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ワンセグでもNHK受信料は払わなければならないか

プレジデント 12月24日(土)10時30分配信

■見せしめで法的手段に出る

 現在の受信料は、各種割引制度があるので一概には言えませんが、地上契約のみが1345円、衛星契約を含むと2290円(いずれも月額換算)となっており、これを2カ月単位で支払うのが原則となっています。
 しかし、テレビをほとんど観ることのない人にとっては、月額1000〜2000円以上の受信料負担について、理不尽さを感じている方も多いはずです。

 放送法第64条は、NHKの放送を受信することができる設備を設置すれば、NHKと契約、つまり受信料を支払わなければならないと定めています。「NHKを決して観ない」人であっても、法律上は支払う義務が生じてしまうのです。また、自宅にテレビがなくても、(テレビが視聴できる)ワンセグ機能が付いた携帯電話やパソコンを持っている人は、「受信設備」を有しているということで、支払う義務を同様に負っています。ただし、その携帯電話やパソコンが会社支給の場合には、仮に支払うとなれば、受信料は会社が支払うことになるでしょう。なお、受信契約は原則として世帯単位で行われていますので、自宅のテレビで受信料を支払っている場合には、携帯電話やパソコンが個人所有のものであっても、現在は受信料を別途支払う必要はありません。

 では、実際に支払わないとどうなるのでしょうか。
 現実問題として、NHKの番組を観ていながら、受信料を払っていない人はたくさんいます。とりわけ、自宅にテレビを置いておらず、ワンセグ機能の付いた携帯電話でNHKを観ている人は数多くいるでしょう。また、何十個以上もある部屋ごとに受信契約をさせられると多大なコスト増となる関係上、支払いを拒否するケースもホテル経営などでは結構あります。

 NHKの受信料は支払わなくても刑事上の罰則規定がありません。また、支払わないからといって、NHKが直ちに民事上の法的手段に訴えることもまずありません。あくまで経済的合理性と世論の動向を気にしながら、悪質なケースに限って訴えているのが実態です。結局、NHKも事実上の会社組織なのですから、こうしたことをふまえ、交渉する余地は大いにあるといえるのです。
 仮にホテルの支配人がNHK受信料について私のもとへ相談に来たとしたら、まずはホテルの客室の稼働状況を聞き取ります。
 私が「どのくらい客室は埋まっていますか」と聞いて、支配人から「なかなか厳しいご時世で最近稼働率が半分にも達していない時期が多いのです。客室は、全部で100近くもあるので、100室×2000円×12カ月=240万円近くも払わねばならず、このままでは倒産してしまいますよ」という回答を引き出します。
 そこで、NHKとのやり取りになるわけです。もちろん弁護士が介在しなくてもいいので、ご自身で交渉するのもいいでしょう。

 建前ではテレビなどが設置された場所、つまり部屋ごとに支払うことになっていますが、水面下でうまく話をまとめて、実際に稼働している60台分の料金にしてもらうのがよいでしょうか。
 NHKも法的手段に出て最高裁まで争うよりは、適当な相場で相手の懐具合を見ながら妥協する道を会社組織は選びます。事業所契約の場合、こちらが作戦を練る一方、NHK側も相当なノウハウを有しており、こちらが1円も払わないと言ったらNHKの担当者の逆鱗に触れる以上、受信料を払うつもりはあるが経営がよくないので払えないと主張し、ズルズルっと話を持っていって折り合いをつけるのです。

 では、個人で支払いを拒否した場合はどうなるのでしょうか。
 NHKは年間何十件ないし数百件単位で、事実上の見せしめとして支払督促その他の法的手段を遂行しているそうです。現在の法律上はNHKに分があるので、訴えられたらまず勝てません。とりわけ、一度は契約、つまり支払いに応じたのに途中から拒否したケースは、対象者が特定しやすいこともあって、狙われる傾向にあるようです。


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弁護士
野澤 隆

渡瀬裕哉=構成

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最終更新:12月24日(土)10時30分

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