特殊映像ラボラトリー 第27回 「2010年特殊映像総決算!!」 PART1日本映画/アニメ
斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
特殊映像ラボラトリー 第27回 「2010年特殊映像総決算!!」 PART1
日本映画/アニメ= 1本1本が健闘し、いずれも好成績を収めた2010年。】
斉藤 守彦
[筆者の紹介]
1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。
【日本映画/アニメ=
1本1本が健闘し、いずれも好成績を収めた2010年。】
■ 前作興収対比521%を記録した「ONE PIECE−」
2010年に公開された、日本製アニメ映画の、興行収入10億円以上の作品は、下記の9番組。
「借りぐらしのアリエッティ」 (東宝配給/7月公開)92.5億円
「ONE PIECE/STRONG WORLD」(東映/正月)48億円
「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/幻影の覇者ゾロアーク」(東宝/7月)41.6億円
「名探偵コナン/天空の難破船」(東宝/4月)32億円
「ドラえもん・のび太の人魚大海戦」(東宝/3月)31.6億円
「クレヨンしんちゃん/超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁」(東宝/4月)12.5億円
「ブリキュアオールスターズDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!」(東映/3月)11.5億円
「劇場版銀魂/新訳紅桜篇」(ワーナー/4月)10.66億円
「劇場版NARUTO疾風伝/ザ・ロストタワー」他(東宝/7月)10.3億円
以上、興収10億円以上9番組の興収をトータルすると、290.66億円となる。これは2009年の9番組203.3億円、「崖の上のポニョ」(興収155億円)のあった2008年の6番組285億円を上回る成績で、1本1本の作品が確実な興収をあげたことを示している。今年は年間興収が歴代新記録を樹立するらしい、我が国の映画マーケットへの貢献度も高いことから、2010年の日本製アニメ映画は、総じて好調であったと言えるだろう。
とはいえ作品それぞれを見ていくと、上位9本のうち7本を占めるファミリー・アニメには、前作と比べて興収の増減が見られた。
増減の“増”の代表は、「ONE PIECE/STRONG WORLD」で、2008年春に公開された前作「ワンピースTHE MOVIE/エピソード・オブ・チョッパー+冬に咲く、奇跡の桜」は、興行収入9.2億円。「−STRONG WORLD」の48億円と単純比較すると、実に「−STRONG WORLD」は前作対比521.74%もの伸びを示したことになる。
この大ヒットの背景については、当連載で東映の谷口宣伝プロデューサーのインタヴューを2回に渡って掲載したので、そちらを参照されたい。原作者・尾田栄一郎氏を製作総指揮他に担ぎ出し、尾田氏描き下ろしのコミック0巻を入場者にブレゼント。さらにTVシリーズでは映画と連動したエピソードをオンエアし、シアター・マーケティングとタイアップも大規模に展開。製作委員会各社のメディア・パワーをフル稼働しての「アニメ10周年、映画10本目記念」興行は、大成功に終わった。注目の新作はなんと3Dバージョンで「ONE PIECE 3D/麦わらチェイス」で、3月19日から公開される。
春の定番番組「ドラえもん」も、「ヤッターマン」の影響を受けた前作の24.5億円と比べて7.1億円増の興収31.6億円と、例年の30億円ペースに復調。ただし2008年の「のび太と緑の巨人伝」が33.7億円、07年の「のび太の新魔界大冒険」が35.4億円をあげたことを考えると、緩やかなカーブを描いて下降していることもまた見逃せない。ゴールデン・ウィークの「クレヨンしんちゃん」シリーズは、新作「超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁」の出来が良く、興行面でも前作対比2.5億円の増額を果たした。
東映が春と秋の2回に渡って製作・配給している「プリキュア」シリーズの春バージョン「ブリキュアオールスターズDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!」も、前年の10.1億円から11.5億円と、1.4億円のアップ。この作品は春、秋ともに「ドラえもん」のような拡大マーケットではなく、全国150〜160スクリーンでの展開であることから、1.4億円の増収は大きい。最近ではTVシリーズのクォリティも高く、娘を連れて来場した母親のほうが夢中になるケースも顕著だとか。
「劇場版NARUTO疾風伝」の新作「ザ・ロストタワー」も、前作対比1000万円の増額。こちらは例年260スクリーン前後で公開されており、観客の側にも鑑賞習慣が出来てきたことから、安定期に入ったと見られる。
さて一方、前作を下回った“減”作品では、夏の「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/幻影の覇者ゾロアーク」がある。前作が46.7億円だったことから、マイナス5.1億円。「プリキュア」シリーズとは対照的に、毎年360〜370スクリーンでの拡大公開を行っていることから、数パーセントのダウンも金額にすると大きな減収になってしまうのだ。なお「ダイヤモンド・パール」シリーズは今年で終了し、2011年からは新たに「ベストウィシュ」シリーズがスタートするという。「全く新しい冒険、感動、ファンタジーが君を待っている。」との惹句通り、新鮮なインパクトを、興行面でも期待したいところである。
「名探偵コナン」も、前作対比3億円の減。だがこのシリーズは、これで2年連続「ドラえもん」の興収を上回ったことになる。幼児層を狙った作品より、ティーンから20代がコア層のアニメが安定した成績を示すあたり、長引く不況の影響なのだろうか。
2ページ(ジブリ・ブランドがなぜ強いのか、今さらながら考えてみた。)に続く