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「特殊映像ラボラトリー」 第18回 洋画アニメに勝算はあるのか?

■キャラクターの認知度不足、原作不在というデメリット 

 洋画アニメが邦画アニメに比べて、圧倒的に不足しているのが、登場するキャラクターの認知度だ。ミッキーマウスやくまのプーさんといったクラシック・キャラはさておいて、例えばピクサー作品であっても、1995年春に公開された「トイ・ストーリー」の、我が国での興収は14.87億円にすぎなかった。これが4年後の「トイ・ストーリー2」となると、興収35.25億円と前作の2倍以上のヒットとなる。この場合、作品の良さ、面白さが4年間の間に、パッケージ・メディアなどを通じて認識されたということも勿論あるが、アニメ映画の場合、カギを握るのはキャラクターの存在だ。つまり子供たちがそのキャラクターを見て、ポジティヴなリアクションを示さなくては、作品を鑑賞する行動にまで到達しない。劇場公開時には、今ひとつ認識されなかったウディとバズ、そして個性豊かなトイ・キャラクターが、4年という月日をかけて、我が国のファミリー層に浸透していったということだろう。
 また我が国のアニメ映画の場合、作品そのものの認知度以前に、原作であるコミックやTVシリーズが存在し、充分なネームバリューを得ていることが、映画興行に大きく貢献している。この場合も洋画アニメは極めて不利な状況に置かれており、アニメ以外でもアメリカン・コミックを実写映画化した作品が全米マーケットに比べ、ヒットのスケールが小さくなるという傾向も顕著だ(あの「ダークナイト」をもってしても、日本での興収は16億円にすぎなかった!!)。
 「カールじいさんの空飛ぶ家」の場合は、まずキャラクター、そして作品の認知度を上げるべく、オリジナル・タイトルの「UP!」を日本語タイトルである「カールじいさんの空飛ぶ家」とし、およそ8か月に渡ってパブリシティ、プロモーション活動を行ったことは、以前この連載に書いた通り。知名度の低いキャラクターと作品を認識させるためには、そこまで長期に渡って日本マーケットに向けたローカライズが必要なのである。このあたりはウォルト・ディズニー、ピクサー作品を配給してきたウォルト・ディズニー・ジャパンならではの判断と言える。彼らはキャラクターや作品のバックグラウンドが、いかに観客の動向を左右するか、長いビジネスの体験を通して理解しているのだ。
 
■「アニメの宣伝はやりたくない」映画宣伝会社。

 邦画アニメのように、製作委員会との連動による宣伝展開が出来ない洋画アニメの場合、配給会社の宣伝部がその役割をすべて担うことになる。しかしアニメというジャンルは、実写映画とは違う方法論で制作されていることは言うまでもなく、宣伝、特に動員のキモとなるパブリシティ展開に実写作品とは異なるノウハウが必要となってくる。昨今ではこうしたパブリシティ展開は、宣伝部が宣伝会社に発注するケースがきわめて多い。
 「アニメ映画の宣伝とかって、やらないんですか?」。とある映画宣伝会社のトップに聞いてみた。「あれはねえ、特別なノウハウが必要になってくるんだよ。パブリシティ記事を出すべきアニメ雑誌等へも、通常とは違ったアプローチをしなければならないしね。ターゲットであるアニメ・ファンが、何を持って鑑賞意欲を高めてくれるのかが、我々としては分からない。邦画、洋画を問わず、アニメはやりたくないよ」。 
 なるほど。正直な意見である。そうした“特別なノウハウ”を持っているのは、現在我が国の配給会社レベルでは、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(長いので、以後WDSJと略)だけということになる。この会社は歴史的に見てもアニメ映画が占める割合が高く、加えて社名が表す通りディズニー・ブランドを掲げたビジネス展開とシナジー効果の追求を恒常的に行っており、そこで蓄積したノウハウが、アニメ映画の宣伝に活かされているのである。過去10年における、洋画アニメ・ベストテンが、すべて同社の配給作品であることも、納得出来るというものだ。
 かつてスタジオジブリ作品の大ヒットに貢献した、宣伝会社メイジャーも現在は宣伝部門を閉鎖。たまたまアニメ映画を配給することになってしまった配給会社から、「どこか良い宣伝会社はない?」と、筆者が尋ねられることさえある。こうした状況を踏まえて考えると、現在ディズニー配給以外の洋画アニメがヒットしない理由のひとつには、宣伝面でのノウハウ不足が確実にあるだろう。最近公開された洋画アニメの成績を見ても、「モンスターVSエイリアン」(パラマウント配給)興収5.8億円、「カンフー・パンダ」(角川エンタテインメント=アスミック・エース配給)20億円、「マダガスカル2」(パラマウント配給)10.2億円と、アメリカ本国ではディズニーの牙城に迫る勢いのドリームワークス・アニメーションが、我が国では今ひとつ元気がない。というより、アメリカにおいてアニメ映画が一時期よりヒットする確率が高くなったのだ。アニメといえばディズニーしかなかった80年代までとは違い、ドリームワークスやフォックス、ワーナー,ソニー・ピクチャーズなどメジャー各社がアニメ映画(多くの場合はCGを駆使している)を配給するケースも増えており、その成果もまた目を見張るものがある。

3へ続く

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