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「特殊映像ラボラトリー」 第18回 洋画アニメに勝算はあるのか?

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第18回 洋画アニメに勝算はあるのか?

斉藤 守彦
[筆者の紹介]

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

■「カールじいさんの空飛ぶ家」、
  5年ぶりに洋画アニメ興収50億円超え

 この正月、「アバター」の大ヒットが大きく取りざたされたが、ピクサー=ディズニーのアニメ映画「カールじいさんの空飛ぶ家」が、興行収入50億円をあげる大ヒットとなったことは、大きなトピックのひとつだ。洋画アニメで興収50億円を超えたのは、2005年正月に公開された「Mr.インクレディブル」の52.6億円以来のこととなる。
 実のところ、興収50億円という額は「そんなもんかなあ?」という感じもしないわけではない。「ファインディング・ニモ」「モンスターズ・インク」など往年のピクサー作品に比べて、同じ“大ヒット”と形容すれども、成績的には大きな差があること。あるいは事前に営業サイドから「目標は、興収100億円!!」との声が聞こえてきた。こと「カールじいさん…」に関する限り、配給会社にとっては勝負作扱いで、ヒットどころではなく、一撃快打のホームランを狙っていた作品だからか。
 それでもここ数年の洋画アニメとしては、「カールじいさん・・」は出色の興行収入を誇っている。過去10年間(1999年12月公開〜2009年12月公開)における洋画アニメの興収ベストテンを上げてみよう。

1=「ファインディング・ニモ」(日本公開年=2003)110億円
2=「モンスターズ・インク」(2002) 93.7億円
3=「Mr.インクレディブル」(2004)52.6億円
4=「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009)50億円
5=「ダイナソー」(2000)49億円
6=「ウォーリー」(2008)40億円
7=「レミーのおいしいレストラン」(2007)39億円
8=「リロ&スティッチ」(2003)29.1億円
9=「ターザン」(1999)28億円
10=「チキン・リトル」(2005)26.8億円

 以上10本の洋画アニメの配給会社は、すべてウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン(旧社名ブエナ・ビスタ インターナショナル・ジャパン)。10本中ピクサー作品が上位4本と6,7位を占めているあたりはさすがの強さを感じさせ、「カールじいさん…」も堂々第4位にランク・インしている。
 2010年の正月興行は、洋画が持ち直したものの、ここ数年の我が国映画マーケットは、所謂「邦高洋低」。外国映画よりも日本映画のヒット作の数のほうが多いという、「洋高邦低」の時代に青春期を送った者にとっては信じられない状況となっている。日本映画、特に日本製アニメ映画の興行的強さたるや、まさしく「映画史を塗り替えた」と言っても過言ではない。洋画アニメと同じく、過去10年間における興収ベストテンを見てみよう。

1=「千と千尋の神隠し」(2001)304億円
2=「ハウルの動く城」(2004)196億円
3=「崖の上のポニョ」(2008)155億円
4=「ゲド戦記」(2006)76.5億円
5=「猫の恩返し」他(2002)64.6億円
6=「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/
    ディアルガVSパルキアVSダークライ」(2007)50.2億円
7=「ONE PIECE STRONG WORLD」(2009)
               47億円(ファーストラン終了時点)
8=「劇場版 ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/
         アルセウス・超克の時空へ」(2009)46.7億円
9=「ポケットモンスター アドバンスジェネレーション/
               七夜の願い星」他(2003)45億円
10=「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/
       ギラティナと氷空の花束シェイミ」(2008)45億円 

 …壮観ってヤツだな…と、榊のオヤジさんのような台詞を口走らずにはいられないランキングである。スタジオジブリにワンピース、ポケモン。この3つのブランド、シリーズでベストテンが形成出来てしまうのが、今の我が国アニメ映画の優位性なのである。
 この邦画アニメ興収ベストテンに、前述の洋画アニメ・ベストテンを代入すると、洋画ではトップの「ファインディング・ニモ」が、邦画3位の下に来て、「モンスターズ・インク」も同様に「ポニョ」と「ゲド戦記」の中間に位置する。つまりピクサー作品と言えども、邦画アニメ映画興収ランキングのベスト3を占める、ジブリ作品の牙城を崩すことは出来ないのである。興収50億円を上げた「カールじいさんの空飛ぶ家」も、6位である2007年の「劇場版ポケモン」と7位の「ONE PIECE STRONG WORLD」に挟まれた格好だ。
 今、洋画アニメは我が国のマーケットで苦戦を強いられている。
 少なくとも邦画アニメと比べて、その興行的ポテンシャルが高くないことは、データが証明している。
 では、なぜそうなるのだろうか?
 いくつものデータや関係者の意見などを参考に、今回それを考えてみた。

2へ続く

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