今日のお話は、柏市の幼稚園で独自に園庭の土を入れ替えた、というお話について。
誤解のないよう、先に書いておきますが、この行動を批判する意図は全くありません。
子ども達のことを思って、みずから行動なさることは、素晴らしいことだと思います。
その点についてはご理解頂いたうえで、僕が気になったことを書こうかと。
この情報は、以下のサイトに掲載されていました。
柏ママの放射線だより
この方の経歴はわかりませんが、放射線に素人だったとすれば、よく勉強なさっていると思います。
また、いたずらに不安を煽るようなこともせず、ヨウ素の半減期は8日だから、
ちょっと気をつければ良いかな
という風に、すごく論理的に考えていらっしゃると思います。
あえて突っ込みどころを探すと、
・セシウムにはセシウム134と137があり、134の半減期は2年(で比較的短命)
・ストロンチウム90はベータ崩壊核種であって、ガイガーカウンター(以下、GM管)では放射線量は
測れない。(そもそもストロンチウムの飛散量は少ない模様)
といったところでしょうか。
それにしても、ここまでオシャレで分かりやすいHPを作られるって、スゴイの一言です。
で、気になった箇所は、このHPの
園庭除去工事その後。
柏市内の私立幼稚園の園長先生が、自費でGM管を購入されて測定なさり、その結果、園庭の土を入れ替える工事をなさったようです。
このGM管は、RADEX1503 というロシア製の簡易測定器で、先日ご紹介した
放射線・放射線測定器のメモ
とその中の「ガイガーカウンターの一覧・価格」と RADEX1503 のメーカーHPを読むと、この機種はベータ線の放射線量は測定出来ないタイプで、どうやらコバルト60で校正しているようです(つまりセシウムのガンマ線も正確には計測できない)。
測定場所の下にカッコ書きで(地表)などと書かれているので、園庭は地上0mで測定されているのでしょう。
その場合、以前日記にも書きましたが、ベータ線による測定誤表示がおこります。
上記「放射線・放射線測定器のメモ」に詳しいことが書いてありますので、そちらのリンクを。
ガイガーカウンターでのβ線測定時の誤った表示について
この RADEX1503 の写真を見ると、全体がプラスチックに覆われていて測定窓がない。
ベータ線は 1cm 程度のプラスチックで遮蔽することができるのですが、この機種のサイズ( 10cm × 6cm × 2.6cm )からすれば、1cmもの厚さのプラスチックで覆われているようには見えません。
・・・あぁ、ググったら分解された写真を見つけました。
うん、ベータ線の遮蔽にはちょっと不十分な感じがしますね。
(GM管を覆っている金属で止められている可能性はありますが・・・)
で、公表されている放射線量を見ると、確かに高いんですがかなり数値にばらつきがあります。
やはり、あまり正確には測定できていない様子が見えます。
それでも土の入れ替えをした後では、効果バツグン!ほぼ自然放射線量レベルに下がったようです。(ヨカッタヨカッタ・・・のかな?)
さて、ここからが本題。
僕が気になったことを挙げていきます。
そもそも土を入れ替えるほど、問題となる数値なのか?
・・・そりゃ、低いに越したことはないでしょう。
でも後述のとおり、土を入れ替えることには別のリスクが発生します。
園児達が、この園庭で毎日4時間遊ぶと仮定しましょう(おそらくもっと短い)。
園庭の平均放射線量を 測定値の高めにとって
0.4 μSv/時間
とします(柏市近辺の測定値はこれ以下ですので、高めに取って妥当かと)。
(参考:東葛地域のおよび千葉市、つくば市の空間放射線量)
すると、園児たちが園庭で受ける放射線量は、
0.4 μSv/時間 × 4 時間 = 1.6 μSv/日
通園日数を 250日 としましょう(これも大きすぎる値だと思います)。
1.6 μSv/日 × 250日 = 400 μSv/年 = 0.4 mSv/年
となります。
ほぼ、バックグラウンドに隠れてしまうような値ですね。
たしかに園庭の土を過って口にしてしまうこともあるかもしれません。
でも、毎日毎日、何グラムもの土を口に入れる訳はないでしょう・・・
それを考慮したところで、将来の健康被害にあう確率は、さほど上昇するものでもありません。
ちなみに、現状では約 0.15 μSv/時間まで減少しているようですので、その数値で計算すると、
150 μSv/年 = 0.15 mSv/年
です。
その差は、たった0.25 mSv/年なのです。
工事した際、土煙の処理は?
このHPでは分からないことですが、工事する際、大量の水を蒔きながら表土を剥がないと、汚染された土が舞い上がり、それを呼吸することでの、体内被曝が問題になりそうです。
更にこのHPにも書かれていますが、プールの清掃をした際、排水溝付近で異常に高い数値が出たとのこと・・・それは放置していて大丈夫なのでしょうか?(下流に流れていくという意味でも)
剥いだ土はどこに行った?
