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基礎年金:財源に交付国債 換金、運用にリスク 消費増税、道筋立たず

 基礎年金の国庫負担割合を2分の1に維持するのに必要な2・6兆円について、安住淳財務相と小宮山洋子厚生労働相は22日、「年金交付国債」で賄う方針で正式に合意した。12年度の新規国債発行額を44兆円以下に抑えたい財務省と、年金積立金の目減りを防ぎたい厚労省が折り合った苦肉の策。ただし、交付国債は消費増税が実現しなければ換金できない。民主党内の消費増税をめぐる議論の先行きは不透明で、増税先送りのリスクを年金財政が背負った格好だ。【山田夢留】

 「積立金は取り崩しません!」。22日、安住氏との折衝後、小宮山氏はこう強調してみせた。交付国債はまだ換金できず、来年度の給付に必要な2・6兆円は積立金から現金で支払うものの、額面2・6兆円の交付国債が資産として計上されるので積立金総額に変動はない--。それが小宮山氏の発言の趣旨だ。

 年金積立金は厚労省所管の独立行政法人が株式や国債などで運用している。交付国債は運用できないが、財務・厚労両相は「国債で運用していた場合の収益」も含めて換金することや、いくらずつ何年で換金するかといった計画を法律に明記することでも一致した。

 財務省には過去に積立金を取り崩して流用した約3兆円とその利息が未返済という「前科」がある。だが、今回について厚労省は「返済の道筋が明確化されるので問題ない」(幹部)としている。ただ、交付国債も消費増税が実現しなければただの紙切れになる。小宮山氏は記者会見で「増税がされないことは想定していない」と言い切ったが、民主党内では反増税の動きが一層活発化している。増税への道筋がついているとは言い難い。

 交付国債という、年金財源確保策の新たな前例を作ったことも将来に影を落とす。増税が実現しても、財務省側が財源不足や国債発行抑制を理由に交付国債の引き受けを迫り続けると、年金積立金の中で、運用できず、換金の見通しも立たない資産の割合が拡大することになるからだ。

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 ■ことば

 ◇交付国債

 政府が現金を支払う代わりに公的機関向けなどに発行、交付する無利子国債。「小切手」のようなもので、発行を受けた機関などは、必要なときに国に請求すれば換金できる。国にとっては、請求があるまでは現金を必要としないため、当初は予算に計上する必要がない。

毎日新聞 2011年12月23日 東京朝刊

 

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