2011年12月26日

米山香織へ

92年の4月に旗揚げしたJWP

キューティー鈴木や尾崎魔弓、ダイナマイト関西が全盛の頃は 正にJWPは飛ぶ鳥を落とす勢いで WOWOW中継は元より、大塚製薬のスポンサードを受けるなど順風満帆そのものだった
道場も寮もあり、リングトラック、選手移動用の大型バス リングは練習用と興行用に二台所有していた
選手にも充分なギャラを払えていて、年に一度の社員・選手そして選手の家族も参加しての社員旅行はサイパン或いはグアムに出かけていた
有明コロシアム大会を一度、両国国技館大会は二度開催した

だが、JWPはプラム麻里子の事故死に続く 主要選手達の相次ぐ離脱で正に転がるように団体の勢いを無くしていく
また勿論、自分の経営能力の至らなさもそこにはあった

米山がプロレスラーとしてデビューしたのが99年の11月で、自分がJWPを退いたのが2001年の1月
皆様ご存知のように、自分が退いた当時のJWPは財政的に大変な状況で 自分はその責任を取る形で辞めたのだから 米山はJWPの運営が最も苦しい時に入門してきた選手である  同期の選手は、いない

自分には、自分が経営者である時期に 米山に、上の選手達のような いい思いや待遇をしてあげられなかったという心残りが、自分が辞めてからのこの10年間ずっと心の中にある

団体が力を失っていく中で、給与面での待遇が軒並み下がり 社長である自分は選手達からの不満の声を一身に浴びた
自分の社長時代、米山に関してはそれこそ雀の涙くらいの給料しか払えていなかった

米山の目の前で繰り広げられる、JWPの転落劇
給料の遅配
後楽園大会の中止
地方興行の取りやめ
道場、寮からの撤退 
バス、リングの売却

だが、その悲観的な状況の中で米山だけは、自分に一切文句を言わなかった

ただその時は 米山が元々、待遇が悪い中で入門してきて また当時、組織では最も底辺に居る新人選手だったのだから 言いたい事があっても、社長の自分には言えないだけなのかも知れないとずっと思っていた

自分が辞めた数年後 
JWPが、たしか創立15周年だったかのパーティーを開催した時、何故か自分には招待状が来なかった 
SAMURAIでそのパーティーの映像を見たら けしていい辞め方をしたとは言い切れないOG選手達も普通に出席して乾杯をしていた
選手に給料を払おうと、身を賭して働いた自分よりも 離脱して団体にデメリットを与えたOG達のほうを今のJWPは優先したのだ

「淋しい」「何故」という思いもあったが、そのお互いの溝を作る原因のひとつは、おそらく自分にもあるのだから これは仕方のない事で、通るべき道なのだと、自分に言い聞かせた

だが、自分がJWPを辞めてからも 米山だけは ばったりとどこかの会場で出くわしても「ああ、代表!元気ですか!」と それまでと全く同じ距離で、とても精悍に自分に接し続けてくれた
 
とてもありがたい事だが、今はお互いの立ち位置は違う JWP内での米山の人間関係や立場も あるから 自分だけの感情で彼女に余計な迷惑はかけられない

だから、こちらから連絡を取るのは年賀の挨拶の一年に一回くらい
米山からその返事が返ってきて、それで年に一度のコンタクトは終わり

でも、それでも すぐに返事を返してくれて いつも「ありがとうございます!」と感謝の言葉をくれる米山の気遣いが本当に嬉しかった

これはあくまで自分のひとりよがりだが

自分にとって、米山は娘のような存在である

遠くにいても元気でいてくれて、時折りその健康だけを確認できればそれでいい


今回の引退撤回に関して 自分は米山を擁護する気は、ない
米山の引退を見届けにチケットを買ったお客様
また、引退ロードの中で米山との最後の試合である事を念頭に、モチベーションを最大限に上げて戦ってくれた多くのレスラーの方々
彼ら・彼女らに米山は自身の全てを賭けて詫びなければいけない まずは、そこからだ

しかし、自分にとってかけがえのない 「娘」 である米山の今回の行動に関して

「何故そうなったのか」という理由を探そうとする努力を 

少なくとも、この自分だけは

してあげたいと思う

そこには、今まさに世間の非難の渦中にいる米山に 彼女を擁した団体の社長として何もしてあげられなかったに均しい自分までが 皆と同じく批判を浴びせていいのかと言う、取るに足らないセンチメンタリズムも確かにある

だが、「米山個人」が一度しかない人生をこれからもプロレスで歩むのなら それは、この災いを逆転させて業界全体に多大なメリットをもたらすような努力でなければいけないというプロレス業界に対する後押しの気持ちも存在する


改めて
彼女の今回の行動や決断について 何故、そうなったのか
或いは、何故そうせざるを得なかったのか 
「前代未聞の珍事」などという一過性のスキャンダルで、これを通過してしまって良いのかという、至極冷静な思いが自分にはあります

これに関しては 歳末の忙事の中で、まだ頭の中でまとめきれないので 
また、改めて書きます




Posted by cjw2005 at 00:03