和歌山のイルカ漁を盗撮した問題作
TIFFレポートvol.3「ザ・コーヴ」
和歌山県太地町で行なわれているイルカの追い込み漁を盗撮し、サンダンス映画祭では観客賞を受賞した「ザ・コーヴ」(入り江)。すでにアメリカなどでは公開されており、一部では日本人を狙った暴力事件も起きているという。そんな問題作が東京国際映画祭で公開され、監督のルイ・シホヨスが来日。昨日10月21日、記者会見を行なった。
日本の人に観てもらって、初めてウィンウィンの状況に
冒頭シホヨスは「日本に来たら逮捕されるんじゃないかと思ったけど、無事入国できてよかった」と笑顔。そのコメントが物語る通り、映画はかなり衝撃的だ。撮影隊は立入禁止区域の柵を超え、映画の特撮用小道具を作る職人に作らせた隠しカメラを至るところに設置。終盤、画面に映し出される“太地伝統のイルカ漁”の場面では、大量のイルカの血で入り江が赤く染まっていく様子が映し出される。全体を通して、彼らがイルカ漁推進派を“悪”、イルカを守る自分たちを“善”として描いていることは明白だ。
彼らの主張は主に2点。1)高い知性を持つイルカを殺すことは許されない、2)イルカには多くの水銀が含まれているが、スーパーなどでクジラ肉として売られている。多くの日本人がこの事実を知らないのはおかしい、ということだ。シホヨスは、「東京国際映画祭で上映が決まり、絶対に日本に来なくてはいけないと思った。日本人にこの映画を観てもらって、初めて“ウィンウィン”の状況になると思う」と語った。
彼らの主張は主に2点。1)高い知性を持つイルカを殺すことは許されない、2)イルカには多くの水銀が含まれているが、スーパーなどでクジラ肉として売られている。多くの日本人がこの事実を知らないのはおかしい、ということだ。シホヨスは、「東京国際映画祭で上映が決まり、絶対に日本に来なくてはいけないと思った。日本人にこの映画を観てもらって、初めて“ウィンウィン”の状況になると思う」と語った。
この問題は日本人自ら解決を
会見では様々な質問が飛んだが、主なものは以下の通り。
――出品までの経緯は?
「正直に言えば、政権交代によって実現したと思う。これが3ヶ月前だったら、上映は有り得なかった。自民党はこの映画の上映に反対していたから」
――牛や豚は食べるのに、なぜイルカだけだめなのか?
「その議論に答えは出ないと思う。私は屠殺場を見て以来肉が食べられなくなったし、魚も水銀が含まれない小さな魚しか食べていない。もし普段食べている野菜などに規制を超える毒素が入っていたら、自分はそのことを詳しく説明してほしいと思う」
――水銀の問題はイルカに限らない。食の安全性について言及するなら、もっとテーマを広く考えるべきだったのでは?
「私たちは、撮影しながら事実を発見していく。水銀の問題には撮影中に出会った。映画を観て世界中からたくさんの手紙をもらったが、その中には“もう二度と寿司は食べない”というものもあった。日本人だけではなく、生き物の住処を脅かす人間はすべて悪人だと思う」
――劇中では“魚に水銀が含まれていることを、政府が意図的に隠している”という視点だが、すでそのことは厚生労働省から発表され、情報はインターネットで検索すれば20秒で手に入るが?
「水銀の含有量は、イルカの大きさや部位によってもまったく違う。バンドウイルカの内臓には多くの水銀が含まれているにも関わらず、スーパーで買えるほか、肥料としても使われている。これは野菜などにも含まれるかもしれないことを指すのではないだろうか。最終的にどこの部分にどれだけの水銀が含まれているかは誰も把握していないし、他の団体の調査では、政府の資料よりももっと高い数値が出ている」
――日本公開のためにカットした部分は? また、猟師の顔には一切モザイクがなかったが
「日本公開に合せた編集はまったくしていない。猟師の顔にモザイクをかけなかったのは、隠すことで映画の信憑性を下げると思ったから」
――太地町は、“上映するなら名誉毀損で訴える”という構えだが?
