最初に。
今回の大地震、大津波によって多くの尊い命が失われたことについて、お悔やみを申し上げるとともに、今も被災地で不安な日々を過ごされている方々、そして救助を待っている方々に、心からのお見舞いと、一刻も早い救出、復興を願ってやみません。
また、電力不足による計画停電が実施されることとなり、被災していなくても不自由な生活を強いられることとなった関東一円の方々には、「頑張れ!超頑張れ!」という言葉をかけるくらいしか、何も思いつきません。
震源から遠く離れた地に住んでいるため直接的な被害は何もなく、普通の生活を送っているのですが、何かしらできることはないか、と考え、いつものテーマとは異なる日記を書こうかと考えた次第です。
当方、放射線取扱主任者第1種免許の保持者です。
大学時代の専攻も、宇宙放射線の観測でした。
放射線に関する知識は、少々持ち合わせております。
そこで福島原発で起きていることを、わかりやすくご紹介していこうと思ったのですが・・・
既に専門家が詳しく、しかもわかりやすく紹介してるし。○| ̄|_
ということでリンクを紹介させて頂きます。
サイエンス・アラート 原発に関するQ&Aまとめ のミラーサイト
リンク先が読めない方のために、3/14 22:15現在の記載内容を転載させて頂きます。
1. 被曝について
Q. いま現在、報道されてる程度の放射線量でも被曝するものなのでしょうか?
A. 放射性の原子が数十~数百個皮膚に付着しただけでガイガーカウンターで被曝が検出されます。
今回の被曝程度は分かりませんが、被曝の検出感度は非常に高いものです.
⇒ 健康に影響が出始める被曝量より少ない量になることが、発電所周辺の放射線監視施設からの情報から推定されますのでご安心ください。放射線検出の感度(被曝の有無を確認する方法)の精度は非常に高いです.
Q. 間接的な被曝などについては心配したほうがよいのでしょうか。たとえば近海で獲れた魚とかには気をつけたほうが良いのでしょうか?
A. 漏れた放射性物質の量が、いま報道されているレベルなら心配ありません。自然界にも放射線を出す物質は沢山あります。
⇒ 周辺地域の農作物、近海の魚、酪農などの環境への放射性物質の混入の影響は、今得られる情報からは微弱であると考えられます。加えて、状況が落ち着いた後にしっかりとした調査も当然されると思います。
Q.「外に出ない」ということが防御策となりますか?
A. 原発の近くに行かないことが第一です。政府の避難指示20kmが目安です。そして外気に触れないことです。
⇒ 原子力施設からの直接の放射線や突発的な放射性物質の放出による影響は多く見積もっても2~3キロメートルです。
放射性物質から身を守るためには外気に触れない事が大切です。そのためには屋内退避が効果的です。
Q. 20km以上離れれば安全ということですが、外気に触れないというのは東京でも同様でしょうか?
A. 福島と東京のあいだは250km以上離れていますので心配無用です。
⇒ 放射性物質は距離が離れるほど急激に薄まりますので、問題ありません。
Q. ではなぜ20kmに拡大したのでしょうか?
A. 政府の判断基準はわかりませんが、アメリカで1979年に発生したスリーマイル島の原発事故の時は16km以遠には影響が及ばなかったとされています。このデータから推測すると、政府の避難指示は適切だと思います。
⇒ スリーマイル島の際には16kmでした。今回はそれに習い、万全を期す為に20kmに設定したものと考えられます。もちろん16km以内にいると健康に害がでるという訳ではないです。
Q.一時的に放射能の量が上下しましたよね。その理由はなんですか?
A.容器の内圧を下げるため排気していて、その時に放射性のキセノンやヨウ素が出たと考えられます。現在の状況では格納容器を守るほうが重要なので、これは避けられないものであったといえます。
⇒ 私達も早野先生のコメントの通りであると考えます.
