古川氏の本日のブログを引用します。
http://superlife.at.webry.info/200905/article_16.html
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
続々とお祝のメールが届いています。
応援していただいた皆様、ありがとうございました。
さて、最初に判決の主文だけ速報いたしましたが、専門用語が多く分かりにくかったのではないかと思います。そこで、判決の詳細について紹介したいと思います。
判決は、表紙が
平成21年5月28日判決言渡 同日原本領収 裁判書記官 ****
平成20年(ネ)第5938号 損害賠償等請求事件(原審・東京地方裁判所平成19年(ワ)第4736号)
口頭弁論終結日 平成21年2月24日
と始まり、そのすぐ下に控訴人(古川修)、同訴訟代理人、被控訴人(友里征耶こと****)、同訴訟代理人の情報が記述されていて、そして、主文が掲載されています。
そして、「事実及び理由」が続いていて、27ページにわたって記述してあり、その後は証拠が添付されていて、全部で52ページの分厚いものです。
「事実及び理由」は、
第1 当事者の求めた裁判
第2 事案の概要
第3 当裁判所の判断
と3章の構成となっています。
「第3 当裁判所の判断」のなかの、「2 争点(1)(本件記事の名誉毀損性)について」以降を紹介いたします。
------------------------------------------------
2 争点(1)(本件記事の名誉毀損性)について
(1)控訴人の料理評論家としての活動と評価
前期前提事実及び前期1(1)の認定事実によると、控訴人は、芝浦工業大学システム工学部機械制御システム学科教授を務める傍ら、日本酒と料理の相性、美味しい食材・調理法の探究など、美味しいものの原理・原則、本質を究める研究をし、自ら日々実践し、社団法人おいしさの科学研究所の顧問を務め、「蕎麦屋酒」、「世界一旨い日本酒」を出版しているほか、NHKや雑誌「dancyu」、「男の隠れ家」、「ダカーポ」、「週刊現代」、「サンデー毎日」などの媒体でジャーナリストとして活躍し、コラムサイト「ハイハイQさんQさんデス」においてインターネットコラム「私のスーパーグルメ術 口で言うより舌で勝負」を連載し、雑誌にも顔写真入りで度々料理に関する記事を取り上げられていることが認められる。
上記控訴人の活動内容に照らすと、控訴人は、本業が大学教授であり、料理に関する活動が趣味の程度に止まるにすぎないと言い切ることはできず、料理の評論家として社会活動し、その活動内容に関して一定の社会的評価を受けているものと認められ、同社会的評価を低下させる場合は、名誉毀損に該当すると認めるのが相当である。
(2)新聞等に記載された記事が特定の人の社会的評価を低下させてその名誉を毀損するか否かを判断するについては、当該記事がたとえ精読すれば別個の意味に解されないことはないとしても、一般読者の普通の注意と読み方を基準として解釈した意味内容に従うと、その人の社会的評価を低下させる場合は、名誉毀損に該当すると判断すべきである(最高裁昭和31年7月20日・民集10巻8号1059頁)。
前期1の認定事実によると、本件記事は、被控訴人が日刊ゲンダイ誌上において「行っていい店わるい店」というコラムの連載41回目の記事として掲載されたもので、被控訴人が飲食店の評価を加えた連載記事の一部であり、その表題も「恐怖の自腹グルマン友里征耶の行っていい店わるい店」と記載され、その小見出しも、本件店である「銀座こびき」という名称を中央に配置し、「ただの居酒屋を絶賛するな」、「中庸なタネ質を中庸な調理レベルで提供」と記載していることから、本件記事の主題及びその趣旨については、本件店の料理や酒の評価に関する記事であることが認められる。そして、本件記事の3段目7行目から10行目にかけての「この『銀座 こびき』も不自然に絶賛していたので、その検証に訪問しました。」以降の記載内容については、「天才漁師の鱸は成熟しすぎてパサパサ。」、「マツタケフライも口中に溢れる香りなんかありません。おそらく丹波ものなどと比較したことがないのでしょう。すべてが居酒屋料理の範疇ですから、傑出するものなし。」、「〆に絶賛の握り寿司も食べましたが、生姜は甘すぎ、酢飯もダメでバランス非常に悪し。」などと非控訴人が本件店で出された料理等の具体的な感想や評価が記載されていることが認められる。
