【第83回アカデミー賞特集】総括
監督賞はフィンチャーにあげたかった!

「英国王のスピーチ」と「インセプション」が4部門を受賞

 映画界最大のお祭り、アカデミー賞授賞式から約一週間。映画ライター鈴木晴子よる受賞予想と、授賞式のリアルタイム速報はお楽しみいただけたでしょうか?

 さて、作品賞は「英国王のスピーチ 」と「ソーシャル・ネットワーク 」の一騎打ちだろう、といわれた今年のアカデミー賞。蓋を開けてみれば、「英国王のスピーチ 」が作品賞/監督賞/主演男優賞/脚本賞の4部門を受賞した。対する「ソーシャル・ネットワーク 」は、脚色賞/作曲賞/編集賞の3部門を受賞。数はひとつしか変らないが、主要部門が「英国王…」に集中したせいか、どうも明暗がくっきりと分かれたように感じてしまう。なお、「インセプション 」も撮影賞/音響賞/音響編集賞/視覚効果賞と、技術系の4部門を受賞した。


7部門中、予想が的中したのは5部門。まずまずの確率……?

 映画ライター鈴木晴子による“独断と偏見による受賞予想”と、実際の結果は以下の通り。7部門中5部門的中ということで、ひとまずはほっと胸をなで下ろしつつ、少々納得がいかない部分も……。

 予想
 受賞結果
 作品賞
 英国王のスピーチ  英国王のスピーチ
 主演男優賞
 コリン・ファース(英国王のスピーチ  コリン・ファース(英国王のスピーチ
 主演女優賞
 ナタリー・ポートマン(ブラック・スワン  ナタリー・ポートマン(ブラック・スワン
 助演男優賞
 クリスチャン・ベイル(ザ・ファイター  クリスチャン・ベイル(ザ・ファイター
 助演女優賞
 メリッサ・レオ(ザ・ファイター   ヘイリー・スタインフェルド(トゥルー・グリット
 監督賞
 デヴィッド・フィンチャー(ソーシャル・ネットワーク   トム・フーパー(英国王のスピーチ
 長編アニメ賞
 トイ・ストーリー3  トイ・ストーリー3

は予想が的中したもの

 外したのは、監督賞と助演女優賞。まぁ、助演女優賞は仕方ない。下馬評ではメリッサ・レオが有力だということはわかっていたし、実際に作品を観ても、あらかじめ彼女が出演していると知らなければ、誰だか気づかないほどの見事な変身ぶりだった。だから“この予想は冒険だな”というのは重々自覚していたけれど、それでも若いヘイリー・スタインフェルドに賭けてみたくなったのだ(ヘイリーは現在14歳)。ちなみに個人的には、同じ「ザ・ファイター 」ならば、受賞したメリッサ・レオよりも、エイミー・アダムスの演技のほうが心に残った。これは完全に余談だけど。

監督賞では、フィンチャーとノーランの一騎打ちが見たかった!

 ということで、“納得がいかない”のは監督賞だ。「英国王のスピーチ 」はまさに“良作”で、万人に愛されるであろう映画。だから、作品賞の受賞はわかる。でも、監督賞は“監督”に与えられる賞だ。トム・フーパーは確かにセンスがいいし、役者の素晴らしいアンサンブルを引き出したのは、彼の手腕があってこそなのだろう。一方で“堅実”“手堅い”といった印象も受け、それはもちろんよいことなのだけど、監督賞を受賞するには少々インパクトに欠けるのでは……と感じてしまうのだ。

 そこへいくと、デヴィッド・フィンチャーは、“膨大なセリフ量の脚本”や“現在と過去のふたつの時間軸”といった要素を、魔法のように操っているイメージ。作品の見せ方は、やはりこの5人の中では彼が頭ひとつ飛び出ている。と、思う。

 そもそも、それ以前になぜ「インセプション 」のクリストファー・ノーランがノミネートされなかったのかが不可解だ。あの複雑な物語を組み立て、スケジューリングしながら撮影し、編集し、一本の作品として仕上げる……という工程を指揮したこの人は、天才の域ではなかろうか。今年の監督賞はフィンチャーとノーランのどちらか、というのが正しい姿だったように思えて仕方ない。

納得の受賞者たち。ぜひ実際に観てみてください

 そのほかの結果に関しては“作品を観れば一目瞭然”といった感じで、余計なコメントは必要なさそう。すべて公開が決定しているものなので、ぜひご自分の目で確かめてみてほしい。ひとつだけ付け加えるならば、助演男優賞のジェフリー・ラッシュも、受賞したクリスチャン・ベイルの“怪演”とは真逆の地に足のついた演技で“この役はジェフリー以外には演じられなかっただろう”と思わせてくれる。でもまぁ、彼は「シャイン」で主演男優賞も取っていることだし、今回はクリスチャン・ベイルで文句なし! だ。

 今年も、これにて賞レースシーズンが終了。受賞予想、リアルタイム速報、まとめ記事と、長い間付き合ってくださった皆さん、ありがとうございました! この先、いっそう映画やソフトに関するコンテンツに力を入れていきたいと思いますので、記事の感想や“こんなものが読みたい”といったリクエストなどなど、こちらのメールアドレスまでぜひお寄せください(リンクをクリックすると、メーラーが起動します)。



2011年3月7日
(映画コラムニスト 鈴木晴子)

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最終更新 11.12.20 15:43

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