Q. 最悪の場合はどうなるのでしょうか?
A. どうなるかは放出量と天気で決まります。ヨウ素131は空気より重いので、風が弱ければあまり遠くまで拡散しません。半減期も8日と短いです。
⇒ 原子力発電所の設計時の安全評価で、最悪の場合でも周辺住民に健康影響が出ないように対策されています。(立地審査指針より)
Q. 放射性物質の半減期はもっと長いのかと思っていました。
A. キセノン137の半減期は3.8分であり、半減期が30年のセシウム137に変化するおそれがあるので油断はできません。
⇒ 半減期(放射性物質の量が半分になるまでにかかる時間)は放射性元素の種類によって、短いものあれば長いものもあります。
半減期が短いものはすぐに減ります。ただし,短期的には多くの放射線を出すので皮膚への接触や吸い込みを極力避けることが必要です。
一方、半減期が長いものは放射線をほとんど出さずに安定です。ただし、長期的に緩やかに放射線の放出が続くので、影響がないか継続的な調査が必要になると考えられます。
Q. 1 時間で放射能が1/100 に落ちるというのが、ちょっと解せません。風向きとかでしょうかね?
A. 放出されるのはキセノンやクリプトンなどの希ガスの短寿命放射性同位元素が多いのです。たちまちレベルが落ちたなら放出は長時間に及ばなかったと推測されます。
⇒ 原子力発電所からの放出が少なくなれば、
①放射性物質は自然と崩壊し放射線の量は減衰します。
②大気中に拡散して薄まるという効果もあります。
主にその2点のくみ合わせで放射線の量が減少していきます。寿命の短い物質(半減期が短い物質)の場合、①の効果で「放射能が(急激に)落ちる」ということになります。
Q. 第一原発付近の双葉厚生病院にて被曝者が出ているようなのですが?
A. 第一原子力発電所の北北西4kmあたりのところにある、双葉厚生病院のグラウンドで自衛隊のヘリコプターによる搬送を待っていた三人が被曝したようです。除染(まずは体を洗う)が必要ということは、ここでの被曝とは原発から風で運ばれた放射性同位元素が体に付着しているという意味のようです。
⇒ 外気にさらされている部分が汚染されている可能性があるので、先ずは服を取り替え、手や顔を洗ってください。洗えば放射線物質は落ちます。
2. 純水・海水での冷却について
Q. そもそも地震直後に運転停止はなぜできないのでしょうか?
A. 「運転」は停止しています。制御棒を入れ、核分裂連鎖反応は止まっています。しかし、核分裂で生じた放射性同位元素が燃料棒にあるので、その崩壊熱で温度が上昇しますから冷やす必要があるのです。
⇒ 「制御棒」とは,原子炉内に挿入することで、緊急時に核分裂反応を制御したり止めたりするための棒です。
この制御棒は地震直後に挿入されており、既に連鎖的なウランの核分裂反応は止まっています。
原子力発電では、中性子による核反応を制御することが安全な運転のために必要になります。
原子炉では核分裂反応によりエネルギーが放出され発電ができますが、同時に中性子も発生するので,その中性子を利用して次の核分裂反応を起こすことができます。このように連鎖的に核分裂反応がおこることで、大量のエネルギーが発生して発電ができます。
制御棒はその中性子を吸収する材料で、これを燃料の間に「入れる」ことで中性子を吸収させて中性子の数を減らし、原子力発電炉の中で生じる連鎖的な核分裂反応を制御したり止めたりすることができます。
ただし、燃料の核分裂により生じた生成物がさまざまな反応を起こしており、その反応による発熱を除去しなければ燃料本体の温度上昇につながります。
今問題になっているのは,その温度上昇の抑制機能が一部の号機に失われていることです。
Q. 海水で満たすというのは最後の手段ですか?仮に失敗した場合はどうなるのですか?
A. 決断したからには、何としてもやり遂げて格納容器内を冷やさねばなりません。
現場の方々の御努力に期待します。
⇒ これについては既に福島第一原子力発電所1号機で実施されました。今では原子炉への海水注入作業が完了し、圧力容器(「4」の回答部分を参考にしてください)が満水状態になっていますので作業は成功したと言えます。
Q. 今後の容器の崩壊は免れたのでしょうか?
A. 現在は無事ですが、海水を入れて格納容器内を冷やすことが必須ですね.
⇒ 「現状では無事」というのが正確な認識だと思います。全ての原子炉の核燃料の温度が十分に下がり低温で安定化すれば、「崩壊は免れた」と結論でき、それを目標に最善の対策が練られていると思います。
