名古屋グランパスは20日、来季からホームタウンを広域化し、本拠地を現在の名古屋市に加え、愛知県豊田市、みよし市を中心とする全県にすると発表した。19日のJリーグ理事会で承認された。
グランパスが活動地域を愛知県に広げたのは、ホームスタジアムを豊田スタジアムに移行することを視野に入れた措置と言える。
今季のホームゲームは名古屋市瑞穂陸上競技場で9試合、愛知県豊田市の豊田スタジアムで8試合。どちらもホームスタジアムと認められているが、豊田は準ホーム扱い。広域化によって今後は、豊田開催を大幅に増やすことも可能になった。
昨年のJ1初優勝に続いて今季も優勝争いを続けながら観客は約2割減となり、経営的な問題が浮き彫りになった。収容2万人の瑞穂は、観客席に屋根がほとんどないなど顧客満足度で難点があるのに加え、選手、スタッフが使う施設も老朽化。名古屋市に改修を働きかけても、理解が得られず、4万人収容の豊田スタジアムを数多く使用して経営安定を図るという意向が強まってきた。
ただ、グランパスの実務トップである福島義広常務は「拠点はあくまで名古屋で、豊田がメインになることはない」と言い切る。メインスポンサーのトヨタ自動車の意向があるからだ。
92年のクラブ発足に際し、チームの母体となったトヨタ自動車が名古屋財界の協力を得てグランパスが誕生した。当初から企業名をチーム名につけなかったのは、地域貢献活動であると同時に「チームが強過ぎて(相手の地域で)不買運動が起きるかもしれない」というデメリットも考えるほど、トヨタ色を出すのを嫌がったからだ。
いくら愛知県を名目にしても、企業城下町を本拠地にすれば、トヨタのイメージが前面に出る。老朽化した陸上競技場と、最新設備の大型専用スタジアムだけを対比すれば答えは簡単だが、利便性を含めた地域感情も重要な要素。クラブの方針は名古屋ベースで変わらないが、愛知県全体で積極的に普及、宣伝活動しながら、豊田移行案は継続審議の対象となっている。 (木本邦彦)
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