2011年10月26日 11時48分 更新:10月26日 12時28分
沖縄県の八重山地区(石垣市、竹富町、与那国町)が来年度から使う中学校の公民教科書を一本化できていない問題で、中川正春文部科学相は26日の衆院文部科学委員会で、採択地区協議会の答申に基づいて保守系の育鵬社版を採択した石垣市と与那国町の2市町については教科書無償措置法通り無償対象と認める方針を明らかにした。東京書籍版を採択した竹富町については自費購入を促す。瑞慶覧長敏氏(民主)の質問に答えた。
地区内で採択が二分されたままの状況に配慮した格好だが、竹富町だけを無償措置から外すことに反発も招きそうだ。教科書無償措置法は1963年に制定されたが、無償措置から除外されれば初めての事態となる。
八重山地区の教科書採択を巡っては、八重山採択地区協議会が8月23日に育鵬社版を選定して3市町教委に答申し、石垣市、与那国町は答申通りに育鵬社版を採択。だが、育鵬社版は尖閣諸島などの領土問題の記述が手厚い一方、地元の市民団体などに「米軍基地の問題点を記述していない」などと根強い反発があり、竹富町は東京書籍版を採択した。
教科書無償措置法がが定める同一地区内での同じ教科書の採択ができなくなり、県教委が再協議を求め、9月8日には3市町の全教育委員による会議が一転して東京書籍版を多数決で採択した。
しかし、石垣市と与那国町の両教育長が「会議は無効」との文書を文科省に提出したため、文科省は3市町の合意が成立していないとみて、9月15日には採択地区内で一本化するよう県教委に通知。都道府県教委からの報告期限である同月16日を過ぎても進展が見られないため、文科省は協議会の答申に従った石垣市と与那国町の採択を有効と判断した。背景には、地方教育行政法が採択権限を市町村教委にあるとも定める現行制度に不備があり、文科省は制度の見直しを進める。【木村健二】