今年のアカデミー賞はコレが取る!?
映画ライター鈴木晴子、独断と偏見で予想【作品賞編】

2011年2月23日

〈第83回アカデミー賞授賞式〉が、いよいよ来週月曜日の2月28日に迫ってきました! HiVi WEBでは、今年も実況中継を行ないます。発表後、“即座に”結果をお知らせしますので、お見逃しなく! と、その前に、映画ライター鈴木晴子の独断と偏見による“受賞予想”を、ノミネート作品の顔ぶれと合せてお送りいたします。予習を兼ねつつ、授賞式をより楽しんでくださいませ。では、まずはじめに作品賞からどうぞ!

作品賞編主演男優賞・女優賞編助演男優賞・女優賞編監督賞・長編アニメ賞編   



(C) 2010 Twentieth Century Fox.
127時間

休日に1人登山を楽しんでいたアーロンは、落下してきた岩に腕を挟まれ、渓谷で身動きが取れなくなってしまう。行き先は誰にも告げておらず、軽装で水は残りわずか。このままここで朽ちるしかないのか……。青年登山家の実話を、「スラムドッグ$ミリオネア 」のダニー・ボイルが映画化。オープニングの疾走感と、映像のスタイリッシュさはさすが! そして、極限に追い込まれても希望を捨てず、さらには“自分の人生において何が大切か”を見出していく彼の姿には、きっと勇気をもらえるだろう。6月、TOHOシネマズシャンテ、シネクイント他全国ロードショー。

(C) 2010 Twentieth Century Fox.
ブラック・スワン

「白鳥の湖」で念願のプリマに抜擢されたバレエ団のニナ。可憐な“白鳥”を体現するかのような彼女だが、二役として演じなければならない邪悪な“黒鳥”に、どうしてもなるきることができない。完璧に役柄を演じようとするあまり、ニナは次第に精神のバランスを崩していき……。観客側も徐々に現実と妄想の境い目がわからなくなり、頭をガンガンに揺さぶられる。心理劇を通り越して、後半はホラーなのかと錯覚するほどの壮絶さだ。鑑賞後はしばらく現実世界に戻れない衝撃作、必見! 5月13日、TOHOシネマズ日劇ほか全国拡大ロードショー。

(C) 2010 RELATIVITY MEDIA.
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ザ・ファイター

実直だが、まったく勝てない三流ボクサーの弟。天才ボクサーだが怠惰かつ破滅的な性格で、今は弟のトレーナーに専念する兄。2人は葛藤や衝突を繰り返しながら、誰もが“不可能だ”と笑う世界チャンピオンを目指す――。実在のボクサーを描いた真実の物語が、主演のマーク・ウォールバーグの情熱によって映画化。この映画、登場人物たちがとにかくみんな濃い。圧倒的にリアルなファイトシーンはもちろんのこと、家族や恋人との関係や、それぞれの心の動きの描き方にも注目だ。3月26日 丸の内ピカデリー他にて全国順次ロードショー。

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ENTERTAINMENT INC.
インセプション

言わずと知れた、「ダークナイト 」のクリストファー・ノーランが贈る新感覚映画。シリーズ物などの“安全作”を好むハリウッド大作でありながら、“他人の夢に入り込んでアイディアを盗む”というまったく新しい発想に挑戦し、なおかつ作品を大ヒットに導いてしまったノーランの手腕はさすがだ。「ダークナイト 」がアカデミー作品賞にノミネートされず映画ファンの怒りを買い、それがきっかけで翌年から作品賞のノミネート数が5作品から10作品になった――という噂もあるが、本作では無事ノミネートを果した。でも、監督賞に入らなかったのは意外だ。

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キッズ・オールライト

両親と子供ふたり、ごく普通のどこにでもある家庭。でも、少し変っているのはママがふたりいること――。同性愛カップルと子供たちの間に“遺伝子上の父親”が入り込んできたことで、一家に思いも寄らぬ嵐が吹き抜ける。“現代ならではの家族の形”という一見重くなりそうなテーマでありながら、コミカルな要素が満載。なおかつ、家族のあり方や普遍的な感情を、さらりと、でもじんわりと見せてくれる一作だ。4月29日(金)、 渋谷シネクイント、TOHOシネマズ シャンテ、シネリーブル池袋ほか全国ロードショー。

