日本文明論への視点 第2講
拓殖大学日本文化研究所主催の公開講座「日本文明論への視点」の第2講を聴講しました。第2講では、「国体と文明―和とまこと、自己と他者」を主題として、評論家の西尾幹二先生が講師を務められました。
今回の講座で西尾先生は、主に、欧米と日本の歴史的・文化的違い、日本の国体、山田孝雄著の「国体の本義」、和とまことの4点について、以下のようにお話になられました。
1. 欧米と日本の歴史的・文化的違い
欧米人と日本人とでは宗教観が異なる。欧米人は宗教を公共的なものであると考えているのに対し、日本人は宗教を個人的なもの、自己の救済のためのものであると考えている。
また、日本における宗教には2つの側面がある。1つは自己の救済であり、これは仏教が中心となり、個人を救う役割を果たしてきた。もう1つは公的社会のあり方であり、これは天皇が中心となり、国家について考える役割を果たしてきた。
2. 日本の国体
日本の国体論は、水戸学の出現により形づくられてきた。日本の国体は、@神話に起源をもつ国、A万世一系の天皇、B大和心であり、@、Aは清明心を重んじている。これらは両陛下によって体現されているため、複雑な思考概念を要する仏教や西洋の哲学的思考に比べ、明瞭である。
3. 山田孝雄著の「国体の本義」
「国体の本義」の著者の山田孝雄は、神話の重要性を説いており、国生みにこそ我が国の真実があると述べている。また、日本における神と我々日本人との関係を親子の関係であると述べている。つまり、神様は親であり、我々は子である。それゆえ、本来、神道は祈る必要はなく、感謝するだけでよいと述べている。
4. 和とまこと
西洋はすべての物事がぶつかり合うのに対し、日本は聖徳太子の十七条の憲法の「和を持って尊し」という言葉にも表れているとおり、「和」を非常に重んじてきた。また、嘘、偽りを良しとしない「まこと」という心も昔から我々日本人は好み、大切にしてきた。しかし、和とまことにはいい面ばかりだけでなく、負の側面もある。
まず、「和」であるが、これはいい意味でも悪い意味でも団結心が強く、自分達にとって都合の悪い考えや意見については、それを協力して封じる傾向にある。今回の福島原発事故の原発村がいい例である。
次に、「まこと」であるが、これは主観的で他者がない。戦前の日本は民族問題を全然知らず、誠実に行動すれば相手にきっと伝わると思っていたが、それは世界的には通用しなかった。これらのことから、和とまことは日本国内の小宇宙だけでは完結、通用したが、他の小宇宙、つまり、外国や他の文化圏と出会って際には必ずしも通用しないということが言える。
和とまことの精神を考えつつ日本を考えることによってさらに広く勉強をしていけると思いました。
(報告・山下恭平)
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