コレが一番気になるところなんですが、福島の小学校で同様のことをした際、受け入れ場所近隣の住民が猛反発しました。
今回のケース、ひっそりと行われたと思いますので、受け入れ側も気づいていないんじゃないでしょうか?
私立だからできること。では公立の幼稚園・保育園では?
柏市をはじめとする東葛地域6市による協議会は立ち上がったばかりで、行政はまだ動いていません。そのような状況では、公立の幼保は動けるわけがありません。(予算の確保すら不可能でしょう。)
安全も危険も、みんな同じく横並びで!
なんて異常な平等主義は申しませんが、一般に公立よりも私立の幼稚園に行かせるご家庭の方が裕福だと認識しています(統計を見たわけではありませんが・・・)
すると、子どもが背負うリスクも親の所得によって変わってくるのか・・・という点で、モヤモヤしたものが残ります。
一義的には、当然行政が責任を持って対処すべき話なのですが、
現状の放射線レベルでは健康に影響を与えるものではない。
というスタンスを取っている以上、行政は動かないわけです。
まぁ、放射線レベルについては前述のとおり僕も同意見な訳ですが、親の不安を払拭させて安心させる義務を、行政は履行していないのは全くもってその通りな訳で、そちらに力を入れるべきだと思うのです。
結局、安全を得る・・・というよりはこの場合、不安を取り除くのはお金なのか・・・と思う訳です。
繰り返しになりますが、この行為自体を批判するつもりは全くありません。
出来ることはしたらいいと思います。
でも、それは過剰反応ではなかったか?
排出された汚染土はどうなったのか?
(まさか、自分の子どもさえよければ、あとはどうなっても・・・なんて思ってないですよね。)
など、振り返って考えることも多くあるんじゃないか、と思った次第です。
いろんな考え方があるとは思います。
子どものためになら、いくらでもお金をかけるべき!
うん、理想はそうだと思います。
でもまずは福島や被災地の復興が優先されるのは仕方がないこと。
・・・福島の学校の放射線量は桁が違いますからね。
できることがあるなら、する。
だからと言って、よそがしたからウチもムリしてでも・・・という必要はないでしょう。
どうか、過剰に心配なさらないよう。
親の心配は子どもに伝播します。
そちらの影響の方が、よっぽど子どもの発育に影響を及ぼす、と個人的に考えています。
誤解のないよう、先に書いておきますが、この行動を批判する意図は全くありません。
子ども達のことを思って、みずから行動なさることは、素晴らしいことだと思います。
その点についてはご理解頂いたうえで、僕が気になったことを書こうかと。
この情報は、以下のサイトに掲載されていました。
柏ママの放射線だより
この方の経歴はわかりませんが、放射線に素人だったとすれば、よく勉強なさっていると思います。
また、いたずらに不安を煽るようなこともせず、ヨウ素の半減期は8日だから、
ちょっと気をつければ良いかな
という風に、すごく論理的に考えていらっしゃると思います。
あえて突っ込みどころを探すと、
・セシウムにはセシウム134と137があり、134の半減期は2年(で比較的短命)
・ストロンチウム90はベータ崩壊核種であって、ガイガーカウンター(以下、GM管)では放射線量は
測れない。(そもそもストロンチウムの飛散量は少ない模様)
といったところでしょうか。
それにしても、ここまでオシャレで分かりやすいHPを作られるって、スゴイの一言です。
で、気になった箇所は、このHPの
園庭除去工事その後。
柏市内の私立幼稚園の園長先生が、自費でGM管を購入されて測定なさり、その結果、園庭の土を入れ替える工事をなさったようです。
このGM管は、RADEX1503 というロシア製の簡易測定器で、先日ご紹介した
放射線・放射線測定器のメモ
とその中の「ガイガーカウンターの一覧・価格」と RADEX1503 のメーカーHPを読むと、この機種はベータ線の放射線量は測定出来ないタイプで、どうやらコバルト60で校正しているようです(つまりセシウムのガンマ線も正確には計測できない)。
測定場所の下にカッコ書きで(地表)などと書かれているので、園庭は地上0mで測定されているのでしょう。
その場合、以前日記にも書きましたが、ベータ線による測定誤表示がおこります。
上記「放射線・放射線測定器のメモ」に詳しいことが書いてありますので、そちらのリンクを。
ガイガーカウンターでのβ線測定時の誤った表示について
この RADEX1503 の写真を見ると、全体がプラスチックに覆われていて測定窓がない。
ベータ線は 1cm 程度のプラスチックで遮蔽することができるのですが、この機種のサイズ( 10cm × 6cm × 2.6cm )からすれば、1cmもの厚さのプラスチックで覆われているようには見えません。
・・・あぁ、ググったら分解された写真を見つけました。
うん、ベータ線の遮蔽にはちょっと不十分な感じがしますね。
(GM管を覆っている金属で止められている可能性はありますが・・・)
で、公表されている放射線量を見ると、確かに高いんですがかなり数値にばらつきがあります。
やはり、あまり正確には測定できていない様子が見えます。
それでも土の入れ替えをした後では、効果バツグン!ほぼ自然放射線量レベルに下がったようです。(ヨカッタヨカッタ・・・のかな?)