Q. 冷却に成功すれば大惨事は回避出来たと考えていいのでしょうか?
A. はい。現場の方々のご努力に期待します。
⇒ 現状のニュースを見る限りでは、回避できていると考えています。
Q. 冷却水がどこかから漏れていたということは、海水を入れてもどこかから漏れてしまい、満たすことができないと思うのですが。だからこそ圧力容器ではなく格納容器ごと満たそう、ということでしょうか?
A. 確かな回答が出来るだけの情報がありません。
「漏れていた」といいうのは水面低下データにもとづく推測です。
⇒ 現状では十分な情報がなく確かなことは言えません。「漏れていた」というのは、
①原子炉内の冷却水の水位が大幅に低下したこと
②蒸気の意図的な放出が始まる前の12日明け方から発電所敷地における放射線の量(モニタリングポストによる測定値・・・モニタリングポストとは,放射線の定点観測装置.概観は四国電力のホームページ参照:http://www.yonden.co.jp/energy/atom/word/page_02.html)が上昇していたことなどに基づいて推測されたものと考えられます。
Q. 冷却水の循環が止まった結果沸騰して水蒸気になった可能性はあるのでしょうか.
A. 水を圧縮しても体積は減らないので、水蒸気圧力上昇で水面が大きく下がることはありません。やはり水がどこかから失われたと考えるのが妥当だと思います。
⇒ 原子炉内は大気中よりも圧力が高く、水は容易には沸騰・蒸発しません。(富士山の頂上では圧力が低いため,水が100℃より低い温度で沸騰しますが、圧力が高い原子炉内ではその逆の現象が起きます。)つまり原子炉内では、水の沸騰・蒸発によって水位が大幅に低下する状況は考えられません。そのため早野先生が指摘されている通り、「水がどこかから失われた」というのが現状でわかる範囲の正確な認識であると思います。
3. ホウ酸について
中性子捕獲に有効なのは質量数のホウ素原子核です。ホウ酸はホウ素を含む水溶性の物質。これを海水に混ぜて冷却水として原子炉に注入しています。
⇒ ホウ素(原子番号:B)は核分裂反応の維持に必要な中性子を吸収する性質を有します。
ホウ酸(H3BO3)はこのホウ素を含む水溶性の物質です。現在、福島第一原子力発電所1号機ではこれを海水に混ぜて冷却水の代わりとして原子炉に注入しています。通常では核分裂連鎖反応を抑える役割は主に制御棒が担っていますが、今回は燃料の一部が溶けている可能性があり、設計外の形で存在する核燃料の反応を抑えるため、ホウ酸を注入しているものと考えられます。
Q. ホウ酸にはどのような効果があるのでしょうか?
A. 原子炉内で中性子を吸収するのに有効です。一応、制御棒は入っていますが、燃料が制御棒の守備範囲の外に出てしまった場合、ホウ素を入れておけば核分裂の連鎖反応が始まるリスクを抑えられると考えられます。つまり制御棒による核分裂防止を補強するものです。
Q. 海水・ホウ酸投入ということは、事態が収まった後も炉をつかえなくなるということでしょうか?
A. 燃料棒が破損していることは明らかなので、事態が収まったらすぐに運転再開などということはあり得ません。
⇒ A. 燃料棒が破損していることは明らかなので、事態が収まったらすぐに運転再開などということはあり得ません。この点に関しては状況が安定した後にまた報告があると思います。
4. 爆発について
Q. 何故福島第一原発は水素爆発したんでしょうか。格納容器と建屋の間に水素が充満していたという事ですか?
A. 核燃料はウランをジルコニウムという物質で包み込み、原子炉内に設置されます。このジルコニウムは高温になるほど水と反応し水素を発生させます。水素は配管などを通じて格納容器の外に漏れ出し、建屋内に溜まっていたとみられています。この水素が酸素と反応し爆発したとみられています。
