2011年10月25日 20時20分 更新:10月25日 21時18分
保険診療と保険外診療(自由診療)を併用する「混合診療」を受けると治療費全額が自己負担となる厚生労働省の運用の是非が争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦裁判長)は25日、混合診療の禁止は適法との初判断を示し、原告患者側の上告を棄却する判決を言い渡した。患者側敗訴とした2審・東京高裁判決(09年9月)が確定した。
判決は5人の裁判官の全員一致。補足意見を述べた3人のうち、大谷裁判長は「混合診療禁止の原則の是非が問われる場面を減少させる意味からも、さらに迅速で柔軟な制度運用が期待される」と述べた。他の2人も運用改善を求めた。
健康保険法は先進医療の多くを保険対象外と規定するが、国が将来的な保険適用を見込んで定める「評価療養」については、特例的に全額自己負担としない「保険外併用療養費制度」が適用される。混合診療を禁じる明文規定はなく、こうした厚労省の解釈・運用の妥当性が主な争点になった。
小法廷は「保険外併用療養費制度は、保険医療の安全性や有効性の確保、患者の不当な負担防止を図るもので、混合診療禁止の原則が前提。混合診療を全額自己負担とする解釈は、健康保険法全体の整合性の観点から相当」と結論づけた。
1審・東京地裁判決(07年11月)は「保険診療と自由診療を一体として(全額自己負担と)判断すべき法的根拠は見いだせない」と法解釈の違法性を指摘、患者側が勝訴したが、2審は逆転敗訴だった。【石川淳一】