さて、ここからが本題。
僕が気になったことを挙げていきます。
そもそも土を入れ替えるほど、問題となる数値なのか?
・・・そりゃ、低いに越したことはないでしょう。
でも後述のとおり、土を入れ替えることには別のリスクが発生します。
園児達が、この園庭で毎日4時間遊ぶと仮定しましょう(おそらくもっと短い)。
園庭の平均放射線量を 測定値の高めにとって
0.4 μSv/時間
とします(柏市近辺の測定値はこれ以下ですので、高めに取って妥当かと)。
(参考:東葛地域のおよび千葉市、つくば市の空間放射線量)
すると、園児たちが園庭で受ける放射線量は、
0.4 μSv/時間 × 4 時間 = 1.6 μSv/日
通園日数を 250日 としましょう(これも大きすぎる値だと思います)。
1.6 μSv/日 × 250日 = 400 μSv/年 = 0.4 mSv/年
となります。
ほぼ、バックグラウンドに隠れてしまうような値ですね。
たしかに園庭の土を過って口にしてしまうこともあるかもしれません。
でも、毎日毎日、何グラムもの土を口に入れる訳はないでしょう・・・
それを考慮したところで、将来の健康被害にあう確率は、さほど上昇するものでもありません。
ちなみに、現状では約 0.15 μSv/時間まで減少しているようですので、その数値で計算すると、
150 μSv/年 = 0.15 mSv/年
です。
その差は、たった0.25 mSv/年なのです。
工事した際、土煙の処理は?
このHPでは分からないことですが、工事する際、大量の水を蒔きながら表土を剥がないと、汚染された土が舞い上がり、それを呼吸することでの、体内被曝が問題になりそうです。
更にこのHPにも書かれていますが、プールの清掃をした際、排水溝付近で異常に高い数値が出たとのこと・・・それは放置していて大丈夫なのでしょうか?(下流に流れていくという意味でも)
剥いだ土はどこに行った?
コレが一番気になるところなんですが、福島の小学校で同様のことをした際、受け入れ場所近隣の住民が猛反発しました。
今回のケース、ひっそりと行われたと思いますので、受け入れ側も気づいていないんじゃないでしょうか?
私立だからできること。では公立の幼稚園・保育園では?
柏市をはじめとする東葛地域6市による協議会は立ち上がったばかりで、行政はまだ動いていません。そのような状況では、公立の幼保は動けるわけがありません。(予算の確保すら不可能でしょう。)
安全も危険も、みんな同じく横並びで!
なんて異常な平等主義は申しませんが、一般に公立よりも私立の幼稚園に行かせるご家庭の方が裕福だと認識しています(統計を見たわけではありませんが・・・)
すると、子どもが背負うリスクも親の所得によって変わってくるのか・・・という点で、モヤモヤしたものが残ります。
一義的には、当然行政が責任を持って対処すべき話なのですが、
現状の放射線レベルでは健康に影響を与えるものではない。
というスタンスを取っている以上、行政は動かないわけです。
まぁ、放射線レベルについては前述のとおり僕も同意見な訳ですが、親の不安を払拭させて安心させる義務を、行政は履行していないのは全くもってその通りな訳で、そちらに力を入れるべきだと思うのです。
結局、安全を得る・・・というよりはこの場合、不安を取り除くのはお金なのか・・・と思う訳です。
繰り返しになりますが、この行為自体を批判するつもりは全くありません。
出来ることはしたらいいと思います。
でも、それは過剰反応ではなかったか?
排出された汚染土はどうなったのか?
(まさか、自分の子どもさえよければ、あとはどうなっても・・・なんて思ってないですよね。)
など、振り返って考えることも多くあるんじゃないか、と思った次第です。
いろんな考え方があるとは思います。
子どものためになら、いくらでもお金をかけるべき!
うん、理想はそうだと思います。
でもまずは福島や被災地の復興が優先されるのは仕方がないこと。
・・・福島の学校の放射線量は桁が違いますからね。
できることがあるなら、する。
だからと言って、よそがしたからウチもムリしてでも・・・という必要はないでしょう。
どうか、過剰に心配なさらないよう。
親の心配は子どもに伝播します。
そちらの影響の方が、よっぽど子どもの発育に影響を及ぼす、と個人的に考えています。
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1 ■同じことを
先日、放医研に行く機会があり、研究者の方々と雑談をしていたら、全く同じことをおっしゃっていました。
親の心配は子どもに伝播し、そちらの影響の方が、よっぽど子どもの発育に影響を及ぼす、と。過剰にならず普通に育ててくださいと何度も言われました。
洗濯物を外に干していいか?→全く問題ない、ホットスポット在住だけど引越し必要か?→呆れられて苦笑(確かに他の地域に比べると少し値が高いかもしれないけど、全く問題ない値です)
うん、確かに私は過剰になってるな。あらためて思いました。