「太地の漁が行なわれているのは、一般の人が自由に出入りできるはずの国立公園。そこを立入禁止にするのはおかしい。町はその理由を“落石の危険があるから”としているが、私たちが撮影したときに落石はなかった。これが逆にアウシュビッツに侵入して撮影したものだったら、違法だといって糾弾されるのだろうか?」
――豪ブルームが、この映画をきっかけに太地との姉妹都市を解消したことが大きな話題となった(現在は復活)。イルカ漁とは関係がないところで、感情に大きな悪影響が出ていることに関してはどう思うか?
「ブルームでは日本人墓地が破壊される事件も起きたが、これは非常に残念なことだ。私たちはイルカ漁をやめるよう支援したいだけで、ターゲットは太地の猟師や日本政府。イルカ漁のことは太地でも一部の人間しか知らないことだし、日本人すべてが悪いと言っているわけではなく、ましてや反日でもない。
私たちが取り組みたいのは海洋汚染という大きな問題であって、イルカ漁はその一部にしか過ぎない。この問題を解決できないで、どうやってプランクトンや珊瑚礁が死んでいく問題を解決できるのだろうか。イルカ漁は日本人の問題として、日本人自らが対処してほしい」
――出品までの経緯は?
「正直に言えば、政権交代によって実現したと思う。これが3ヶ月前だったら、上映は有り得なかった。自民党はこの映画の上映に反対していたから」
――牛や豚は食べるのに、なぜイルカだけだめなのか?
「その議論に答えは出ないと思う。私は屠殺場を見て以来肉が食べられなくなったし、魚も水銀が含まれない小さな魚しか食べていない。もし普段食べている野菜などに規制を超える毒素が入っていたら、自分はそのことを詳しく説明してほしいと思う」
――水銀の問題はイルカに限らない。食の安全性について言及するなら、もっとテーマを広く考えるべきだったのでは?
「私たちは、撮影しながら事実を発見していく。水銀の問題には撮影中に出会った。映画を観て世界中からたくさんの手紙をもらったが、その中には“もう二度と寿司は食べない”というものもあった。日本人だけではなく、生き物の住処を脅かす人間はすべて悪人だと思う」
――劇中では“魚に水銀が含まれていることを、政府が意図的に隠している”という視点だが、すでそのことは厚生労働省から発表され、情報はインターネットで検索すれば20秒で手に入るが?
「水銀の含有量は、イルカの大きさや部位によってもまったく違う。バンドウイルカの内臓には多くの水銀が含まれているにも関わらず、スーパーで買えるほか、肥料としても使われている。これは野菜などにも含まれるかもしれないことを指すのではないだろうか。最終的にどこの部分にどれだけの水銀が含まれているかは誰も把握していないし、他の団体の調査では、政府の資料よりももっと高い数値が出ている」
――日本公開のためにカットした部分は? また、猟師の顔には一切モザイクがなかったが
「日本公開に合せた編集はまったくしていない。猟師の顔にモザイクをかけなかったのは、隠すことで映画の信憑性を下げると思ったから」
――太地町は、“上映するなら名誉毀損で訴える”という構えだが?
「太地の漁が行なわれているのは、一般の人が自由に出入りできるはずの国立公園。そこを立入禁止にするのはおかしい。町はその理由を“落石の危険があるから”としているが、私たちが撮影したときに落石はなかった。これが逆にアウシュビッツに侵入して撮影したものだったら、違法だといって糾弾されるのだろうか?」
――豪ブルームが、この映画をきっかけに太地との姉妹都市を解消したことが大きな話題となった(現在は復活)。イルカ漁とは関係がないところで、感情に大きな悪影響が出ていることに関してはどう思うか?
「ブルームでは日本人墓地が破壊される事件も起きたが、これは非常に残念なことだ。私たちはイルカ漁をやめるよう支援したいだけで、ターゲットは太地の猟師や日本政府。イルカ漁のことは太地でも一部の人間しか知らないことだし、日本人すべてが悪いと言っているわけではなく、ましてや反日でもない。
私たちが取り組みたいのは海洋汚染という大きな問題であって、イルカ漁はその一部にしか過ぎない。この問題を解決できないで、どうやってプランクトンや珊瑚礁が死んでいく問題を解決できるのだろうか。イルカ漁は日本人の問題として、日本人自らが対処してほしい」
2009年10月22日
映画コラムニスト 鈴木晴子
最終更新 11.12.20 15:43
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