エリック・カントナが本人役で出演!
TIFFレポートvol.1「エリックを探して」

マイク・リーの次は、ケン・ローチが意外な方向へ……

 去年の東京国際映画祭(TIFF)ワールドシネマ部門で、イギリスの巨匠マイク・リーの「ハッピー・ゴー・ラッキー」を鑑賞。そのとき、“マイク・リーらしからぬ明るさに驚いた”“個人的に、マイク・リーは同じくイギリスの監督ケン・ローチとイメージが重なる”と書いたけれど、今回は彼がやってくれました。ケン・ローチといえば、労働者階級や移民のやり場のない日常生活をリアルに描く監督、というイメージ。そして、内容はひたすら重い。「SWEET SIXTEEN」も「麦の穂をゆらす風」も「この自由な世界で」も、ずどーんと胸を撃ち抜かれ、鉛の足を引きずって劇場を後にした。全部いい映画なんだけど。

サッカーの名選手エリック・カントナが、本人役で出演!

 今回TIFFに登場したのは、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門にも出品された「エリックを探して」だ。妻には逃げられ、連れ子には冷たくあしらわれ、とにかく冴えない郵便局員のエリックは、大ファンである“キング”の異名を持つサッカー選手、エリック・カントナのポスターに向って自分の人生をぼやく毎日。ところが、あるときカントナ本人が目の前に現れるようになり、エリックにいろいろとアドバイスを始めるが……。

 何にびっくりしたって、作品の明るさにである。映画を観ながら、「これ、本当にケン・ローチ? もしかして名前見間違えた?」と何度も頭をよぎったほど。ところどころでどっと笑いが起き(特に外国のプレスの方は反応が大きい)、そのほかの場面でも、思わずにやにやとスクリーンを眺める。後半は「おぉ、やっぱりローチ」と思ったけれど、それからそっちの方向へ行く!? 爽快ささえ感じる作りで、「痛快コメディ」とまで言ってしまってもいいかもしれない。とにかく面白くて、かなりツボにはまる作品だった。映画祭での上映だけど、監督や関係者の来日がないのが残念。ぜひ直接話を聞いてみたかった!

 カントナ選手を演じるているのは本人。私はサッカーをまったく知らないが、調べてみたらすごいプレーヤーだったのね。これはサッカー好きにも見逃せない作品だろう。「本業じゃないのに随分自然な演技だなぁ」と思ったら、引退後は俳優に転向したとか。納得。TIFFの公式プログラムによると、この映画の企画を持ち込んだのはカントナ自身だったらしい。作中で彼が発するスポーツ選手らしいアドバイスは、一言一言に説得力がある。「うまくいかないときはやり方を変えてみろ」「左がだめなら右から攻めろ」「仲間を信じろ」などなど。これは、実生活でもそのまま通じる言葉ではないか。きっと彼が実際に経験してきたことであり、だからこそ言葉が素直に体の中へ入ってくる。

未公開のまま終わる可能性もあり。この機会をお見逃しなく!

 ちなみにワールドシネマ部門の選考基準は、(1)海外の映画祭などで話題になった作品、(2)8月31日現在で日本公開が決まっていない作品、(3)原則としてアジア以外の作品(アジア映画には「アジアの風」という専門の部門あり)、の3つ。つまり、無事日本で公開されるのかはわからないのだ。“ケン・ローチほどの監督の作品が公開されないはずはないだろう”と考えるのは、甘い。前述の「ハッピー・ゴー・ラッキー」だって、アカデミー賞ノミネートのギリギリまでいった作品なのに、結局日本では公開されていないのだから。

「エリックを探して」は、10月21日(水)17:30〜19:27の上映が残っている。会場はTOHOシネマズ六本木ヒルズのScreen5。どうやら前売り券は終了しているようだが、おそらく当日券は出ると思われる(詳しくはお問合せを)。ローチファン、カントナファン、映画ファンは、仕事もしくは学校をさぼってでも観に行こう!

監督:ケン・ローチ
出演:スティーブ・エヴェッツ/エリック・カントナ/ジョン・ヘンショウ
117分/英語、フランス語/カラー/35mm
2009年10月20日
映画コラムニスト 鈴木晴子

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最終更新 11.12.20 15:43

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