日経エコロジーリポート

「ミクロの石棺」が作用?

 ミニ水田に入れたのは、ゼオライトやケイソウ土など微生物が好みそうな素材だ。その結果、能登で採取したケイソウ土を入れたミニ水田が100cpm(シーピーエム:1分間の放射線を示す単位)近くに下がった。1カ月前(200〜300cpm)に比べ半減している。

 この土壌を顕微鏡で調べたところ、糸状菌と呼ぶ細長い微生物が繁殖し、生体膜の内側に多量の鉱物粒子が付着していた。同じ現象は原発事故後のチェルノブイリ周辺でも確認された報告がある。

 微生物が代謝によって鉱物で覆われていく現象を生体鉱物化作用という。田崎教授はこの作用でできた鉱物塊を「ミクロの石棺」と呼ぶ。「放射性セシウムがミクロの石棺に取り込まれることで、何らかの作用で放射線量が下がったのではないか」と考えている。

 この水田の土壌に含む微量元素を分析したところ、通常の値を超える1kg当たり447mgの大量のバリウムを検出した。放射性セシウムが放射線を出し続けると最終的にバリウムになる。実験結果からは、微生物の代謝が放射性セシウムからバリウムへの転換を早めたとも推論できる。こうした見方を「生体内核変換」と呼び、少数ながら報告例がある。だが、現在の物理学ではあり得ないため、議論の対象にさえなっていない。

 田崎教授は、「メカニズムは不明だが、ケイソウ土に線量を下げる効果があることは分かった。今後の除染に応用できる」と話す。

 田崎教授の実験に協力した庄建技術の高橋正則技術部長は、「実験結果を巡っては懐疑的な声も含め様々な見方がある。今後、より多くの研究者が除染の研究に取り組むきっかけになれば」と期待する。

■水田内土壌の放射線量が半減したケースも…
■水田内土壌の放射線量が半減したケースも…
福島県南相馬市馬場で実験。2m四方に区切った水田の表面に、7月初旬それぞれの材料を散布し、1カ月後に表層から15cm分(コア)を抜き取って放射線量を調べた。8月3日の当地の空間線量は700cpm。cpmは1分間の放射線の計数率。大気中の線量を防ぐため、鉛の箱中で測定
出所:金沢大学・田崎名誉教授
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