東日本大震災の被害が最も大きかった東北3県の沿岸部自治体で、身体、知的、精神の各障害者手帳の所持者に占める犠牲者の割合は約2%に上り、住民全体の死亡率に比べ2倍以上高かったことが、毎日新聞の調べで分かった。多くの犠牲者は自宅など施設以外の場所にいて、移動が困難だったり状況を把握できず津波から逃げ遅れたとみられる。障害者が抱える災害時のリスクをどう減らすかが改めて問われている。
調査は10月、3県の沿岸部のうち犠牲者が出た35市町村を対象に実施、33市町村(宮城14、岩手9、福島10)が回答した。仙台市と岩手県陸前高田市は「障害者の死者数を把握できない」として数値の回答はなかった。33市町村の死者は計1万3619人で、全体に占める割合は約0.9%。身体、知的、精神の各障害者手帳の所持者(計7万6568人)に限ると犠牲者は1568人で、死亡率は約2%に達していた。
障害者が亡くなる率が特に高かったのは宮城県沿岸部。599人の障害者が亡くなった石巻市は7.4%に上った。538人は身体障害者で、うち256人が肢体不自由だった。視覚障害者と聴覚障害者もそれぞれ30人以上亡くなった。市障害福祉課は「施設入所者やデイサービスを受けていた人たちの死亡例は、ほとんどなかった。自力で動けなかったり、津波が迫るのが分からず自宅などで逃げ遅れたケースが多かった可能性がある」と指摘する。
宮城県女川町では75人の障害者(身体69人、知的4人、精神2人)が犠牲になり、死亡率は14%に達した。このほか同県南三陸町(8.2%)、岩手県山田町(5.4%)、福島県新地町(3.9%)などの死亡率が高かった。【野倉恵】
藤井克徳・日本障害フォーラム幹事会議長の話 障害者がいかに過酷な現実にさらされたかを示す数字だ。この現実を直視せずに社会保障制度や復興策の議論を進めることはできない。国が責任を持って詳細な実態を調査すべきだ。
毎日新聞 2011年12月24日 0時03分