⇒ ジルコニウムは、次の質問のコメントにある「第2の壁:丈夫な金属の被覆管」というものです。
「格納容器」や「建屋」についてもその役割は次の質問へのコメントで確認してみてください。
Q. 爆発によっても格納容器は壊れていないということですが、水素の爆発によるエネルギーが格納容器を破損するほど大きくないということでしょうか?
A. はい。建屋は壊れますが格納容器は丈夫です。これが原子炉の重大事故を防ぐ最後の砦です。
格納容器は破壊されなかったらしいので、ひとまず安心です。格納容器が守られていれば大惨事にはなりません。
⇒ 以下にどのように原子力発電所で放射性物質が閉じ込められているかを、関西電力のホームページから引用します:
「ウランが核分裂すると放射性物質がつくられます.そのため原子力発電所では,放射性物質を閉じ込めるため5重の壁でおおい、万が一の異常の際にも放射性物質を閉じ込められるように安全確保に備えています.」(http://www.kepco.co.jp/bestmix/contents/16.html)
この中で福島第一の1号機については、第1、2の壁および第5の壁が破られている可能性があります。ただ第3の壁と第4の壁については現状では守られていると考えられています。
この2つを守ることが重要で、現在全力をあげて対応が行われています。
5. 原発の稼働状況等について
Q. 「いわゆる原子炉の暴走」って何ですか?
A. チェルノブイリ事故のように核分裂が制御不能になり、原子炉出力が標準的な運転出力の10倍にもなってしまう場合のことです。ただし今回の場合は、原子炉としては運転を停止しているので意味が違います。それでも冷却水のレベルを下げないようにすることは必要です。
⇒ 「原子炉の暴走」とは核分裂反応が人間のコントロールできる範囲を超えて急激に進行する状況のことを指します。その点、福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所では、原子炉内での核分裂は地震直後に正常に停止しているため、「原子炉の暴走」状態にはありません。
現在問題になっているのは、ウランの燃えカスがさまざまな反応を起こす際の発熱です。
Q. 東京電力によると、モニタリングポストは8カ所とも機能していないということですが?
A. 第一原子力発電所のモニタリングポストは動いていませんが、第二原子力発電所のものは動いています.
⇒ 福島第二原子力発電所のモニタリングポスト(放射線の定点観測装置.概観は四国電力のホームページ参照:http://www.yonden.co.jp/energy/atom/word/page_02.html)は、東京電力のHPからは速報値を確認できませんが正常に作動している模様です。また第一原子力発電所のモニタリングポストについては、定点に設置されている通常の地点は動いていませんが、車で運べるモニタリング装置や小型のポータブルな線量計を用いて放射線量の測定は行われています。その点、発電所周辺の放射線の現状は適切に管理し切れていると言えます。
Q. リアルタイムモニターはないのでしょうか?
A. 第二発電所のモニターは動いていますが第一のモニターは昨日(3/11)から動いていません。
福島県の放射線モニターも動いていません。
⇒ 通常であれば,発電所周辺に設置されているモニタリングポストの測定値は、電力会社をはじめとする関係機関のHPを通じてリアルタイムで確認することができますが、現状では何らかの原因でHP上のデータが更新されない状況になっています。なお,原子力安全保安院が行った13日未明の会見では、福島県が設置しているモニタリングポストの観測データも入っており、現在では福島県設置のモニタリングポストは測定可能な状況のようです。
Q. 福島第二の状況も気になります。冷却が十分でないのは同じと思いますが、第一と同様の対応が必要でしょうか?
A. 気になりますが、3/13 21:10現在、周辺の放射線レベルは正常値です。
福島第二原子力発電所の排気筒からは、放射性物質は放出されていません.
⇒ 福島第二発電所は福島第一発電所と比べて制御がある程度できている状況です。そのため第一発電所で見られたような放射線の放出は、突然には想定されないと思います。具体的には以下に説明します。
原子力発電所では、冷却系を含む安全上重要な機器は万が一個々の機器にトラブルが発生した場合でも正常に原子炉を制御できるよう、同じ機能を持った複数の機器が設置されています。第二原子力発電所でも冷却系統に異常が発生しているということですが、現状ではバックアップの機器を用いて冷却を維持できている状況です。そのため福島第二原子力発電所では原子炉の冷却機能は完全には喪失されておらず、その点で、既に冷却機能が完全に喪失している福島第一原子力発電所1号機および3号機とは状況が異なります。
・・・ということのようです。
ともかく、必要以上に恐怖に感じる必要はありません。
20km圏から離れているなら、格納容器の破壊が起こりえない限り、危険性はほとんどありません!