しかし、本件記事の1段目冒頭から3段目5行目から6行目にかけての「その罪は重いというもの。」までの記載は、冒頭から「勘違いは料理人に限ったことではありません。たまにマスコミに露出する古川修氏もしかり。」などと控訴人の実名を掲げ、「東大工学部を卒業し、ホンダに勤めて芝浦工業大学の教授に就任した自称食通であります。」などと控訴人の具体的な職歴や現在の職業までも記載し、控訴人について「思い込みの激しい年配の『副業ヨイショライター』で」、「何の検証もなく垂れ流しまくる『癒着ライター』でもあります。」、「いわゆる『井の中の蛙』状態なのです。」、「教授となって『先生』と祭り上げられた古川氏が、経験の浅さを自覚せずに普通のレベルの店や食材を読者に薦めるから、その罪は重いというもの。」などと記載され、一般読者の普通の注意と読み方を基準として上記記載部分を読むと、専ら控訴人を攻撃して批判することに終始している内容となっていることが認められる。これを具体的にみれば、以下のとおりである。
ア 「副業ヨイショライター」との記載について
上記記載は、客観的に評価すべき飲食店でもなく、評価するような美味しい料理でもないにもかかわらず、あえて意図的に持ち上げて過大評価し、そのようなことを常に行っているライターであると読みとれるものと認められ、控訴人が上記のような活動を行っている評論家ないし執筆者であるという事実を摘示するものである。
イ 「何の検証もなく垂れ流しまくる『癒着ライター』」との記載について
「癒着」という言葉は、比喩的に、本来関係のない者同士が深く結び合うことを意味し、一般に「官界と財界の癒着」などとして使用されるものであるところ、本件記事では、上記記載の前に、控訴人が日本酒、蕎麦、和食の料理に関するライターであることを指摘し、「鱸や鯛、若布を扱う村公一氏を日本一の漁師と煽り、西崎ファームの鴨、『秋鹿』や『宗玄』といった日本酒の宣伝文句を何の検証もなく垂れ流しまくる『癒着ライター』でもあります。」という文脈で中でそれが使用されていることから、控訴人が、漁師である村公一氏や鴨を扱っている西崎ファーム、あるいは『秋鹿』や『宗玄」といった日本酒の業者などと癒着し、上記業者らに特別待遇や見返りなどを受け、それゆえに、上記の人物や業者が扱っている魚、鴨、日本酒などを、何も検証を経ることなく、そのまま無条件に誉めて「垂れ流すように」執筆するライターであるとの事実を適示しているものと読みとれる。
ウ 「井の中の蛙」との記載について
被控訴人は、本件記事において、「理工系の先生や学生、そしてメーカーは上から下まで世に言うグルメ、食に拘る外食好きは皆無に近い。周りは素人同然ですから、誰でもちょっと外食巡りをして蘊蓄を語れば『グルメ』と評判になるのです。いわゆる『井の中の蛙』状態なのです」と記載している。
上記記載については控訴人が「ホンダ」というメーカーに勤務し、「芝浦工業大学の教授」であると記載していることを前提に指摘しているもので、控訴人は、理工系の先生、学生、メーカーらの外食に関して素人に囲まれているので、ちょっと外食巡りをした経験を語るだけで「グルメ」と評判になっているにすぎず、そのような人物であり、また料理の評価もその程度にすぎず、広い見識を持たず、独り善がりになっていると指摘していると読みとれる。
エ 「罪は重い」との記載について
被控訴人は、本件記事において、「教授になって『先生』と祭り上げられた古川氏が、経験の浅さを自覚せずに普通レベルの店や食材を読者に薦めるから、その罪は重い」と記載している。
上記記載は、控訴人が「芝浦工業大学の教授」であると記載し、しかも理工系の先生、学生、メーカーらの外食に関して素人に囲まれてて「『井の中の蛙』状態」になっているとの文脈に続くもので、控訴人は、教授になって「先生」と祭り上げられ、経験の浅さを自覚しないまま普通のレベルの店や食材を美味しい店等として読者に勧めている軽率な人物であり、そのような軽率な活動をして、読者に飲食店や食材を勧めていること自体が責任が重いと読みとれるものである。
以上を総合して、一般読者の普通の注意と読み方を基準としてみれば、本件記事は、控訴人は、周りより少し多く外食巡りをしたというだけで、グルメであるかのように振る舞い、客観的に評価すべき飲食店でもなく、評価するような美味しい料理ではないにもかかわらず、あえて意図的に持ち上げて過大評価をし、また、食材を提供する業者等と癒着して、特別待遇や見返りなどを受け、それゆえに、その業者等が扱っている食材等を何も検証を経ることなく、そのまま無条件に誉める記事を執筆し、これを垂れ流しているライターであり、経験の浅さを自覚しないで、普通のレベルの店や食材を美味しい店等として読者に薦めているいる軽率な人物であるとの印象を一般読者に与えるに至るものと認められるものであって、控訴人の食の評論家としての社会的評価にとどまらず、大学教授としての評価をも低下させるものというべきである。