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英国王のスピーチ

吃音というコンプレックスを抱え、内気で人前に出るのが苦手なジョージ。英国王の次男という立場上、人前でスピーチをしなければならない機会が多いが、どんな言語聴覚士にかかっても改善しない。そんなとき出会ったオーストラリア人のスピーチ矯正専門家は、奇妙な治療法で次第にジョージの心を開いていくが……。派手さはないけれど、ひとりの男が自分の立場やコンプレックスと向き合っていく様子を丁寧に綴った、まさに“良作”と呼ぶにふさわしい作品。2月26日 TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ他全国ロードショー。

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ソーシャル・ネットワーク

SNS「Facebook」の若き創始者、マーク・ザッカーバーグを描いたドラマ。ハーバード大学に通うマークは、ふられた彼女に対する腹いせをきっかけに、学生間のコミュニケーションサイトを開設。それは瞬く間に他大学を、そして世界中をも巻き込んでいく……。後に“世界最年少の億万長者”となる彼は、この膨れ上がったSNSにより、何を得、何を失ったのか。ふたつの時間軸を巧みに交差させながら、次第に孤独や悲しさを浮かび上がらせる様が素晴らしい。激しいスピードで進むストーリーに、観ている側は頭をフル回転させる必要があるかも。

(C) DISNEY/PIXAR
トイ・ストーリー3

昨年の「カールじいさんの空飛ぶ家 」に続き、またしてもディズニー/ピクサーのアニメが作品賞にノミネート。「トイ・ストーリー」シリーズは“ハズレなし”のピクサー作品の中でもやはり別格で、この「トイ・ストーリー3 」についても、もはや説明は不要だろう。ストーリー展開もその見せ方もよくできていて、10人の人間がいたら、8〜9人は満足できるのではないだろうか。アニメ作品ゆえ、作品賞の受賞はなかなか難しいと思われるが、それでも本作が優れた作品であることは間違いない。

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トゥルー・グリット

牧場主の父を、雇い人の男に殺された14歳の少女。彼女は父の敵を討つため、“トゥルー・グリット(真の勇気)”を持つと言われる伝説の連邦保安官を雇う。少女と、怠惰だが辣腕の保安官に、テキサス・レンジャー(テキサス州の法執行官)の男も加わり、3人の過酷な旅が始まった――。1969年に製作されたジョン・ウェイン主演の「勇気ある追跡」を、独特な作風が持ち味のコーエン兄弟がリメイク。映画番長・堀切日出晴さんも大絶賛の西部劇だ。3月18日(金)、TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー。
Winter’s Bone(原題)

ドラッグの売人である父が、家を担保に保釈金を確保し、そのまま失踪した。父が裁判所へ出頭しなければ、自宅は取り上げられてしまう。17歳の少女は、家族を守るため、父の行方を追って危険な裏社会へと足を踏み入れていくが……。サンダンス映画祭グランプリを筆頭に、各地の映画祭で話題を呼んでいるインディーズ作品。アカデミー賞では4部門にノミネートされている。こんなに評価が高いのに、日本公開は未定。昨年秋に行なわれた東京国際映画祭にも出品されていたのに、なぜあのとき観ておかなかったのか! 返す返すも口惜しい。
予想作品は……「英国王のスピーチ」

今年の作品賞ノミネート作は、みんな面白い。昨年の「アバター 」のような思い切り派手な作品はないが、ノミネートされるだけあってどれも見事だ。前々から言われているのは、「英国王のスピーチ 」と「ソーシャル・ネットワーク 」の一騎打ちになるのではないかということ。最初はアメリカが舞台の「ソーシャル〜」が有利なのかと思ったけれど、あのスピード感に、高齢者が多いと言われるアカデミー会員は付いてこられるのか? ということで、ここは「英国王〜」に一票。ちなみに、一番好きな作品は「ブラック・スワン 」。ダークすぎて、残念ながら作品賞は取らないと思うが……。
作品賞編主演男優賞・女優賞編助演男優賞・女優賞編監督賞・長編アニメ賞編
[参考・2010年の予想] 作品賞・監督賞編主演男優賞・女優賞編助演男優賞・女優賞編
  


by 映画コラムニスト 鈴木晴子