ただし、万が一に備えることは必要です。
政府や東京電力が注意してることを守って下さい。
『炉心融解』でググって間違って飛んできてしまった方も、ここも読んでいって下さいね。σ(゚ー^*)
今回の大地震、大津波によって多くの尊い命が失われたことについて、お悔やみを申し上げるとともに、今も被災地で不安な日々を過ごされている方々、そして救助を待っている方々に、心からのお見舞いと、一刻も早い救出、復興を願ってやみません。
また、電力不足による計画停電が実施されることとなり、被災していなくても不自由な生活を強いられることとなった関東一円の方々には、「頑張れ!超頑張れ!」という言葉をかけるくらいしか、何も思いつきません。
震源から遠く離れた地に住んでいるため直接的な被害は何もなく、普通の生活を送っているのですが、何かしらできることはないか、と考え、いつものテーマとは異なる日記を書こうかと考えた次第です。
当方、放射線取扱主任者第1種免許の保持者です。
大学時代の専攻も、宇宙放射線の観測でした。
放射線に関する知識は、少々持ち合わせております。
そこで福島原発で起きていることを、わかりやすくご紹介していこうと思ったのですが・・・
既に専門家が詳しく、しかもわかりやすく紹介してるし。○| ̄|_
ということでリンクを紹介させて頂きます。
サイエンス・アラート 原発に関するQ&Aまとめ のミラーサイト
リンク先が読めない方のために、3/14 22:15現在の記載内容を転載させて頂きます。
1. 被曝について
Q. いま現在、報道されてる程度の放射線量でも被曝するものなのでしょうか?
A. 放射性の原子が数十~数百個皮膚に付着しただけでガイガーカウンターで被曝が検出されます。
今回の被曝程度は分かりませんが、被曝の検出感度は非常に高いものです.
⇒ 健康に影響が出始める被曝量より少ない量になることが、発電所周辺の放射線監視施設からの情報から推定されますのでご安心ください。放射線検出の感度(被曝の有無を確認する方法)の精度は非常に高いです.
Q. 間接的な被曝などについては心配したほうがよいのでしょうか。たとえば近海で獲れた魚とかには気をつけたほうが良いのでしょうか?
A. 漏れた放射性物質の量が、いま報道されているレベルなら心配ありません。自然界にも放射線を出す物質は沢山あります。
⇒ 周辺地域の農作物、近海の魚、酪農などの環境への放射性物質の混入の影響は、今得られる情報からは微弱であると考えられます。加えて、状況が落ち着いた後にしっかりとした調査も当然されると思います。
Q.「外に出ない」ということが防御策となりますか?
A. 原発の近くに行かないことが第一です。政府の避難指示20kmが目安です。そして外気に触れないことです。
⇒ 原子力施設からの直接の放射線や突発的な放射性物質の放出による影響は多く見積もっても2~3キロメートルです。
放射性物質から身を守るためには外気に触れない事が大切です。そのためには屋内退避が効果的です。
Q. 20km以上離れれば安全ということですが、外気に触れないというのは東京でも同様でしょうか?
A. 福島と東京のあいだは250km以上離れていますので心配無用です。
⇒ 放射性物質は距離が離れるほど急激に薄まりますので、問題ありません。
Q. ではなぜ20kmに拡大したのでしょうか?
A. 政府の判断基準はわかりませんが、アメリカで1979年に発生したスリーマイル島の原発事故の時は16km以遠には影響が及ばなかったとされています。このデータから推測すると、政府の避難指示は適切だと思います。
⇒ スリーマイル島の際には16kmでした。今回はそれに習い、万全を期す為に20kmに設定したものと考えられます。もちろん16km以内にいると健康に害がでるという訳ではないです。
Q.一時的に放射能の量が上下しましたよね。その理由はなんですか?
A.容器の内圧を下げるため排気していて、その時に放射性のキセノンやヨウ素が出たと考えられます。現在の状況では格納容器を守るほうが重要なので、これは避けられないものであったといえます。
⇒ 私達も早野先生のコメントの通りであると考えます.
