就任から間髪入れず上京し、各政党の党首クラスとの会談を20日に終えた橋下徹・大阪市長。「一歩目の階段を上がることができた」と、大阪都構想実現に向けた手応えを自信たっぷりに語った。大阪府知事・大阪市長のダブル選を圧勝した勢いそのままに乗り込んだ永田町は、各党とも都構想について検討する姿勢を示すなど、歓迎ムードに。師走の東京でも「橋下劇場」を展開した。
「なんでこんなにマスコミがいっぱいいるんだ」
この日、衆院議員会館などは騒然とした雰囲気に包まれた。常に数十人の報道陣が橋下市長を取り囲み、会談の各会場では入りきれないこともあった。
橋下市長は、普段はあまり締めないネクタイ姿。分刻みのスケジュールが組まれ、記者団の問い掛けにはほとんど答えず、常に足早に会場を移動した。ただ、慌ただしい中でも表情は明るく、与野党幹部に対しては謙虚な姿勢だった。この日は膝の上に手を置き、聞き役に回る場面も少なくなかった。
「これだけの改革をするのは大変なこと」。衆院議員会館内で同日午前、橋下市長と会った民主党の小沢一郎・元代表は、こう励ました。橋下市長について、周辺に「大事なリーダーだ」と漏らす小沢氏。約30分の会談は終始にこやかな表情で、都構想実現に協力を約束したという。
自民党では、谷垣禎一総裁の他、石原伸晃幹事長ら役員クラスが約20分対応。谷垣氏が「国が(税金を)集めて地方に配るのでは強い自治体はできない」と橋下市長の姿勢に賛同の姿勢を見せると、橋下市長は「民主党も総務省も地方制度調査会を作るところから始めようとしている。大阪は既に始めているので応援してほしい」と真剣な表情で訴えた。
公明党は山口那津男代表ら幹部4人が予定時刻の15分前から会場入りして待ち構える念の入れよう。みんなの党の渡辺喜美代表は、都構想実現に向けた地方自治法改正案の要綱を示し、親密さを強調してみせた。
国民新党の亀井静香代表は橋下市長を「革命児」と評し、「今は中央が自信喪失症にかかっている。地方から中央を変えていくチャンス」と持ち上げた。橋下市長は都構想の骨格を半年以内にまとめる意向を示した。
橋下市長は一連の会談後、松井一郎・大阪府知事と記者団の取材に応じた。一日を振り返り、「国会もすごくスピーディーじゃないですか」と余裕の表情で総括。都構想に向け、法整備に各党が協力することに自信を見せる一方、「3年9カ月知事をやり、政治の世界を見て、人を疑ってかかる人間になった。最後のところでだまされちゃいけないというのがある」と、次期衆院選で大阪維新の会の公認候補を擁立する準備を整える構えを示した。【林由紀子、津久井達】
毎日新聞 2011年12月21日 大阪朝刊