特殊映像ラボラトリー 第27回 「2010年特殊映像総決算!!」 PART1日本映画/アニメ
■ 「涼宮ハルヒ…」「リリカルなのは」が、根強い人気を見せる
正月から11月まで、興収1億円以上をあげたアニメ作品(番組)を振り返ってみよう。
クロックワークスが配給し、2009年11月から公開されていた「劇場版マクロスF 〜イツワリノウタヒメ〜」は、のべ111ブックで興収6.45億円を計上。またアスミック・エース「東のエデンPART1」は“結果ロングラン”となり、のべ54ブック興収1.5億円をあげた。東宝の正月番組「宇宙戦艦ヤマト・復活篇」「レイトン教授と永遠の歌姫」は、それぞれ興収約4.3億円、約5.89億円と公開規模から見て、今ひとつ。
年が明けて、1月に公開されたアニプレックス配給の「魔法少女リリカルなのは THE MOVIE 1st」は、のべ72ブックで興収3.8億円をあげた。このうち3スクリーンで再上映が行われるなど、根強い人気を見せている。クロックワークス=ジェネオン「劇場版Fate/stay night Unlimited Blade Works」は、のべ66ブックで2.8億円を計上。
2月のエポックは何と言っても「劇場版涼宮ハルヒの消失」だ。2時間43分という長尺ながら、のべ102ブックで興収8.3億円をあげたのは立派。春の定番番組のひとつ「超劇場版ケロロ軍曹/誕生!究極ケロロ奇跡の時空鳥であります!」他だが、今年は「ドラえもん」とのバッティングを避けるため、2月27日初日と設定された。のべ181ブックでの興収は2.3億円と、前年の同番組の4.6億円のジャスト半分。2011年は休み、新たな体制で2012年にお目見えするとのこと。
3月公開作品では、アスミック・エース「東のエデン劇場版II Paradise Lost」が、のべ41ブックで興収1.2億円を計上した。
■ 興収8億円を上回った「ガンダムOO」のマーケティング
下半期に入り、7月には、これまた定番の東京テアトル=メディアボックス配給「それいけ!アンパンマン/ブラックノーズと魔法の歌」他が公開され、1日1〜2回の上映ながら151ブックで興収3億円をあげた。昨年の同番組の興収が3.4億円なので、微減といったところ。松竹の「昆虫物語みつばちハッチ/勇気のメロディ」は、224ブックの展開になったが、興収3.09億円はちょっと厳しい。
8月の公開作品では、何といっても原恵一監督の「カラフル」が話題を呼んだ。これが東宝配給で興収約2.99億円という成績。オープニング・スクリーン数は104と、東宝としては絞った展開となったが、これは松竹が配給した同監督の前作「河童のクウと夏休み」の101スクリーンと同等の規模。だが「河童のクウ…」がねばり強い興行で興収3.6億円をあげたことを考えると、今ひとつの感がぬぐえない。宣伝が難しい作品であることは事実だが…。また東宝が8月に公開した「映画メタルファイト ベイブレードVS太陽…」他は、興収約4.66億円と、前年(約6.6億円)に比べて2億円近いダウンとなった。
9月18日から公開された、松竹配給「劇場版機動戦士ガンダムOO」は、完全新作オリジナル版がウリ。全国88スクリーンでスタートし、興収実に8.46億円。このマーケット・サイズとしては大成功の部類に入る。松竹が配給した最近のガンダム・シリーズには、2005年と2006年に公開された「機動戦士Zガンダム」3部作があるが、3部作中最高の興収をあげた「星を継ぐ者」(8.62億円)が、オープニング・スクリーン数83で、オープニング成績11万6581名、興収1億6074万2300円。1スクリーン当たりのオープニング興収は193万6654円であった。対する「ガンダムOO」は、全国88スクリーンでスタート。オープニング成績は18万1633名、興収2億4962万8400円(ただしこちらは、3日間集計)、1スクリーン当たり興収283万686円と、「星を継ぐ者」以上のスタートダッシュになったことが分かる。