Q. 最悪の場合はどうなるのでしょうか?
A. どうなるかは放出量と天気で決まります。ヨウ素131は空気より重いので、風が弱ければあまり遠くまで拡散しません。半減期も8日と短いです。
⇒ 原子力発電所の設計時の安全評価で、最悪の場合でも周辺住民に健康影響が出ないように対策されています。(立地審査指針より)
Q. 放射性物質の半減期はもっと長いのかと思っていました。
A. キセノン137の半減期は3.8分であり、半減期が30年のセシウム137に変化するおそれがあるので油断はできません。
⇒ 半減期(放射性物質の量が半分になるまでにかかる時間)は放射性元素の種類によって、短いものあれば長いものもあります。
半減期が短いものはすぐに減ります。ただし,短期的には多くの放射線を出すので皮膚への接触や吸い込みを極力避けることが必要です。
一方、半減期が長いものは放射線をほとんど出さずに安定です。ただし、長期的に緩やかに放射線の放出が続くので、影響がないか継続的な調査が必要になると考えられます。
Q. 1 時間で放射能が1/100 に落ちるというのが、ちょっと解せません。風向きとかでしょうかね?
A. 放出されるのはキセノンやクリプトンなどの希ガスの短寿命放射性同位元素が多いのです。たちまちレベルが落ちたなら放出は長時間に及ばなかったと推測されます。
⇒ 原子力発電所からの放出が少なくなれば、
①放射性物質は自然と崩壊し放射線の量は減衰します。
②大気中に拡散して薄まるという効果もあります。
主にその2点のくみ合わせで放射線の量が減少していきます。寿命の短い物質(半減期が短い物質)の場合、①の効果で「放射能が(急激に)落ちる」ということになります。
Q. 第一原発付近の双葉厚生病院にて被曝者が出ているようなのですが?
A. 第一原子力発電所の北北西4kmあたりのところにある、双葉厚生病院のグラウンドで自衛隊のヘリコプターによる搬送を待っていた三人が被曝したようです。除染(まずは体を洗う)が必要ということは、ここでの被曝とは原発から風で運ばれた放射性同位元素が体に付着しているという意味のようです。
⇒ 外気にさらされている部分が汚染されている可能性があるので、先ずは服を取り替え、手や顔を洗ってください。洗えば放射線物質は落ちます。
2. 純水・海水での冷却について
Q. そもそも地震直後に運転停止はなぜできないのでしょうか?
A. 「運転」は停止しています。制御棒を入れ、核分裂連鎖反応は止まっています。しかし、核分裂で生じた放射性同位元素が燃料棒にあるので、その崩壊熱で温度が上昇しますから冷やす必要があるのです。
⇒ 「制御棒」とは,原子炉内に挿入することで、緊急時に核分裂反応を制御したり止めたりするための棒です。
この制御棒は地震直後に挿入されており、既に連鎖的なウランの核分裂反応は止まっています。
原子力発電では、中性子による核反応を制御することが安全な運転のために必要になります。
原子炉では核分裂反応によりエネルギーが放出され発電ができますが、同時に中性子も発生するので,その中性子を利用して次の核分裂反応を起こすことができます。このように連鎖的に核分裂反応がおこることで、大量のエネルギーが発生して発電ができます。
制御棒はその中性子を吸収する材料で、これを燃料の間に「入れる」ことで中性子を吸収させて中性子の数を減らし、原子力発電炉の中で生じる連鎖的な核分裂反応を制御したり止めたりすることができます。
ただし、燃料の核分裂により生じた生成物がさまざまな反応を起こしており、その反応による発熱を除去しなければ燃料本体の温度上昇につながります。
今問題になっているのは,その温度上昇の抑制機能が一部の号機に失われていることです。
Q. 海水で満たすというのは最後の手段ですか?仮に失敗した場合はどうなるのですか?
A. 決断したからには、何としてもやり遂げて格納容器内を冷やさねばなりません。
現場の方々の御努力に期待します。
⇒ これについては既に福島第一原子力発電所1号機で実施されました。今では原子炉への海水注入作業が完了し、圧力容器(「4」の回答部分を参考にしてください)が満水状態になっていますので作業は成功したと言えます。
Q. 今後の容器の崩壊は免れたのでしょうか?
A. 現在は無事ですが、海水を入れて格納容器内を冷やすことが必須ですね.
⇒ 「現状では無事」というのが正確な認識だと思います。全ての原子炉の核燃料の温度が十分に下がり低温で安定化すれば、「崩壊は免れた」と結論でき、それを目標に最善の対策が練られていると思います。
