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山梨・都留の労働者殺人:「死刑被告、現場に不在」 「共犯者」証言覆す--20日最高裁弁論

 00年に山梨県内のキャンプ場で2人が殺害された事件などで殺人罪などに問われ、1、2審で死刑を言い渡された元建設会社社長、阿佐吉広被告(62)の上告審で、共犯者とされる男性受刑者(55)=懲役9年確定=が「被告は殺害現場にいなかった」とする陳述書を記し、弁護団が新証拠として最高裁に提出したことが分かった。阿佐被告は殺人について一貫して無罪を主張。最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は20日に弁論を開くが、「共犯者」が証言を覆したことで、その判断が注目される。

 1、2審判決によると、阿佐被告経営の「朝日建設」(山梨県都留市、03年倒産)で働く作業員3人は00年5月14日、飲酒し自動車で当て逃げ事故を起こした。阿佐被告は「会社をつぶす気か」などと怒鳴り、社内で3人を暴行。このうち2人が反抗し、うち1人はナイフを持ち出し同社従業員だった元暴力団組長(02年病死)と受刑者に切りつけた。このため阿佐被告は元暴力団組長らと共謀、2人を都留市にある同社管理のキャンプ場にワゴン車で連れ出し、車内で首を絞めて殺害したとされる。

 阿佐被告は97年3月ごろにも反抗的な態度を取った別の作業員を木刀で暴行し肺炎で死なせ(傷害致死)、遺体は会社の車に隠し、00年の事件後、元暴力団組長に依頼し3人の遺体をキャンプ場に埋めたとされる。

 3遺体は、00年の事件で被害者2人をワゴン車に閉じ込め逮捕監禁罪に問われた別の元従業員(40)の供述に基づく警察の捜索で、03年に見つかった。

 阿佐被告は97年の暴行を認め(死亡との因果関係は否認)、00年の事件は2人への暴行を認めつつ「キャンプ場に行っていない。殺害の指示もしていないし動機もない」と殺人罪を否認している。

 被告の殺害を裏付ける物証はなかったが、受刑者▽キャンプ場管理人だった男性(68)▽逮捕監禁罪に問われた元従業員▽その共犯の元作業員(42)--の計4人が「被告がキャンプ場に来た」などと証言。受刑者はワゴン車内で被害者の体を押さえたとされ、被告や被害者らの位置関係なども詳述していた。

 だが、受刑者は今回の陳述書で(1)キャンプ場で阿佐被告を見ていない(2)元暴力団組長が車内で被害者1人の上に乗り、手で輪を作って(首を絞めて)いるのがバックミラー越しに見えた(3)元暴力団組長が別の1人の上に移動した際、被害者が暴れたので「足を押さえろ」と言われた--と記している。

 受刑者は陳述書と同様の内容の手紙を毎日新聞記者に送付。証言を翻した理由について明確な説明はしていない。

 キャンプ場の元管理人も控訴審開始前、弁護人に「社長はキャンプ場に来なかった」と説明。弁護側は元管理人の証人尋問を請求したが高裁は却下した。

 一方、逮捕監禁罪に問われた2人は当初、殺人容疑で逮捕され、最終的に執行猶予付きの有罪が確定。このうち元従業員の男性は取材に「うそは言っていない。被告がキャンプ場に来て被害者にまたがっているのも見た」と説明。元作業員の男性も「裁判で言った通りです」と話している。【武本光政】

毎日新聞 2011年12月19日 東京朝刊

 

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