小規模展開ということで、当然1スクリーン当たりの興収は高くなり、加えてショップでの関連商品も、売り切れが続出する好調ぶりだったと聞く。そうした声とこの成績を見比べると、いささか天の邪鬼ではあるが、「もうちょっとスクリーン数を増やしたほうが良かったのでは?」という気がしないでもない。無論松竹としても、充分に過去の興行展開なども研究した上で、マーケティングしたと思うが、今回は「Zガンダム」3部作と違い、完全な新作映画。製作費も「Z」3部作よりもかかっていることは明らかだ。アニメ映画製作費の9割は人件費と言われている。試しにある製作関係者に「劇場用のアニメ映画を1本製作するために、スタッフを1年間拘束した場合、製作費はいくらかかるか?」と聞いてみた。すると「作品のスケールにもよるが、うちの場合ならば2〜3億円ほどだろう」との回答があった。「ガンダムOO」の製作期間、製作費は明らかにされていないが、このコメントを聞く限りでは、かなりの金額がかかっていると見て間違いないだろう。
上半期決算にも書いたように、「製作費=興行価値」ではない。むしろ興行的ポテンシャルを高めるのは、配給会社と興行サイドの役目だ。現在各配給会社ともに、製作費とマーケット・サイズのバランスを模索しているが、こういう局面でこそ、多くの作品を扱う大手配給会社の手腕を見せて欲しいものである。
10月にテアトル系を中心に、全国162スクリーンで公開された、東京テアトル配給の「おまえ うまそうだな」は、現時点で興収1.6億円を見込んでいる。現在も上映が続いており、ローカルからの引き合いもあることから、最終的には200ブックに達するだろうとのこと。
春の「ブリキュアオールスターズDX」シリーズに対して、秋の「ハートキャッチプリキュア」は興行時期の問題か、興収面で春に及ばないことが多かったが、今年10月に公開された「ハートキャッチプリキュア/花の都でファッションショー…ですか!?」は、興収9億円をあげて前年秋の8億円を上回った。こちらも調査時点では上映中であることから、最終的には限りなく10億円に近い成績となることだろう。春と秋の「プリキュア」2本で、20億以上の興収をあげた。これは快挙と呼ぶしかない。
■ 「マイマイ新子…」6400万円に。
主に100ブック以下で上映された、小規模公開作品について触れておこう。
まず、何かと話題になった「マイマイ新子と千年の魔法」だが、公開から1年の時点で、累計興収は6400万円に達した。ちょうど前年の同時期に興収を調べたところ4800万円であったから、この1年間で1600万円の上積みがあったことになる。決して大きな増収ではないが、コツコツと上映を重ねた映画館サイドの地道な努力の結晶だ。正月の「よなよなペンギン」は、興収8400万円。これまた製作費とのバランスが、気になるところである。
3月にテアトルダイヤを中心に、10ブックで公開されたアスミック・エース配給の「イヴの時間・劇場版」は興収2000万円。そのバックグラウンドは、当連載の「『イヴの時間』に何が起こったか?」を参照されたい。クロックワークスが配給した、4月の「劇場版トライガン」、5月の「劇場版“文学少女”」は、それぞれ23ブック、34ブックで7200万円、5900万円をあげている。異色作「いばらの王」は、角川映画の配給で5月に公開され、40ブック計興収5800万円。作品評価が高かった、アニプレックス配給の「宇宙ショーへようこそ」は、のべ53ブックで興収7200万円という結果だった。これは6月27日という初日設定に問題があるのではないだろうか。「踊る大捜査線THE MOVIE3」など、各社一押しの夏休み作品が、翌週から続々スタートする時期とバッティングしたことで、特にシネコンでは2週目以降の上映回数に影響が出たものと筆者は考える。可能な限りファミリーで楽しんでもらいたい、傑作アニメだけに残念だ。同じくアニプレックスの「マルドゥック・スクランブル/圧縮」は、テアトル新宿を中心に5ブック計1850万円だが、本作品も上映は継続されており、今後もさらなる上積みが期待される。
(一部推定/2010年12月17日現在/msdb調べ/ただしクロックワークス配給作品のみ、2010年7月現在)
データ提供に協力してくれた、各配給会社に深く感謝します。