Q. 冷却に成功すれば大惨事は回避出来たと考えていいのでしょうか?
A. はい。現場の方々のご努力に期待します。
⇒ 現状のニュースを見る限りでは、回避できていると考えています。
Q. 冷却水がどこかから漏れていたということは、海水を入れてもどこかから漏れてしまい、満たすことができないと思うのですが。だからこそ圧力容器ではなく格納容器ごと満たそう、ということでしょうか?
A. 確かな回答が出来るだけの情報がありません。
「漏れていた」といいうのは水面低下データにもとづく推測です。
⇒ 現状では十分な情報がなく確かなことは言えません。「漏れていた」というのは、
①原子炉内の冷却水の水位が大幅に低下したこと
②蒸気の意図的な放出が始まる前の12日明け方から発電所敷地における放射線の量(モニタリングポストによる測定値・・・モニタリングポストとは,放射線の定点観測装置.概観は四国電力のホームページ参照:http://www.yonden.co.jp/energy/atom/word/page_02.html)が上昇していたことなどに基づいて推測されたものと考えられます。
Q. 冷却水の循環が止まった結果沸騰して水蒸気になった可能性はあるのでしょうか.
A. 水を圧縮しても体積は減らないので、水蒸気圧力上昇で水面が大きく下がることはありません。やはり水がどこかから失われたと考えるのが妥当だと思います。
⇒ 原子炉内は大気中よりも圧力が高く、水は容易には沸騰・蒸発しません。(富士山の頂上では圧力が低いため,水が100℃より低い温度で沸騰しますが、圧力が高い原子炉内ではその逆の現象が起きます。)つまり原子炉内では、水の沸騰・蒸発によって水位が大幅に低下する状況は考えられません。そのため早野先生が指摘されている通り、「水がどこかから失われた」というのが現状でわかる範囲の正確な認識であると思います。
3. ホウ酸について
中性子捕獲に有効なのは質量数のホウ素原子核です。ホウ酸はホウ素を含む水溶性の物質。これを海水に混ぜて冷却水として原子炉に注入しています。
⇒ ホウ素(原子番号:B)は核分裂反応の維持に必要な中性子を吸収する性質を有します。
ホウ酸(H3BO3)はこのホウ素を含む水溶性の物質です。現在、福島第一原子力発電所1号機ではこれを海水に混ぜて冷却水の代わりとして原子炉に注入しています。通常では核分裂連鎖反応を抑える役割は主に制御棒が担っていますが、今回は燃料の一部が溶けている可能性があり、設計外の形で存在する核燃料の反応を抑えるため、ホウ酸を注入しているものと考えられます。
Q. ホウ酸にはどのような効果があるのでしょうか?
A. 原子炉内で中性子を吸収するのに有効です。一応、制御棒は入っていますが、燃料が制御棒の守備範囲の外に出てしまった場合、ホウ素を入れておけば核分裂の連鎖反応が始まるリスクを抑えられると考えられます。つまり制御棒による核分裂防止を補強するものです。
Q. 海水・ホウ酸投入ということは、事態が収まった後も炉をつかえなくなるということでしょうか?
A. 燃料棒が破損していることは明らかなので、事態が収まったらすぐに運転再開などということはあり得ません。
⇒ A. 燃料棒が破損していることは明らかなので、事態が収まったらすぐに運転再開などということはあり得ません。この点に関しては状況が安定した後にまた報告があると思います。
4. 爆発について
Q. 何故福島第一原発は水素爆発したんでしょうか。格納容器と建屋の間に水素が充満していたという事ですか?
A. 核燃料はウランをジルコニウムという物質で包み込み、原子炉内に設置されます。このジルコニウムは高温になるほど水と反応し水素を発生させます。水素は配管などを通じて格納容器の外に漏れ出し、建屋内に溜まっていたとみられています。この水素が酸素と反応し爆発したとみられています。