なお、控訴人は①「勘違い」との記載、②「すべてが居酒屋料理」及び③「宗玄」に関する記載についても、控訴人の名誉を毀損するものであると主張するが、本件記事全体を読むと、上記①の記載部分は、控訴人が本件店の料理を絶賛していたので、被控訴人が「検証」のために同じ料理を食べてみたが、そのような評価をすべきものではなかったことから、控訴人の本件店の料理に関する評価については、「勘違い」をしていると指摘していると容易に読み取ることができ、また、上記②の記載については、控訴人の評価とは異なるという内容を記載しているにすぎないと認められるのであって、これらによって控訴人の社会的評価が低下するとまでは認め難い。さらに上記③の記載は、「宗玄」という日本酒自体、あるいは、その醸造元を批判する内容となっているものであり、これによって、必ずしも「宗玄」を推奨している控訴人の社会的評価が低下するとはいえない。
3.争点(2)(意見ないし論評としての違法性阻却)について
(1)被控訴人は、本件記事の内容は本件店ないしその料理についての被控訴人の意見ないし論評であるところ、公共の利害に関する事実に係るものであり、公益を図ることが目的であること、本件で、本件記事における意見ないし論評の前提となった事実が真実であること、意見ないし論評の域を逸脱しているもではないことから、本件記事に名誉毀損が認められても、違法性を欠くと主張する。
(2)ア そこで検討するに、既に説示したとおり、本件記事の1段目冒頭から3段目5行目から6行目にかけての「その罪は重いというもの。」までの記載に関しては、本件店の料理の評価とはかけ離れて、控訴人の実名、学歴、食歴、現在の職業を記載しながら、直接本件店の料理の評価とは関連しない「ヨイショライター」、「癒着ライター」、「『井の中の蛙』状態」、「教授になって『先生』と祭り上げられた古川氏」などと激しい表現で控訴人を非難攻撃する内容となっており、一般読者の普通の注意と読み方を基準としてみると、この記載部分をもって、本件の料理に関する意見ないし論評であるにすぎないと読み取ることは困難であり、むしろ、本件記事の上記記載部分は、前期2(2)で指摘したアないりウの各事実を適示し、料理に関する論評という本件記事の主題を離れて、控訴人の食の評論家としての手法、力量等を非難攻撃するものと認めるほかなく、仮に意見ないし論評の趣旨が含まれるとしても、意見ないし論評の域を逸脱するものといわざるを得ない。
イ 進んで、前期2(2)で指摘したアないしウの事実の適示が公共の利害に係わり、公益を図る目的に出たものかをみるに、本件記事の上記記載部分は、控訴人が本件店の料理を絶賛したことに関連して、そのような評価は、控訴人が「ヨイショライター」、「癒着ライター」であることの証であり、「井の中の蛙状態」なので、勘違いをしているという内容となっており、要するに、本件店の料理の評価をして、食の趣味・趣向に関する情報を読者に提供するというものであり、これをもって、公共の利害に係るもので、公益をはかる目的にだたものと認めることはできない。
ウ さらに、被控訴人は、本件記事が意見ないし論評に当たることを前提に、その意見ないし論評の前提となった事実は、証拠(甲4の2、7の1ないし4、25の1・2、29の3、乙9の4・5、丙2ないし9)から、いずれも事実であるとも主張しているが、本件記事の前期ア記載の部分が意見ないし論評の域を逸脱するものであることは、前期アで説示したとおりであるから、被控訴人の主張はその前提を欠くものである。
エ そこで、前期2(2)で指摘したアないしウの各事実が真実であることの証明があるか否かについて検討するに、被控訴人主張の上記証拠の一部から、控訴人のコラム「私のスーパーグルメ術」等において、控訴人が漁師の「村公一」氏の扱う魚や西崎ファームの鴨、「宗玄」「秋鹿」という日本酒を庄さんしている事実が認められるものの、このことは本件記事で記載している、前期2(2)のイの適示事実、すなわり、控訴人が漁師である村公一氏や鴨を扱っている西崎ファーム、あるいは『秋鹿』や『宗玄』といった日本酒の業者などと癒着し、上記業者らに特別待遇や見返りなどを受け、検証を経ることなく、そのまま無条件に誉めて執筆するライターであるとの事実の真実性を裏付けるものではなく、他にその真実性を認めるに足る証拠はない。
また、前期2(2)のア、ウ及びエの適示事実、すなわち、客観的に評価すべき飲食店でもなく、評価するような美味しい料理ではないにもかかわらず、あえて意図的に持ち上げて過大評価し、そのようなことを常に行っているライターであるとの事実等に関しても、その真実性を認めるに足りる証拠はない。
被控訴人は、上記各適示の事実を真実と信じたことにつき相当な理由があったことについては、何ら主張、立証うぃない。
