名医の条件:旭川赤十字病院脳神経外科部長・上山博康さん/上
◇患者の死で「医士道」悟る
天才的な手術の腕を持つブラック・ジャック、昼夜を問わず地域住民を支える赤ひげ--。「名医」の定義はさまざまだが、第一線で活躍する医師自身は、どのような医師像を胸に、どのような医療を目指して、日々患者と向き合っているのだろうか。第1回は、年300例を超す脳動脈瘤(りゅう)の手術を手がける、旭川赤十字病院(北海道旭川市)の上山(かみやま)博康・脳神経外科部長(62)。その技術は「匠(たくみ)の手」とも呼ばれ、治療やセカンドオピニオンを求めて、全国から患者が集まる。上山さんの「名医の条件」を聞いた。【大場あい、写真・久保玲】
--地元の医療機関で「治らない」と言われた脳動脈瘤の患者が、全国から訪れるそうですね。
◆患者さんの話で一番むかっ腹が立つのは「手術が難しいから様子を見ましょう」と言う医師が非常に多いことです。「動脈瘤が小さい」「まだ破れない」という理由ならいいんです。でも、今手術が難しいなら、放置して大きくなるともっと難しくなる。僕は「そういう説明は信じちゃだめ」と言います。僕らは医療を生業にしているんだから、難しいものに手をつけないのは医師の敗北です。
--刑事事件になったり、患者に訴えられるのを避けたいのでは。
◆産婦人科医が業務上過失致死罪などで逮捕、起訴された福島県立大野病院事件(08年無罪確定)の影響です。あの事件は、例えばレスキュー隊員がおぼれた人を助けに川へ飛び込み、救命できなかったから逮捕されたようなもの。その後多くの医師が「流された人は助けず、遺体が流れ着くのを待つ」という考えに変わりました。難しい症例を診なければ訴訟にならないんです。でも、それは医師のとるべき行動ではない。
--どうすべきですか。
◆僕は「医士道」という言葉(造語)を使います。武士のような美学、プライドを持った医師のあり方のことです。僕にとっての武士道とは、武士であることに誇りを持ち、自尊心のために生きること。周囲の評価のためではない。医士道の本質は、どんなに難しい治療でも、患者さんが納得するのであれば、戦い(治療)に挑むことです。
僕らは、患者を助けたくて、最高学府を出て医師になった。訴訟を恐れて、自分の本分を忘れていいんですか。自分が正しいと思うことをして訴えられたらそれまでです。悪化させたとき、助けられなかったときに、僕ら自身も身が張り裂けんばかりの苦しみを経験します。外科医の業とでもいうのでしょうか。でもこれを超えられない医師は辞めるしかないと思う。
--「医士道」を意識するようになったきっかけは。
◆20年以上前、自分のふがいなさから、ある男性患者を死に至らしめたことがありました。僕はその患者に最善だと思った新しい治療法を提案しましたが、周囲の助言もあって、実際は違う方法をとり、結果として、彼は手術中に亡くなりました。僕はなぜ失敗したのかを患者の家族に話し、土下座して謝りました。彼の家族は「お父さんが信じていた先生がやったことだから」と言ってくれましたが。彼は僕ととても気が合う人で、今でも笑顔を思い出します。
僕はそのときに本当の覚悟がついた。彼は全幅の信頼を置いて手術台に上ってくれ、命を落とした。一方僕は、仮に患者さんを助けられず罪に問われ、医師免許を剥奪されたとしても、命まで奪われることはない。僕は、自分がどんな極限の状況におかれても、もう逃げることはないだろうと思いました。
彼の死を境に、僕は誰に何を言われても、自分の立場が危うくなっても、患者を助けるために、自分が正しいと思った治療を尽くすことにした。それは武士道に通じると思い、医師の「師」を「士」に置き換えた。それくらいのプライドを持って仕事に臨んでいます。
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引用ここまで
この気持ち、わからなくもない。
しかし、
武士は戦いに挑んで敗れても、罪人にはなりません。
一方、医師は罪人になります。
武士は命が奪われても、名誉が守られます。
一方、医師は、例え正しいことをしても、犯罪者として名誉を奪われます。
>訴訟を恐れて、自分の本分を忘れていいんですか。
>自分が正しいと思うことをして訴えられたらそれまでです。
この気持ちはわからなくもないが、
このような医師にふさわしいのは、
例え命が奪われても名誉を守る「武士道」ではなく、
例え犯罪者になってもしぶとく渡世する「極道」なのではないか?
>でもこれを超えられない医師は辞めるしかないと思う。
で、実際にみんな急性期医療や救急医療の現場から
どんどんいなくなるわけですね。
医師の大半は堅気であり、極道ではありませんので、当然です。
犯罪者になってもしぶとく渡世する覚悟なんて、ありません。
もちろん、僕もです。
覚悟の無い僕は名医にはなれないでしょうw
「名医たらずとも良医たれ」
堅気の一市民として、できる範囲内でベストを尽くします。
道を極めることよりも、
正義を貫いた医師を犯罪者にしない制度作りのほうが、はるかに重要です。