⇒ ジルコニウムは、次の質問のコメントにある「第2の壁:丈夫な金属の被覆管」というものです。
「格納容器」や「建屋」についてもその役割は次の質問へのコメントで確認してみてください。
Q. 爆発によっても格納容器は壊れていないということですが、水素の爆発によるエネルギーが格納容器を破損するほど大きくないということでしょうか?
A. はい。建屋は壊れますが格納容器は丈夫です。これが原子炉の重大事故を防ぐ最後の砦です。
格納容器は破壊されなかったらしいので、ひとまず安心です。格納容器が守られていれば大惨事にはなりません。
⇒ 以下にどのように原子力発電所で放射性物質が閉じ込められているかを、関西電力のホームページから引用します:
「ウランが核分裂すると放射性物質がつくられます.そのため原子力発電所では,放射性物質を閉じ込めるため5重の壁でおおい、万が一の異常の際にも放射性物質を閉じ込められるように安全確保に備えています.」(http://www.kepco.co.jp/bestmix/contents/16.html)
この中で福島第一の1号機については、第1、2の壁および第5の壁が破られている可能性があります。ただ第3の壁と第4の壁については現状では守られていると考えられています。
この2つを守ることが重要で、現在全力をあげて対応が行われています。
5. 原発の稼働状況等について
Q. 「いわゆる原子炉の暴走」って何ですか?
A. チェルノブイリ事故のように核分裂が制御不能になり、原子炉出力が標準的な運転出力の10倍にもなってしまう場合のことです。ただし今回の場合は、原子炉としては運転を停止しているので意味が違います。それでも冷却水のレベルを下げないようにすることは必要です。
⇒ 「原子炉の暴走」とは核分裂反応が人間のコントロールできる範囲を超えて急激に進行する状況のことを指します。その点、福島第一原子力発電所および福島第二原子力発電所では、原子炉内での核分裂は地震直後に正常に停止しているため、「原子炉の暴走」状態にはありません。
現在問題になっているのは、ウランの燃えカスがさまざまな反応を起こす際の発熱です。
Q. 東京電力によると、モニタリングポストは8カ所とも機能していないということですが?
A. 第一原子力発電所のモニタリングポストは動いていませんが、第二原子力発電所のものは動いています.
⇒ 福島第二原子力発電所のモニタリングポスト(放射線の定点観測装置.概観は四国電力のホームページ参照:http://www.yonden.co.jp/energy/atom/word/page_02.html)は、東京電力のHPからは速報値を確認できませんが正常に作動している模様です。また第一原子力発電所のモニタリングポストについては、定点に設置されている通常の地点は動いていませんが、車で運べるモニタリング装置や小型のポータブルな線量計を用いて放射線量の測定は行われています。その点、発電所周辺の放射線の現状は適切に管理し切れていると言えます。
Q. リアルタイムモニターはないのでしょうか?
A. 第二発電所のモニターは動いていますが第一のモニターは昨日(3/11)から動いていません。
福島県の放射線モニターも動いていません。
⇒ 通常であれば,発電所周辺に設置されているモニタリングポストの測定値は、電力会社をはじめとする関係機関のHPを通じてリアルタイムで確認することができますが、現状では何らかの原因でHP上のデータが更新されない状況になっています。なお,原子力安全保安院が行った13日未明の会見では、福島県が設置しているモニタリングポストの観測データも入っており、現在では福島県設置のモニタリングポストは測定可能な状況のようです。
Q. 福島第二の状況も気になります。冷却が十分でないのは同じと思いますが、第一と同様の対応が必要でしょうか?
A. 気になりますが、3/13 21:10現在、周辺の放射線レベルは正常値です。
福島第二原子力発電所の排気筒からは、放射性物質は放出されていません.
⇒ 福島第二発電所は福島第一発電所と比べて制御がある程度できている状況です。そのため第一発電所で見られたような放射線の放出は、突然には想定されないと思います。具体的には以下に説明します。
原子力発電所では、冷却系を含む安全上重要な機器は万が一個々の機器にトラブルが発生した場合でも正常に原子炉を制御できるよう、同じ機能を持った複数の機器が設置されています。第二原子力発電所でも冷却系統に異常が発生しているということですが、現状ではバックアップの機器を用いて冷却を維持できている状況です。そのため福島第二原子力発電所では原子炉の冷却機能は完全には喪失されておらず、その点で、既に冷却機能が完全に喪失している福島第一原子力発電所1号機および3号機とは状況が異なります。
・・・ということのようです。
ともかく、必要以上に恐怖に感じる必要はありません。
20km圏から離れているなら、格納容器の破壊が起こりえない限り、危険性はほとんどありません!
ただし、万が一に備えることは必要です。
政府や東京電力が注意してることを守って下さい。
『炉心融解』でググって間違って飛んできてしまった方も、ここも読んでいって下さいね。σ(゚ー^*)
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