アグリとサイエンス
放射性物質を農地から取り除く
東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴い、福島県を中心に広範囲の農地が放射性物質に汚染されました。農地土壌から放射性物質を取り除く(除染する)ため、除染技術の開発に取り組んでおり、これまで得られた成果について紹介します。
◆放射性物質はどこにある?
耕していない農地の場合、放射性物質である放射性セシウムは、地表面から2.5センチまでの深さに95%以上がとどまり、土の中の細かな粘土粒子などに強くくっついています。これら地表面近くの放射性セシウムを取り除くことで、農地の回復が可能と考えられます。
◆効果的な除染技術を探る
地表面近くの土を農業機械などで薄く削り取ることは有効な方法です。あらかじめ地表面の土を薬剤で固めることで、土が飛び散るのを防ぎながら、効果的に削り取ることも有効です。また、牧草や草を、土ごと専用の機械ではぎ取る方法もあります。これらの方法で、土の中の放射性セシウムは75〜97%除去されました。
水田の土の表面を、水と一緒に代かきのように浅くかき混ぜ、濁った水の中の細かな土粒子のみを分けて回収する方法は、処分する土の量を減らすメリットがあります。また、農業機械で深く耕し、表面の土を深く埋め込む方法は、地下水の水位に十分注意して行うことが必要で、放射性セシウムの全体量は変わらないものの、地表面付近の量を減らす効果があります。
現在は、削り取られた土から放射性セシウムを引き離し、処分する土の量を減らすための技術などについて引き続き研究を行っています。
[2011-12-23]