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2011-05-16 22:48:55

測定について

テーマ:福島原発
今回の事故で、個人で放射線測定器を購入される方が増えているように思います。
今更かもしれませんが、放射線測定に関する注意を書いてみます。


【(携帯型)放射線測定器の種類】

①ガイガーカウンター
 正式名称は、 ガイガー・ミューラー計数管 と言います。(以下、GM管と省略)
 電離箱式測定器の一種で、「計数管」と書いてあるとおり本来は放射線の数を数えるための測定器です。

 詳しい説明は Wikipedia にお任せしますが、
 ヘリウムやネオンといった不活性ガスなどを充填した中空の円筒と、その芯に取り付けられた電極から構成され、円筒と芯の間には数百ボルトの電圧がかけられている。
 電離放射線が円筒を通過すると不活性ガスの分子が電離され、プラスイオンと電子を作り出す。円筒内にかけられた高電場のためにこのイオンは陰極に向かって加速され、電子は陽極に向かって加速される。この現象の結果、陰極から陽極に向かって短く強いパルス電流が(雪崩状に)流れ、このパルスを測定・計数することができる。

というものであり、この方法では飛び込んできた放射線のエネルギーの強さは測定できません。

 では何故GM管でもエネルギーの強さ・・・μSv/h といった数値の測定ができるのでしょう?

 それはメーカーが出荷前に、実際の放射性物質を置き、放射線量を測定できる別の装置と一緒に測定し、GM管の示した値が別の装置の値とに等しくなるよう調整をしているためです。(これを『 校正 』という。)

 校正につかう放射性物質は様々(セシウム137、コバルト60など)で、物質(から放出される放射線)によって測定できるエネルギーは異なってくることから、購入したGM管の説明書などから、何によって校正されたのかを知る必要があります。
 現在、最も飛散量が多いと考えられる放射性物質はセシウムですので、購入したGM管がセシウムにより校正されているのであれば、そのGM管が示す数値は、おおよそ正しいと考えられます。

しかし注意点もあります。
GM管の校正は、ガンマ線に対してのみ行われたものです。
ベータ線に対しての校正は行われておりません。
ベータ線に対しては、計数管の名の通り、その個数を測ることしかできません。
(単位:CPM・・・Count Per Minutes)

また、ガンマ線の多くはGM管の測定部を通過してしまいます。
・・・校正では、そうした拾い漏らしたガンマ線の分も統計的に予測して、線量率を表示しているのですね。

ここでベータ線があればどうでしょう?

ベータ線のほとんどはGM管の測定部でカウントされます。
つまり、ベータ線とガンマ線が混在しているような状況では、ガンマ線のみの状況よりも過剰に線量率が計測されてしまうのです。

セシウムの崩壊過程は以前にもお知らせしたとおり、

 セシウム134 → ベータ崩壊 → バリウム134
 セシウム137 → ベータ崩壊 → バリウム137m → ガンマ崩壊 → バリウム137(安定)

なので、確実にベータ線を放出しています。
ベータ線の空気中の飛距離は1m未満とのことですので、1m程度の高さで測定している限り、GM管でベータ線を拾うことはないと思いますが、地表面にGM管を置いて(付属している機種であればベータ線防護キャップを外して)計測すれば、間違いなく高い線量率を示すことになるのです。

このGM管での測定については、早野教授が昨晩ツィートで解説してくださいました。

 β線の窓(ガイガーカウンターでの放射線量の正しい計り方)

リンク先の最初の3つを読めば、すぐに理解できるかと思います。
(読めない方のために画像だけ置いておきます。)


FEDisのニコニコ日記


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②シンチレーションカウンター
 英語そのまんまですが「カウンター」とあるとおり、これも計数管の一種です。

 測定原理は、
 シンチレータと呼ばれるセンサーを電離放射線が通過する際に放出される微細な蛍光を、光電子増倍管と呼ばれる発生した信号の数と振幅を増幅させる装置が測定する。

ものです。(詳細は Wikipedia 参照のこと。)

 シンチレーターとして使用される物質には、NaI(ヨウ化ナトリウム、微量のタリウム添加)やCsI(ヨウ化セシウム)などの固体(蛍光)材料、アントラセン(という有機化合物)を含むプラスチック、そして液体(有機)シンチレーターなどがあります。

 この中で一般的に利用されているのは、NaI(Tl)シンチレーターとなります。

 こちらも放射性物質を用いて校正して販売されています。
我が社でも愛用しているALOKA社のカタログを見ると、やはりセシウム137によって校正されているようです。

 総合カタログ ダウンロード ( PDF )


「放射線測定器 価格」でググってみると、50,000円前後のものはすべてガイガーカウンターですね。Naiシンチレーションカウンターの価格は30万円程度でしょうか?