オ したがって、本件記事の執筆、掲載について違法性が阻却されるとの被控訴人の前期(1)の主張は採用することができない。
4.争点(3)(損害)について
前期前提事実及び前期1の認定事実によると、控訴人は、内閣総理大臣発明賞を受賞し、芝浦工業大学システム工学部の教授を務める傍ら、料理や日本酒の分野においても、社団法人おいしさの科学研究所の顧問を務め、「蕎麦屋酒」、「世界一旨い日本酒」を出版し、NHKや雑誌「dancyu」などの媒体でジャーナリストとして活躍し、インターネットコラム「私のスーパーグルメ術」を連載するなど社会的地位を有して活動していることが認められる。
そして、本件記事による名誉毀損の事実は、あえて、控訴人の実名と「東大工学部を卒業し、ホンダに勤めて芝浦工業大学の教授に就任し」などと控訴人の経歴、職歴及び現在の職業を指摘しるる、「たまにマスコミに露出する古川修氏」は、「思い込みの激しい年配の『副業ヨイショライター』で、」「何の検証もなく垂れ流しまくる「癒着ライターで」、「いわゆる『井の中の蛙』状態」であり、「教授となって『先生』と祭り上げられた古川氏が、経験の浅さを自覚せずに普通のレベルの店や食材を読者に薦める」「罪は重い」などと激しい表現で、控訴人を非難攻撃している内容であり、しかも、業者らと「癒着」していることを指摘することで、料理評論家としての社会的評価のみならず、大学教授としての社会的評価も低下させる内容となっている。
また、本件記事は、一般人が広く購読する「日刊ゲンダイ」という雑誌に掲載されたものであり、被控訴人は、本件記事と同じ内容を被控訴人のホームページ上の「友里征耶 店評価」と題するブログで転載していることから、本件記事の伝搬力は相当高いものと認められる。
以上から本件記事による名誉毀損の程度やこれによる控訴人の精神的な苦痛は軽視できないものと認められる。
一方、本件記事は、従前から控訴人と被控訴人がシェリー論争などをして、酒や料理などの評価に関しての争いがあったことを背景に、控訴人が本件店で超美食会を開催し、その際、本件店の料理や日本酒を絶賛したところ、被控訴人が現実に同じものを飲食し、それ程でもなかったとして、「ただの居酒屋を絶賛するな」という主題で書かれたものであることが認められ、控訴人の個人攻撃のみを終始記載しているものではない。また、被控訴人は、一般読者の立場で自腹で取材するという「匿名自腹取材方式」を採用し、辛口の論評をして、それが一般読者の立場からの論評として読者からの支持を得ているという事情があり、そのような辛口の方針が、行き過ぎではあるとしても、本件記事に反映されていることも認められる。
以上の諸事情を総合すると、被控訴人がその後本件記事に関する内容を被控訴人のブログで反復継続して書き込んでいることを考慮しても、本件記事による名誉毀損によって控訴人の精神的苦痛を慰謝するには、その損害額を80万円と認めるのが相当である。また、上記額の約1割に相当する10万円が相当因果関係のある弁護士費用としての損害と認められる。
5.争点(4)(名誉回復措置の必要性)について 省略
6.以上の次第で、控訴人の請求は、慰謝料80万円及び弁護士費用10万円の合計90万円及びこれに対する平成19年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを求める理由があるから、同限度で認容し、その余の請求は理由がないから棄却すべきである。
よって、これと異なる原判決を主文第2、3項のとおり変更することとし、主文のとおり判決する。なお、本件では仮執行宣言を付することは相当ではないため、付さないこととする。
東京高等裁判所第19民事部
裁判長 青柳 馨
以下略
----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
明確な名誉毀損ですね。と言うか、名誉毀損以外の何物でもありません。
友里氏は、自らのブログで、以下の様にうそぶいていた。
「ずこ」さんは法律用語に詳しくないようです。逆転勝訴ではなく、「一部棄却」ですね。
一審の「完全勝訴」はなくなりましたが、1100万円の請求でしたから90万円の支払いということは、9/10以上友里の勝訴と言うと、また「負け惜しみ」と言われますか。
謝罪文の掲載要求など90万円以外は全部棄却のようですし。
「一部棄却」って、何ですか? 「一部棄却」と言う判決なの?
いいえ、友里氏が「名誉毀損裁判に敗訴した」以外には、如何なる解釈もできませんよ。
友里さん、法律も全然分かってないのに、「知ったか振り」は、頂けません(笑)。
P.S.
青柳馨裁判長、ナイス判決。まさに、グッジョブ!!(笑)
最近のコメント