「あなたには見せたくない映画」番外編
サイコキラー、日本上陸! 「ノーカントリー」ハビエル・バルデム来日記者会見

3月11日、東京・日比谷のザ・ペニンシュラ東京にて、「ノーカントリー(No Country for Old Men [Blu-ray])」でアカデミー助演男優賞を受賞した、ハビエル・バルデムの来日記者会見が開かれた。彼は過去の出演作「夜になるまえに」でも「海を飛ぶ夢」でも来日が実現せず、今回が待望の初来日となったスペインの実力派俳優。会場には報道陣が詰め掛け、座席が足りなくなるという事態に。

会見には役柄と180度違う、人懐こそうな人物が現れた

 にこやかに登場したハビエルは、胸ポケットからメモを取り出し「コニチハ、私はハビエル・バルデムです。日本にくれて、(横にいる人を見て間違いを確認)No、来られて嬉しいです。ノーカントリー観てね。アリガトウ」と日本語で挨拶。その笑顔と親しみやすい雰囲気に、会場の人たちが、一気に彼に引き付けられたのを感じた。

「ノーカントリー」でハビエルが演じた殺し屋シガーは、おかっぱ頭がトレードマーク。とにかく強烈な印象の髪型で、シガーの得体の知れない不気味さに、一層拍車をかけるのだ。このおかっぱ頭、元は保安官役のトミー・リー・ジョーンズが持って来た、80年代のメキシコとアメリカの国境付近の写真(年代・土地ともに作品の舞台)に、おかっぱ頭の男性たちが写っていたことがきっかけになったのだそう。

 その写真を見た監督のコーエン兄弟が「この髪型で行こう!」とノリノリになり、渋る当事者をよそに、おかっぱ殺人者が誕生。ハビエルがこの作品の撮影で一番大変だったのは、テキサスの砂漠での撮影でも殺戮シーンを演じなければいけなかったことでもなく、「毎朝起きた後、鏡で自分の髪型を見ること」だったらしい。「オフの日にメキシコの街に出れば、道行く人々に『一体こいつは誰なんだ』という目でジロジロと見られ、それはそれは苦しい毎日だった」と語り、会場は笑いの渦となった。

暴力嫌いのハビエルが、この役を引き受けた理由

 今回はサイコキラーの役を演じたわけだが、ハビエル自身は現実の暴力はもちろん、映画などの暴力シーンも苦手らしい。作中にモーテルで3人の男と対峙するシーンがあるのだが、「小道具係の人に銃を渡されたときも『怖くて触れない』と怯えて、『おまえは本当にこの役をやる気があるのか』と突っ込まれた」というエピソードも披露した。

 それでもこの役を引き受けたのは、18歳の頃にコーエン兄弟の「ブラッド・シンプル(Blood Simple (Director's Cut))」を観て以来、「いつかこの人たちと仕事をしてみたい」と思っていたから、そしてコーマック・マッカーシーの原作を読んで、シガーの暴力の裏に哲学的なものがあると感じたからだという。ハビエルから見たシガーは、「自然の力に導かれるように暴力を振るう、神話的なキャラクター」ということだ。

アカデミー賞授賞式での裏話も

 ところで、アカデミー賞授賞式の受賞者スピーチは1人40秒と決められていて、目の前の時計が10、9、8、7……とカウントダウンしていくらしい。ハビエルはスピーチの際、「40秒で全員の名前を言えるのか!?」という緊張で頭がいっぱいだったそう。そして作品・監督・脚色賞を受賞したコーエン兄弟の反応は、「えー受賞したんだ」「だって僕達この映画が好きだもん」という、わりとあっさりしたものだったようだ。兄のジョエルは「こんなに受賞するなんてクレイジーだね」とも言っていたらしく、なんだか普段の飄々としたイメージそのままである。

「アカデミー賞を受賞して変わったことはありますか?」と聞かれ、ハビエルは「No」と即答。「変わったことはないし、変わらないように願う。オスカーを取ったからといって、それが最高の俳優ということではない。こういうときだからこそ、少し距離を置いて自分を見つめたい」と真摯な面持ちで答えた。

 時には身振り手振りを含めて会場の人々を笑わせ、時には真剣に言葉を選びながら、自分の胸の内を語る。明るく謙虚で真面目な人柄がよくわかる会見で、おそらく会場にいた人の8割は、彼にメロメロになったはず。会見の後、配給会社の人に「本当にいい人だね! 感動したよ」と言っている男性までいた。「夜になるまえに」のときから好きだったけれど、今回の件で止めを刺された私。うらやましいぞ、現彼女のペネロペ・クルス!




2008年3月11日
映画コラムニスト 鈴木晴子

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最終更新 11.12.20 15:43

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