「このビジネスモデルをそのままシステム化して欲しい。」
それは思いもしない人物からの余りにも意外な依頼でした。
「なんでお前がそんな依頼を・・・?」
その依頼主は学生時代からの同級生でウェブ上であるビジネス関係のシステムを提供している企業に勤めている人物でした。
そしてそんな彼の依頼はまさにその企業が提供しているビジネスシステムを基盤としたものだったのです。
何故自分が勤める会社が提供している仕組みのシステムを私などに依頼してくるのか。
確かに私はエンジニアとして彼の依頼で商用的なツールやシステムを組み上げた事が何度かはありました。
こうした個人的なシステム構築の依頼などはエンジニアやシステム関係に詳しい人ならほぼ誰もが経験している事ではないかと思います。
それでなくともIT関係に勤めている友人が多い私はとくにそういった依頼が多いのでした。
勿論そこから窓口が広がってきちんとした仕事を依頼される事もあったため、そういった友人達との付き合いには相応のメリットもありました。
ただその時の彼の依頼は私が個人的に請け負えるようなレベルのものではありませんでした。
それが容易に想定出来る規模の大掛かりな依頼だったのです。
「ここまでの依頼だとさすがに個人的には無理だ。会社を通してくれ。」
私は自分が勤めている会社を通して正式に発注して欲しいという旨を伝えたのでした。
「いや、それはちょっと無理があるな…それだとこっちの会社側にバレると可能性がある。」
彼は率直にそう答えました。
確かに彼の勤める会社と私が勤める会社は私達の繋がりから会社間の取引も何度か交わした事がありました。
「要するに会社側には内密に事を進めてるって事か。」
私は彼の回答からすぐにその事を察しました。
「でもこれは相当かかるぞ。少なくとも数十万で組めるようなシステムじゃないからな。」
彼もそこまでの費用は想定していなかったという様子でした。
しかし現実にその依頼内容はその開発費だけでも500~600万円ほどは間違いなくかかるであろう複雑なものだったのでした。
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