完璧なキャスト、絶妙のチームワーク
『キイハンター』は当初、丹波哲郎・野際陽子・千葉真一・谷隼人・大川栄子の5人のメンバーでスタートした。後に川口浩が加入。この6人に、国際警察
特別室メンバーの仲谷昇・中丸忠雄・宮内洋の3人を加えた9人が栄光の『キイハンター』レギュラー陣である。
丹波哲郎が演じる黒木鉄也は、元・諜報部員でキイハンターのボス。その存在感は抜群で、丹波は『キイハンター』の後も『アイフル大作戦』『バーディ大作戦』『Gメン'75』と、TBS土曜夜9時のアクションドラマシリーズの顔として、活躍を続けていくことになる。
野際陽子が演じる津川啓子も、黒木と同じく元・諜報部員という設定。スタイリッシュかつセクシー、時にコミカルな面も見せる啓子は、まさに野際のハマり役だったと言えよう。
そして、なんといっても本作品では、風間洋介役の千葉真一が体当たりで演じたアクションの数々が強烈な印象を残している。その凄まじさは、是非映像で確認していただきたい。
吹雪一郎役の川口浩は、放映2年目からレギュラー入り。川口というと「探検隊」のイメージが強いかもしれないが、本作品での二枚目ぶりも、なかなかの
ものである。
島龍彦役の谷隼人、谷口ユミ役の大川栄子、さらに本作品が実質的なデビュー作となる特別室・壇俊介役の宮内洋の3人は、若手レギュラーとしてフレッシ
ュな魅力を放った。一方、特別室・小田切慎二役の中丸忠雄は、アダルトなイメージで作品に重厚感を与えている。
特別室・村岡室長役の仲谷昇を含めたレギュラー9人が揃うことは、ほとんどない。毎回、レギュラーの中の数名が登場してストーリーが展開していくのが『キイハンター』の特徴であり、「今週は誰が活躍するのか?」という興味も作品のポイントだったと言える。それだけ各キャラクターが魅力的だったわけで、劇中で彼らが見せる絶妙のチームワークは、当時の視聴者の憧れの対象となっていたのである。
バラエティ豊かなエピソード、変幻自在の世界観
早い話、『キイハンター』は「なんでもアリ」のドラマである。もちろん基本はいわゆる<スパイアクション>であるが、毎回視聴者を飽きさせないような工夫が凝らされており、どのエピソードも全く油断ができない面白さなのだ。今回のセレクションでは、そういったことを念頭に置き、『キイハンター』という番組の振り幅の大きさを感じられるようなエピソードをチョイスしてみた。
第27話&第28話は、当時まだ返還前だった沖縄にロケを敢行した前後編。第60話は、新メンバー吹雪一郎の登場編である。
第105話は、記念すべきカラー化第一作。第109話は本作品の定番要素の一つ、西部劇編で、子役時代の真田広之(当時:下沢宏之)もゲスト出演しているので、注目されたい。
第120話、第161話&第162話、第225話といったあたりは千葉真一主演のアクション編であり、ロープウェイ宙吊りや、走る列車の上での格闘など、伝説化しているアクションの数々が堪能できる。
第132話は、アクションと社会派ストーリーをバランス良く見せる、本作品らしい一作。第140話は、オムニバス仕立ての異色エピソードだ。第135話や第171話なども、そのタイトルから推測できる通り、異色作と言って良いだろう。
第154話は常連ゲストのジェリー藤尾、玉川良一を迎えたコメディ編。第168話は、これも定番要素の任侠映画パロディ編だ。
第185話は、キイハンターたちの休日を描いた、番外編的な一作。第196話は元日に放映された特別編で、これも本作品定番の空中アクションが存分に盛り込まれている。そして第210話は、幻の“10人目のレギュラー”滝裕二(演:沖雅也)の登場編だ。
これらに第1話と最終回を加えた20話が、今回のDVD-BOXに収録されている。まだまだ本作品には傑作、快作が豊富に存在するが、まずはこの20話で、キイハンターたちの変幻自在の活躍を楽しんでいただければ幸いである。

丹波哲郎/野際陽子/千葉真一/谷 隼人/大川栄子/川口 浩
仲谷 昇/中丸忠雄/宮内 洋 ほか
| 監督: |
深作欣二/村山新治/佐藤 肇/鷹森立一/竹本弘一
山内 柏/小西通雄 |
脚本:高久 進/池田雄一/近藤 正/小山内美江子 ほか
音楽:菊池俊輔
制作:TBS、東映
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