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真相解明はまだ先さ。
「キャラをどのように動かすか」ではなく。
「このキャラならどう動くか?」と考える。
その結果がコレだよ。
第三章 飛翔
第四十三話 中止・ストップ・ミステリー
「中止じゃと!?」

「いえ、その可能性もあるという話です」

「……じゃろうな。世界中が注目しておる格闘大会じゃ。ここでやめることなどできないじゃろう」

「はい」

「問題は、百代と宗介君が倒されてしまったことじゃな? それも未だに目を覚まさないときておる」

暗い暗い雰囲気の下、九鬼揚羽と川神鉄心は話しあっていた。
それは、KOSに生じた大きな問題について話し合うためだ。

本来なら誰にも倒せるはずが無い、一方的にルール違反者をたたき出すための存在が、逆に倒されてしまったという事。

運営側が軽んじられる可能性というモノもあるが、それ以上に二人を倒せるような者が参加していた事が問題だ。
まともに戦えば参加者が危険になるとも取れる。実際にはそれはもうあり得ないが。
故にKOSの継続が危ぶまれているのだが……かといってそう簡単に止められるものではない。
先程川神鉄心が言ったとおり、この大会は九鬼が主催した世界的に見ても類を見ないほどの大きな大会だ。世界中から猛者を集める為に宣伝だって世界中で行っている。賞金だってそのために500億も用意しているし、それだけ念入りに準備して金と労力と時間を注ぎ込んだものを、簡単に中止になどできるはずがない。

「目を覚まさない原因は、わかりましたか?」

「情けない事にのう、さっぱりなんじゃ。外傷としては大したものではないはずなんじゃが……」

「問題はそちらではない、と」

「うむ。どういう攻撃を受けたのかすらもさっぱりわからん」

強いて言うなら正体不明、ダメージ不明、何もかも不明だらけという事がわかったくらいだろうか。
そしてその攻撃が、百代と宗介を戦闘不能に陥らせるに足るものだったと。
にわかには信じられない話だが、実際に倒れている者がいるのだから虚実ではないのだ。

「……今のところ、船主側にはさしたる問題は起きていません。ですから――」

「よりいっそうの注意を持って、こっちもやっていかなければならんわけじゃな」

「ご迷惑をおかけします」

「さすがにこれは誰の責任でもあるまい。気にせんでくれ」

確かに、誰にも予想外だった問題が浮上したのは誰の責任でもないだろう。それでも、九鬼揚羽が大会の総責任者である以上は責任を取る必要がある。気休めにしかならないかもしれないが、鉄心としてはそんな人間にこれ以上の負担をかけたくはなかった。

「しっかしまぁ、さすがに予想外だわなぁ。本来の予定とは大幅にズレまくりっつーか」

「ムクロ君じゃったかな? 予定とはどういうことじゃ?」

「俺としちゃあの2人が負けるとか思ってなかったんすよ。んで|この大会(KOS)も上手くいくと。しっかし返り討ちとはなぁ」

「ふむ。まぁ、当然の反応じゃな」

運営側にこれだけの実力者が揃っていて、おまけに九鬼の運営する大会だというのにこの問題である。
納得の言った表情で、彼は九鬼揚羽の背後で壁に背中を預けた青年を見る。
顔に大きな傷のある……おそらくは20代くらいの青年だ。
鉄心が九鬼揚羽に尋ねたところ、彼女の執事である武田小十郎に代わり、KOSの間だけ従者を勤めているらしい。

「とりあえず残り時間は一日と少し。参加チームも大半が脱落した以上、各チームも動きを見せるはず」

「問題はあるが、楽しみじゃのう。若者ががんばっとる姿を見ると心が躍るわい」

ふぉふぉふぉと笑う姿からは、完全に好々爺然とした空気が漂っている。
彼自身もこの大会を見るのが結構楽しみだそうだから当然かもしれない。
そして彼は揚羽に尋ねた。

「ところで、残りチームの数はどうなんじゃ?」

「確か……6チームだったかと」




===




「誰?」

闘う相手を探す彼らの前に現われたのは、紛れも無く敵の集団だった。
そう。『集団』だった。
半分が女で、半分が男。確かに判るのはそれだけで、中心で白と黒に色分けされた仮面を身に付け、同じく真ん中で白と黒に分かれた色をしているコートを纏った6人組。
しかし纏っている雰囲気は、確かに強者達と同じ者。

「6人だと? それでは数が……」

相手の数を確認して、チームの一人である小島梅子は呟いた。
ルールでは4人組のはずだ。
たとえ2チームが組んだとしても8人いなければおかしい。もしくは2人だけ離れてみているのか……?


しかし周りにいる少女たちの方がよほど不思議そうな顔をしていた。


「どうした?」

「え? えと、ちょっと気になっただけだから」

そう応えつつ少しだけ笑って、川神一子は戦闘体勢に移行する。
相手がこちらと戦おうとする意思を明確にしている以上、戦わなければならないだろう。彼女らが参加しているKOSは、そういった趣旨の大会なのだから。
チームメイトの椎名京も、そして第二形態へ変形したクッキーも既に戦闘の準備は済んでいた。

「クッキー、何かわかる?」

「ダメだ。あの仮面とコート、中々に曲者な細工が施されているらしい」

「そっか……」

九鬼の作ったロボットであるクッキーが違和感の正体を探ろうとするも通用せず。
小島梅子も教え子達の為に一歩だけ前に出て、己の武器である鞭を構える。

そして相手は言葉を交わすことも無く、一斉に彼女らへと突進した。

一人は、高くジャンプして一子達へと蹴りかかった。
一人は、小柄な身体を丸めて弾丸のように突撃した。
一人は、大きく振りかぶって殴りかかった。
一人は、棒を使って突きを放った。
一人は、細長い金属の棒を振り回した。
一人は、近くにあったポールを投げつけてきた。