・・・桁が違いますね。
それだけ放射線量率を測る際の精度が違う、ということです。
そして、個人で購入できるものは、ほぼGM管であろう、ということが推測できます。

上記以外にも「半導体式サーベイメーター」というものもあります。
これはGM管よりも更に小型化ができる反面、電波にも反応してしまうことがあり、携帯電話と同じポケットに入れておいたら、被曝するはずのない箇所で線量を計測していた、ということもあります。


【測定誤差とは・・・】

 上記のように、測定機器によって測定された数値の正確さにはばらつきがあります。
それを平準化するのが校正なのですが、それでも放射線のエネルギーの強弱により、補正が必要な場合があります。
 また、ややこしいことを考える以前に、専門家以外の方による測定には限度があります。
身近なモノで例えてみると・・・

①30cmのモノサシが何本かあるが、並べてみると30cmの長さが微妙にずれている。
 どのモノサシが正しいのか、あるいはすべて間違っているのか判断ができません。
でも数本あれば、30cmの長さがだいたいどれくらいなのか目安を付けることができます。
(平均を取ってもいいかもしれません。)

②先に重りをつけてぶら下がっているゴム紐を、固定せずに①のモノサシで測る。
 モノサシで測ったゴムの長さは、伸びきった瞬間だったかもしれないし、縮んだ状態だったかもしれない。風が吹いていて普段よりも少し伸びた状態かもしれない。また、同じゴム紐でも重りの重さが違えば伸びる長さも変わってきます。

③よく道路で測量をしている光景を目にします。1人が棒を持って立ち、もう1人が測量器(最近のはレーザーを使って超精密)をのぞいて2点間の距離を算出している。
では、同じ地点間を①のモノサシで測ってみましょう。


①の例は、測定器には必ず誤差があり、それを頭に入れておかなければいけない、と言う話。

放射線測定器に当てはめると、『校正』がこれに当たります。
測定された数値に係数をかけることで、正確(に近い)値を得ることが出来ます。

②の例は、測定する対象は一定であるという保証はなく、その都度、いろんな要因により値が変動することがある、ということです。

空間線量率を測定する場合、天候に左右されます。
当然ですが、場所を変えると地面の状態(アスファルトか土か、近くに御影石がないかなど)によって変動しますし、測定する地面からの高さでも変わってきます。(特に前述の「ベータ線を拾ってしまうガイガーカウンター」の場合など。)

③の例は、高精度の機械を使った専門家の測定は、値を目安にすることは出来ても同じマネ(同じ測定結果を得ること)はできない、というお話。

 上記例での2点間の距離が 3m15cm7mm(315.7cm)だったとしましょう。
①のモノサシで測るには2点間を最低でも11回に分けて測らなければいけないので、どうしてもズレが生じますし、そもそも2点間を正確な直線で測っているという保証もありません。
そして、①のモノサシがどれくらい正確なのかは分からないんだから、 こういう行動自体に意味がないと言えます。
でも、逆に考えると①のモノサシで315.7cmに近い数値が測定出来たのなら、その測定方法とモノサシの誤差は少なかった、という可能性もある(測定方法の誤差とモノサシ自身の誤差という2つの要素(パラメータ)がからんでいるので「どちらとも正確だった」とは言い切れない)。

放射線測定に当てはめると、自分がどれだけ正確に測っているつもりでも、測定器自体の誤差やその他のさまざまなパラメータが関与してくるため、専門家による精密測定と同じ値を得ることはほぼ不可能ということです。


【まとめ】

 だらだらと長くなってしまいましたが、極めて個人的な意見としてまとめます。

 正確な量を測るには同一条件で何度も計測し、平均と誤差を算出する必要があります。
 専門家であるはずの文科省や東電の公表資料に誤差が記載されるようになったのは割と最近のこと。それまでは誤差の記載がなかったことから、科学的には参考値としか扱えないものです。

文科省ですらそんな状態だったのですから、個人で放射線量を測定されている方は、一度の測定で何度も測定値を計測していないでしょう。(機種によりますが、1回の測定には1分ほどかかる・・)
これでは平均や誤差を出すこともできないと思いますので、測定値は参考程度に考えられた方がよろしいかと思います。

 また、近所で専門家が測った測定値を公表していれば、ある程度、自分が測定した結果との比較対象になると思いますが、その場合にしても測定方法(地面からの距離)や条件(地面の状態)を一致させておかないと、測定結果を変動させるパラメータが増えすぎて比較対象と出来なくなってしまいます。

また、できるだけ同じ条件で測定するようにしましょう
自分の身体で地表から1mの位置を調べ(僕の場合おへその3cm上)、毎回その位置で測る。
測定場所も毎回同じ地点にしておくと、時系列での増減を観測できます。

僕がグラフにしているのは、そのような箇所のみです。
あちこち測定してみることは目安というよりも興味の範疇であって、あまり意味がない行為だと思います。


『参考程度に測っている』ということは、皆さん承知のうえでのことかと思いますが、老婆心ながらにアドバイスを書いてみました。

長文を読んで頂き、ありがとうございました。
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コメント

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1 ■追記

ガイガーカウンターを見事に間違った使い方で放射線量を測定して、

 「ほ~ら、こんなに高いから危険!」

って言ってるブログを見てしまったので追記。

本文に書いてあることを注意する他、測定時には測定部分をビニール袋で覆いましょう。
そうすることで、放射性物質などを含んだ土などの付着を避けることが出来ます。

逆に、そうしないと次に測定する時に、付着した放射性物質の放射線量まで測定してしまい、どんどん高い値になっていきます。

・・・無知によるデマ拡散って、本人に自覚がない分、余計に怖いよなぁ。(´・ω・`)

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