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'11/12/23

20キロ圏の避難「不合理」 政府事故調、無用な被ばく指摘へ

 政府の東京電力福島第1原発事故調査・検証委員会(委員長・畑村洋太郎はたむら・ようたろう東京大名誉教授)が近く公表する中間報告で、事故直後に政府が出した「20キロ圏の避難指示」は、一部の住民を放射線量の高い地域に向かわせ、不合理だったと問題点を指摘することが22日、分かった。住民の避難行動の混乱を招いたとみている。

 こうした「無用な被ばく」を避けるのに役立つ予測データが存在したが、経済産業省原子力安全・保安院などは「仮想の計算結果にすぎない」として官邸の危機管理センターに届けず、避難指示の内容を決める判断材料に使われなかったことが問題だとしている。

 関係者によると、風向きなどの影響で原発から北西方面に20キロ圏を超えて放射線量の高い地域が広がったが、政府は原発からの距離だけを基準に避難を指示したため、福島県沿岸地域から北西方面に避難した住民は、線量が低い地域から高い地域にあえて向かう結果になった。

 活用されなかったのは、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)のデータ。予測された線量は正確ではなかったが、高い地域と低い地域がどこかという点では実際の状況をよく反映しており、避難の参考にできたはずだという。

 事故調の調べによると、事故対策の拠点施設「オフサイトセンター」に設置された緊急時対策支援システム(ERSS)が、地震による停電で機能が停止。原子炉の状況などを福島第1原発から受信したり、SPEEDIへ送信したりできなかった。保安院や文部科学省は、そうした基本データなしに原発から放出される放射性物質を多めに見積もり試算したが、「予測は正確ではなく、誤解を招く」と危機管理センターに報告しなかった。




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