そんな苛烈な攻撃は、どこか物悲しい空気を纏っていた。




===




「中止!? どういうことだよ若!」

「どうにもこうにも……私にも理解できません。ただ、決行が不可能になっただけです」

「そりゃどういう……」

理解不能、そう顔に書いてあるかのような驚愕を浮かべる井上準に、葵冬馬は静かに言った。
榊原小雪と一条風太は、別件で多少問題が発生したために別室待機となっている。
準もそっちの問題は計画していた『カーニバル』には関係ないと把握していた。だからこそ、それ以外に発生した計画が中止になるほどの問題について驚愕したのだ。

「板垣兄弟との連絡が取れなくなりました」

「……それは。でも、それだけならまだ……」

「えぇ。それだけなら良かったのです。それだけなら」

深く溜め息を吐き、冬馬は言った。

「板垣竜兵の下についていた不良連中やユートピアの使用者たちが、町中で一斉に動き出しました。おそらくは何者かの指示の下で、です」

「なっ!?」

「これは私の予測ですが……いえ、おそらく間違いないでしょうね。私達の計画は、完全に乗っ取られました。こんな大会の真っ最中に動き出すなんて、それに拠る目的があるとすれば正気の沙汰ではありません。成功しないという事が目に見えているのですから」

そもそも彼らはどのような計画を立てていたのか。そこから説明するべきだろう。
カーニバルと称した、その計画の決行日は8月8日だった。
時間をかけて町中にユートピアという名の薬をバラまき、マロードと名乗った葵冬馬が黒幕となり、8月8日には板垣兄弟や暴徒達が町を荒らし悪事を働く。私怨の混じった気持ちの下に『ある集団』を叩く。そうなるはずだった。
『親の悪事を子が継ぐ』という、くだらないとも言えるそんな運命がそのまま待ち受けているはずだった。

しかし、事態はそれ以上に悪い方向に変わっていきそうになっている。
この計画自体、灰色で曖昧だった自分の意思を完全に黒に……悪へと傾けるためのものだった。もう逃げられない、もう後戻りはできない悪事を働いて、自分に納得させるためのものだった。
しかしそれはもう叶わない。その機会は完全に奪われたのだ。

「……どうしますか? 準」

「え、どう……って……」

「不可能になった計画に縋りつくような性格はしていませんしね、私は。悩み所は、発生した問題についてです」

乗っ取られたカーニバル。
それに対して自分達がどうするのか。
灰色である自分達がどう行動するのか。どう行動するべきなのか。
既に犯した罪がある以上、開き直って悪に生きるのか。
これまでの葛藤を否定して、考え無しに『気持ち』で行動する友を見習うべきなのか。

「風太なら、まーわかりきった事を言うんだろうけどさ。俺は無理だ。若に従う。これまでも、そしてこれからもな」

「準……」

「俺たちのリーダーは若だ。今ここにいないアイツらも、若の決定を間違ってるなんか思っていないさ。そりゃ、嫌がってた奴は若干一名いたかもしれねぇけどな。あいつもこれまで何も言わなかったんだ。たぶん若を信じることが、風太の言うところの『正義』ってヤツだと思うぜ」

だから従うと、冬馬にとってとても嬉しい、そして残酷でもある言葉を口にした。
今まで冬馬の言葉に嫌とも言わずに従ってきて、計画を立てたときも裏で薬をばら撒く時も文句は言わなかった。
言っても無駄だと思っていた?
いいや違う。信じていたからだ。冬馬の事を。
そして今も、これまで『悪』に逆らえずに『悪』に流され続けてきた冬馬を信じてくれている。

それが、冬馬にはとても嬉しくて仕方が無かった。


「やはり、私は一人ではダメですね」

「え?」

「いえ、こちらの話です。私は非力ですし、他にも足りないものは多いですから」

苦笑し、冬馬は吹っ切れた顔で準を見た。
なるほど。これが仲間というものだ。
詳しくはどう思ったのかは知らないが、きっと冬馬も貴重と思ったことだろう。
そして、友人達のことを考えるなら。過去を清算し、胸を張って生きていくためにはどうすればいいか。頭の良い冬馬ならすぐに思いついたのだろう。

「とりあえず、風太を呼びましょうか。方針は、全員一緒に話してしまいましょう」

「――了解。急いで呼んで来るぜ」






「あ、そうそう。方針はあっちに決めましたが、彼らに対する気持ちは忘れてませんから」

「……若?」

「大丈夫ですよ。しっかり正面から文句を言ってやるだけですよ。あぁ、でも大和君を虐めるのもそれはそれで面白いかもしれませんね……」


あとがき

信念はより強い信念によって覆される。いくらでもな。

なん……だと……ぐはっ!
さすがアメリカンなだけはあるぜステイシー。わかったよ。負けだ。お前の勝ちだぜ。
とてもじゃないが文句のつけようのない素晴らしいボディーだぜ。
ってかおいヒュームさん、キックが1994年版って……皆のトラウマじゃねーか!
なろうから去った友人が復活したからペース上げるべ。もう一度レビュー書き直してもらうか検討中。
投票してくれたら嬉しいな~。その後はHPにもね~。 真剣で私に恋しなさいS!


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