NHKニューストップへ
※ すべての機能を利用するには、JavaScriptを有効にしてください。

周恩来首相 尖閣の議題避ける

12月22日 18時12分 twitterでつぶやく(クリックするとNHKサイトを離れます)

1972年の日中国交正常化交渉の際の当時の田中総理大臣と、中国の周恩来首相との会談で、田中総理大臣が尖閣諸島の領有権の問題を提起したのに対し、周恩来首相は「今回は話したくない」と述べ、議題にすることを避けたことが、22日に公開された外交文書で分かりました。専門家は「中国は事実上、尖閣諸島を放棄したとみなされてもやむを得ない」と指摘しています。

今回、公開されたのは、1972年9月、当時の田中角栄総理大臣が中国を訪れて、周恩来首相と会談し、「日中共同声明」に調印した際の会談記録をはじめ、1955年から1973年の間の日中国交正常化に関わる交渉記録や各国とのやり取りをまとめたファイル15冊です。9月25日から4日間にわたって行われた田中総理大臣と周恩来首相の会談記録によりますと、田中総理大臣は、交渉3日目、突如「尖閣諸島についてどう思うか」と切り出しました。これに対し、周恩来首相は「尖閣諸島問題については、今回は話したくない。今、これを話すのはよくない。石油が出るから、これが問題になった。石油が出なければ、台湾もアメリカも問題にしない」と述べ、別の話題に転じ、議題にすることを避けました。一連の会談を通じて、尖閣諸島に関するやり取りは、この部分だけで、会談のあと、日中両政府は、国交正常化の共同声明に調印します。これについて、中央大学の服部龍二教授は、田中総理大臣の発言について、「日本が合法的に支配している領土について、支配している側から提起することは得策ではなく、田中の発言は、やや素人的だった。しかし、周恩来は揚げ足を取ることはしなかった。当時の中国にとっては、対ソ戦略が大前提で、日本との交渉を早期に妥結したいという思いから、尖閣には触れないと判断したのではないか」と分析しています。そのうえで、服部教授は「国交正常化の時に提起しなかった領土について、あとから『自国の領土だ』と言い出すことは、国際法的に通用しない。中国は、事実上、尖閣諸島を放棄したとみなされてもやむを得ない」と指摘しています。一方、今回公開された田中総理大臣と周恩来首相の会談記録は、1988年9月に外務省が記録の原本をタイプし直したもので、原本は公開されませんでした。外務省は「原本は、現存しない」と説明し、その経緯については「分からない」としています。これについて、服部教授は「今回、公開された史料は、会談記録としてみると、やや簡略で整理されすぎているという印象を受ける。原本には、もう少し細かなニュアンスが記されていたかもしれない。原本が存在しないということであれば、外務省の文書管理体制が問われることになる」と指摘しています。