカではファミリー客を集めて、アニメ映画が好調。しかし日本は国産のアニメ映画の存在が大きく、洋画アニメは苦戦を強いられている。では北米マーケットを除く、オーバーシーズ(海外)マーケットで日本の成績はどのレベルに位置するかといえば、これまたディズニー=ピクサー作品はWDSJの宣伝・営業手腕が活かされ、「ファインディング・ニモ」「モンスターズ・インク」「ウォーリー」は日本マーケットが、海外マーケット中トップの成績だ。「カールじいさん…」「Mr.インクレディブル」は2位。キャラクターが日本向けでなかった「カーズ」でさえ海外市場8位にランクされている。これがドリームワークスの「シュレック」シリーズになると、「シュレック」が海外市場3位、「シュレック2」8位、「シュレック3」12位と、徐々にダウンしているのである。12月に日本公開される、シリーズ第4作「シュレック フォーエバー アフター」は、さていかなる興行を展開するのだろうか。
ワールド・マーケットの市場構造を簡単に述べれば、現在世界的規模でのヒット作となれば、北米マーケットと海外マーケットの興収比率は、およそ40%対60%というケースが多い。海外マーケットではこの数年、イギリスと日本がトップを競い合う関係にあり、作品によってはそこにヨーロッパ諸国(「シュレック」シリーズは、なぜかフランスで圧倒的な強さを誇る)が絡んでくるといったところだ。
今年の夏には「トイ・ストーリー3」「ヒックとドラゴン」などの注目作が登場。それ以後も「シュレック フォーエバー アフター」「ホテル・トランシルヴァニア(原題)」「ヨギ・ベア(原題)」「ハッピー・フィート2(原題)」などの洋画アニメの日本公開が予定されている。新しい戦略とパワーで、日本製アニメ映画と健全な戦いを繰り広げる事を期待しようではないか。
(データ中日本の興行成績については、一部を除いて日本映画製作者連盟の数値を使用。また海外のデータは、BOXOFFICE MOJOより/いずれも2010年3月19日現在)