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【社会】

痛くない注射針 蚊の「七つ道具」ヒント 関西大試作

 蚊に血を吸われても気付きにくいことをヒントに、痛くない注射針を作る研究を関西大システム理工学部(大阪府吹田市)の青柳誠司教授(メカトロニクス学)のチームが進めている。

 糖尿病の患者らは血糖値を測るため一日に何度も採血する必要があるが、その痛みが大きな負担となっている。チームは、針を備えた口の“七つ道具”を蚊が巧みに操っていることを解明し、試作針の作製に成功した。

 医療機器メーカーは痛みの小さい太さ二百マイクロメートル(マイクロは百万分の一)の極細針を開発しているが、青柳教授は「完全に無痛ではない」と話す。そこで目を付けたのが蚊だ。

 雌は動物の血管から一分以上にわたり血を吸うが痛くない。麻酔物質を分泌しているとの説もあるが針を刺した直後でも痛くなく、何か理由があると直感した。殺虫剤メーカーから実験用の蚊をもらい、温度や二酸化炭素(CO2)量を制御できる装置と、一秒間に千枚撮影できる高速度カメラで、砂糖水を含んだ寒天に針を刺す様子を詳細に観察した。

 すると、上唇、下唇、咽頭、二つずつある大顎と小顎という“七つ道具”を駆使していた。のこぎり状のギザギザの歯がある小顎を細かく振動させて皮膚に穴を開け、針状の上唇を差し込み血を吸う。下唇がこれらを支え、咽頭からはかゆみのもととなる体液が分泌される。

 チームは、幅一五マイクロメートルの小顎と直径三〇マイクロメートルの上唇をシリコンで再現。ギザギザの歯を持つ小顎針を一秒間に三十回振動させると、歯のない針を振動させずに刺すのに比べ、必要な力が三分の一になった。実用化に向け、体内で折れても無害な樹脂製の針も試作。中空の上唇針で血液成分を吸い上げることに成功した。

 青柳教授は「普通の針とは痛みの種類が違うが、試作針もまだ少し痛い。生き物の職人技を参考に無痛針を開発したい」と意気込んでいる。

 

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