2011年10月28日 21時1分 更新:10月28日 23時31分
タイの洪水問題を受けて政府は28日、被災した日本企業のタイ人従業員に、日本国内での条件付き就労を認めると発表した。操業停止工場の代替生産のため、現地従業員を日本国内の工場で就労させたいとの要望が背景で、「サプライチェーン(供給網)の復旧が第一の目的」(経済産業省)。すでに約30社、数千人の受け入れ要望があり、早ければ来週から受け付ける。
日本では就労目的の入国は原則、熟練労働者しか認められていないが、日系企業の工場で働いていたタイ人労働者は、受け入れ企業が確実に帰国させることや、日本人の雇用を圧迫しないことなどを条件に単純労働者も入国を認める。在留期間は6カ月までとし、査証(ビザ)の手続きも短縮する。
今回の洪水で、日本からタイに進出した400以上の企業の操業が停止。部品供給が途絶えることで、被災していない企業にも影響が広がっている。日本で代替生産するため、現地から金型など生産設備を運ぶ動きもあるが、すぐに使いこなせる技術者が日本にいないケースもあるという。
今回の就労受け入れについて、JVCケンウッドの江口祥一郎副社長は「特にビザの問題があったのでありがたい」と話す。バンコクの防犯カメラなどの工場が被災し、神奈川県横須賀市の工場で代替生産するため、ちょうどタイ人の工場責任者らを呼び寄せようとしていたという。
パナソニック電工も三重県の2工場にタイ人従業員25人程度を移す。
ただ、日本などで代替生産する場合、人員は代替先で確保する社も多い。カーナビゲーションシステムなどの生産工場が被災し、国内や中国での代替生産を決めたパイオニアは「タイから従業員を呼ぶにも住居の確保などで費用がかかる。どういう形にするか改めて検討する」という。
また、経産省は28日、被災した日本企業で働く1300人程度のタイ人に、日本で技術研修を受けてもらう補助事業を行うと発表した。【竹地広憲】