次世代バイオ燃料:藻類に期待、日本も産油国に?

2011年10月29日 13時19分 更新:10月29日 18時43分

 次世代バイオ燃料の有望な原料として、油成分を作り出す藻類に期待が集まっている。国内外で研究競争が激化し、大手民間企業が出資を本格化。東日本大震災の被災地に研究拠点を置き、復興につなげようとする動きも出始めた。資源小国の日本が“産油国”になる日は来る? 【八田浩輔】

 「これが抽出した油です」。川崎市内の研究室で、「IHI NeoG Algae(アイエイチアイ・ネオジー・アルジ)」の藤田朋宏社長が試験管に入った微量の液体を差し出した。黄色がかって無臭。漁船などに使う「A重油」に相当するという油をつくったのは、日本でも湖や河口などに生息する「ボトリオコッカス」という単細胞の小さな藻の一種。光合成で二酸化炭素を吸収し、重油成分に相当する炭化水素を生産して細胞のまわりにためる。1・5リットルの培養液から2~3ミリリットルの油が生まれるという。

 ◇増殖1000倍速

 同社は造船重機大手IHIとバイオベンチャー2社が今夏設立した。利用するのは、神戸大が品種改良を重ねて開発したボトリオコッカスの一種「榎本藻」だ。通常の1000倍の速さで増える。燃料の大量製造に向けた技術開発に特化し、単価の高いジェット燃料などへの活用を見込む。IHIは2年で4億円の投資を決めた。

 藻類を用いた燃料の商業化の試みは、米国を中心に本格化している。米石油メジャーのエクソンモービルは、09年から6億ドル(456億円)以上を投じる予定だ。昨年「人工細菌」を作り出して科学界の話題をさらったクレイグ・ベンター博士が創設したバイオ企業との共同研究で10年以内の実用化を目指す。

 ◇油収量効率高く

 藻類が注目される理由の一つは、単位面積当たりの油の収量の高さ。陸上植物で効率が良いとされるアブラヤシと比べると5~数十倍に達する。食料生産と競合しない点も魅力だ。00年代半ばからの原油高騰に伴い、バイオ燃料の需要が増えた結果、原料のトウモロコシやサトウキビなどの穀物価格上昇を招いた経験があるためだ。

 ◇コスト削減課題

 「不純物がなく、油としての品質は申し分ない」と藤田社長は力を込める。課題は価格競争力だ。現在、油を1リットル精製するコストは1000円以上と見積もられているが、他の燃料との競争には1リットル100円に下げる必要がある。そのためには、培養施設確保や抽出に必要な電力費のコスト削減などの課題をクリアしなければならず、将来的には海外での生産も視野に入れる。3年以内にはサンプル燃料を販売する計画で、10年後に1リットル100円の実現を目指す。

 一方、この分野の草分けの渡辺信・筑波大教授は、大震災で被災した仙台市の処理施設に集まる下水を活用した燃料生産の実証実験を同市、東北大と始める。光合成をせずに水中の有機物を栄養として石油成分をつくる「オーランチオキトリウム」という藻類を使い、油の生産と同時に排水の浄化を両立させる構想だ。渡辺教授は「新しい産業、雇用を生み出し、被災地の復興をサポートしたい。全国の処理場で応用は可能だ」と意気込む。

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